エル・グレコとトレド
エル・グレコ[El Greco、1541〜1614]
ギリシャクレタ島出身。名前は俗称で定冠詞のElにギリシャ人を意味するGrecoでエル・グレコです。イコン(聖像画)画家としてイタリアに渡り、知遇を得て、スペインへとその活動の場を広げます。その彼がスペインで大半過ごした場所がトレド。
スペインを代表する画家、マニエリスムの巨匠です。
かつて西ゴート王国の首都でもあったこの地は、後にイスラム教徒の支配下となっています。レコンキスタ開始からトレド奪還まで約400年以上の歳月がありますが、その後のグラナダ王国陥落までも、ユダヤ人と共にイスラム教徒が居残ったと言われています。
異教徒の文化が混在、そして融合しているトレド。今も残る建造物からも破壊されることなく共存してきた歴史を覗き見ることができます。世界中がみんなこうであったら良いのに。
ここがエル・グレコ後半生を過ごした土地です。
私がトレドに行ったのは2014年10月。この旅でグラナダにも向かうのですが上記のような時代背景に、エル・グレコが過ごした土地として一度は行かねばとトレドを選びました。タホ川が旧市街を囲んでいます。川向こうから街を一望できます。この為にわざわざ町外れの宿を取りました。再訪してパラドールに泊まってみたい!
足を踏み入れ真っ先にカテドラルに向かったのですが、なんとこの年は丁度エル・グレコ没後400年の年だったのです!現地で知りました。単純な私は必然的にこの地に導かれたのだなと運命を感じ終始興奮していました。1人で観光していた為、何故1人なのか友人や恋人はいないのかと現地の方に声を掛けられても心細さは一つも感じませんでした。ランナーズハイのような状態で、トレド滞在時はずっと満たされた気持ちでいっぱいでした。
旅と美術鑑賞の醍醐味です。
エル・グレコ、工房の作品が一同に集結!
それはそれは贅沢な時間でした。勿論全てではありませんが、スペイン中から彼の作品がトレドに集結していたのです。カテドラル内や博物館では特別展示となっていて一度に多くの作品を所縁の土地で鑑賞できたことは一生の思い出となりました。
エル・グレコの魅力はそのダイナミックな表現、構造ですが、赤やブルーの色彩も非常に綺麗です。そしてもう一つ眼球が美しいのです。何か訴えているその瞳。眼の表現が作品を一段とドラマチックなものにしています。
日本では大原美術館にエル・グレコの受胎告知が収蔵されています。日本にこの作品が観れるのは奇跡と言われています。同名のカフェもあったり。倉敷も本当良い雰囲気の素敵な街並みですよね。早く気兼ねなく旅行ができる世界に戻って欲しいと切に願います。
しつこく願います。