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境界を越えるバス/都県境編6/よみうりランド正門界隈
東京都・神奈川県境編その6 多摩丘陵編1
2022年3月/10月現地調査実施
2022/10/31初版公開
この記事のデータ類は2022年10月時点のものです。
画像類は、特記なき限り筆者自ら撮影・作成したものです。
今回から、ついに東京都神奈川県境は多摩川を離れ、多摩丘陵の内部へと入っていきます。地形も入り組んでいて、それに合わせるかのように都県境も複雑に入り組んでいます。
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ベースの白地図は freemap.jp より。
都県境が多摩川から離れる地点
※この節は近い将来に別記事に移す可能性があります。予めご了承くださいm(_ _)m
東京都と神奈川県の境界が多摩川から離れた後は、武蔵国多摩郡と橘樹郡の境界をなぞっていく。現代の行政区分でいうと、分岐する地点は、調布・川崎・稲城の三市境である。多摩川のど真ん中になるが… 多摩川から離れた直後は、稲城市と川崎市多摩区の境界となる。
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右側から小河川が流れ込んでくるあたりの本流の真ん中あたりが三市境のはず。
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本流までが遠すぎて、よく見えません。
稲城・川崎市境の真正面のはずなのですが…
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草の刈り込み具合の違いが市境、のはず?
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暫くの間は住宅街の間を縫うように都県境が続いており、予備知識ゼロでこの地を訪れたら、幹線道路に建てられたロードサインを見なければ、そこに都県境があるとは思えない。幹線道路を外れれば、タブレットに表示される地図と見比べつつ進ばねば、簡単に都県境をロストしてしまう。おそらく、太古の時代はこの辺りまでが多摩川の氾濫原であったと思われる。
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この平坦な区間を、主要地方道である神奈川県道・東京都道9号川崎府中線が都県境を越えて走っているが、幸い?にしてこのエリアで都県境を越えるバス路線の設定は、隣接する路地も含めて、存在しない。この辺りのバス路線事情は、以前の記事「多摩水道橋」を参照されたい。
都県境の尾根
多摩川の支流の三沢川を越えるあたりで、ようやく都県境はそこそこはっきりした尾根筋を辿るようになる。取付き部分だけは尾根筋上に道が無いが、ほどなく川崎市側から登ってくる遊歩道が尾根筋に乗り、更に登ると稲城市側から新設された車道(稲城市道:よみうりV通り)がほぼ尾根筋を辿るようになる。この辺りから川崎市側は遊園地「よみうりランド」とその関連施設(読売ジャイアンツの練習場などを含む)として開発されたエリアにななる。稲城市側はここ数年で宅地開発が本格化したが、昔の地形もそこここに残っている。その途上、どういうわけか川崎市側に稲城市の飛び地があったりとか、よみうりランドの慶友病院は稲城市側にはみ出してたりとか、イレギュラーはままある。
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尾根上の道は、京王よみうりランド駅からぐるっと回って登ってきています。
この道を稲城市コミュニティバスが走ります。
何か所かで都県境を掠めているはず・
都県境尾根を峠として通過する最初の主要道路は、東京都道・神奈川県道124号稲城読売ランド停車場線である。路線名だけ見ると、いわゆる短区間の「停車場県道」のように見えるが、総延長約3.8kmとそこそこの長さがある。峠の川崎市側は多摩区と麻生区の区境になっている。
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実際の境界は三叉路の真ん中あたり。
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実際には道路の左半分は多摩区なのですが、
少し先で区境は左へそれて、完全に麻生区内になるので問題なし?
川崎市側は急坂ではあるが住宅街の中を登っていく道である。稲城市側は、最近まではちょっとした山岳屈曲路っぽい雰囲気の道であったが、大規模開発と同時に2021年9月には道路の付け替えも行われ、やや長めのトンネルにて大きく迂回する代わりに勾配は大幅に緩和された道になっている。
バス路線
ここで都県境を越えていくバス路線が、"読01"系統寺尾台団地~(小田急線)読売ランド前駅~よみうりランド(正門前)~京王よみうりランド駅である。土休日に1往復のみJR南武線矢野口駅まで延長運転する便がある。担当は小田急バス登戸営業所。以前は、小田急線よみうりランド前駅から近いところにある生田営業所が担当していた。
小田急線読売ランド前の駅前が狭隘で折り返しスペースが取れず、バス路線は駅を通り越して寺尾台団地方面へ直通し、循環ルートで折り返してくる便もそこそこ設定されている。読売ランド前駅発着の便は、近隣にある元生田営業所の跡地である生田折り返し所まで回送している模様。運転間隔は平日が毎時1~3本。土休日は毎時2~4本程度となり、イベント開催時などには読売ランド前駅~よみうりランド(正門)間の便が大幅に増発される。
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行先が小田急線の駅であることも示されています。
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ご覧の通り、折り返し場を設けるスペースはありません。
画面中央付近の明るい部分が読売ランド駅西口で、階段なしでホームに直結しています。
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ただし、このポールには、よみうりランド方面行は止まりません。
並ぶスペースがとれないのが主な原因?
