扉のショート。

私の人生はままならない。
いや、誰だってそうじゃないかと思うだろうが少し意味合いが違う。
誰にとっても当たり前の行為が正常に行えないのだ。
それは、ドアを開けて移動することだ。
何が正常でないかと言うと、私がドアを開けるとそこは壁なのだ。
打ちっぱなしコンクリートのような灰色の壁。
厚さや高さは計り知れない…。
何度も壊そうと試みたが、掘れど進めど終わりが見えなかった。

生まれて初めて開けたドアは、おもちゃのドールハウスの玄関だった。
小さなドアの向こうは見えず灰色の壁。
全然楽しめなかった灰色の記憶。
この異能に気付いてからはドアを半開きにしておくことが必須になった。
すでに開いているドアや、小窓がついているもの、ガラス製などで向こうの様子が見えている時は問題なく出入りできることもわかってきた。





この物語の結末は、誰かに扉を開いてもらわないと書けないようだ。

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