小さな楽しみ
私は標準体型ではない。
制服などもお直しが必要で、もし辞めたあとに誰かに回すというようなものだとその後は合う人がいないと思われたりする。
だから、その後の誰かのためにサイズの合わない制服を着ることになり、少々不格好でも、まあその組織の一員だと認識されれば良しというような塩梅でやり過ごすことも割とある。
決められたものを着ていれば、似合う似合わないは何でもいいやみたいな諦めが、もう板についてしまってる気がする。
そのせいか服にはあまり興味がない。
サイズが合えば良しくらいのものである。
その代わりというのか、バッグは好きだ。
時間があればオンラインショッピングサイトでバッグのページばかり見ている。
いいなと思えばページを保存するので、好きなバッグの画像はどんどん溜まる。
YouTubeでもバッグ紹介の動画が好きだ。
いいなと思えば検索したりする。
しかし、ほとんど買わない。
いや、買えないというべきか。
値段が高いなとか、たぶん使わないだろうなとか、よくよく見るとそんなに良くないなとか考えてしまう。
少し前に、アキ·カウリスマキの『枯れ葉』という映画を観た。
ヒロインの持っていた赤いトートバッグがとても素敵で、同じものが欲しいなと思い、さんざんネットで探しているが、これだと思うものがない。
少し妥協すればありそうだが、妥協してまで必要というものじゃない。
YouTubeでエヴァー・アンダーソンの持っていたMIUMIUのミニボストンがめちゃくちゃ可愛いなと思って検索したら、その値段にぶっ飛んだ。
実際そんな高価なバッグとても買えないし、そもそも私みたいな小市民は盗難とかが怖くて持てない。
似合う似合わないはこの際、気にしていないが。
いつか欲しいなーと憧れながら素敵なバッグをスマホの小さな画面で眺めることが、私の小さな楽しみだ。