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乗り場は線路沿いの道から少し離れたところにあります。
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バス停は一部省略しています。南口改札も図からはみ出たので省略(汗)。
県道から西口改札経由新宿方面ホームの間は、完全に平面です。
なお、県境は越えないが、よみうりランド(正門前)からは、神奈川県側に小田急線新百合ヶ丘駅発着の"新07"系統が運転されている。毎時2~3本の運転で土休日でもさほど増発されないことから、地域生活路線と思われる。この路線は新百合ヶ丘駅の手前で、もう一度都県境を掠める。詳細は今後の記事(都県境編7)にて解説予定。
また、峠の稲城市側にある日帰り温泉「よみうりランド丘の湯」には、稲城市コミュニティバスであるiバスのCコース・Dコースが立ち寄る。両ルートはJR南武線南多摩駅を運行拠点とし稲城長沼駅や矢野口駅、京王よみうりランド駅や稲城駅を巡回する互いに逆回りの循環線であるが、「京王よみうりランド駅」~「よみうりランド丘の湯」間は、登りが尾根沿いの稲城市道よみうりV通り/降りが東京都道124号線の時計回り運行で統一されている。各ルートとも1日4本づつ設定されているので、「京王よみうりランド駅」~「よみうりランド丘の湯」間は8往復の運転となる。
このバス路線が、「よみうりランド丘の湯」まで登ってくる尾根上の市道にて、都県境を掠める箇所が何箇所か存在する。が、この区間に2箇所ある停留所「巨人軍室内練習場」と「慶友病院」は、いずれも稲城市内に設置されている。
都県境の自治体の変遷
現代の東京都側は、江戸時代には武蔵国多摩郡矢野口村であった。明治初期の廃藩置県の際には、紆余曲折を経て神奈川県とされる。1878(明治11)年に多摩郡が分割され、多摩川以南は南多摩郡となる。この時期の1889(明治22)年の町村制施行に伴い、矢野口・東長沼・百村・平尾・坂浜の各村が合併し、稲城村が成立。稲城の地名はこの時に新しく定められたものである。1893(明治27)年に東京府へ移管。以降、多摩川の南岸に張り出していたた町村の一部を編入した以外ではその範囲を変えることなく、1957(昭和32)年に町制施行して稲城町に、1971(昭和46)年に市制施行して稲城市となって現在に至る。峠の東京都側の住所は、現在でも東京都稲城市矢野口である。
一方、現代の神奈川県側は、多摩区側が武蔵国橘樹郡菅村/麻生区側が武蔵国橘樹郡細山村であった。廃藩置県の際にはどちらも神奈川県とされる。1889(明治22)年の町村制施行時に、周囲の村と合併し、菅村は稲田村/細山村は生田村の一部となる。1932(昭和7)年、稲田村は町制施行し稲田町となる。1938(昭和13)年、稲田町・生田村共に川崎市に編入され、1972(昭和47)年に川崎市多摩区となる。1982(S57)年に、旧細山村エリアを含む旧生田村の西部が分区により麻生区となり、現在に至る。
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郡境=当時の東京府神奈川県境が尾根に沿っている様子がはっきりとわかります。
この地図は、時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」((C)谷 謙二 氏)
により作成したものです。
おまけ
都県境の「空」からの様子は、京王よみうりランド駅とよみうりランド正門付近を結ぶロープウェイ(厳密にはゴンドラリフト)スカイシャトルに乗車することで、眺めることができる。本記事の序盤で載せた「空」から見た都県境の風景は、スカイシャトルに乗車して撮ったものである。
1999(平成11)年に、それまでの動く歩道「スカイロード」を置き換える形で開業した。運賃は大人片道¥300/往復¥500。園内施設ではないのでよみうりランドの入場料は不要であるが、"読01"系統の路線バスの方が若干安いが、こちらは眺望が良いのに加え、待たずに乗れるメリットもある。
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画面右の建物は読売ジャイアンツの室内練習場。
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