『「ディズニープラス」契約者が訴え起こせず』という旨の表現はミスリードではないか
現地記事と日本語訳された記事のどちらも、ミスリード記事が多いのではないかという問題意識から書いています。とりあえず、伝えたいことだけまとめておりますので、是非ご一読いただけると幸いです。
この記事でお伝えしたいこと
原告はWalt Disney Parks and Resorts(WDPR)のウェブサイトに掲載されたアレルゲン情報を閲覧した事を根拠に、WDPRを訴訟当事者に含めようとしている。(Motion to Compel Arbitration p.2"Back ground")
対してWDPRは、原告とWDPRとの間に仲裁合意があったとして、訴訟による紛争解決ではなく、仲裁によって紛争解決されるべきだと主張。訴訟できないというのはミスリードであり、むしろ紛争解決を円滑に進めようとする姿勢は継続してある。 ネットニュースで用いられている「訴えられない」旨の表現は「紛争解決は訴訟ではなく、仲裁によって行われるべき(手段が異なる)」というWDPR側の主張を端折ったものではないか。
論点はディズニープラスへの加入の有無ではなく、Disney Terms of Useへの同意の有無ではないか。
ディズニープラスの利用規約がMotion to Compel Arbitrationで引き合いに出されているのは、次の二点から、被害者がDisney Terms of Useに同意しており、2019年から2023年にかけて継続してDisney Terms of Useに基づくサービスの提供を受けていた、ということを、筋道立てて説明するために、事実の一つとして列挙するためではないか。
被害者が最初にディズニーアカウントを作成した(Disney Terms of Useに同意した)タイミングが、ディズニープラスのトライアル時であり、かつ、Disney Terms of UseはディズニープラスのSubscriber Agreementと同時に提供されていた
WDWのチケットを購入する際に登録した「My Disney Experience」でも、Disney Terms of Useが提供されていた
上記伝えたいことは、Motion to Compel Arbitration and Stay Case(仲裁の強制執行と訴訟停止の申し立て)を読んだ上で記載しております。以下要約をご一読ください。
Motion to Compel Arbitrationの要約
紛争解決は進めるべき。しかし、それは訴訟によってではなく、仲裁によるべきである。
その根拠はDisney Terms of Use。被害者及び原告は当該利用規約に有効に同意している。
同意したタイミングは大きく以下二つが挙げられ、被害者及び原告が有効に同意したことを証明するに値する。これらの事実はまた、原告が継続的にDisney Terms of Useで規律されるサービスを受けていたことを証明するものである。
2019年Disney+トライアル時、Disneyアカウントを作成する過程で、Disney Terms of Useに同意している。(同意しなければDisney+をトライアルできないので、これは間違いない。)
2023年9月、被害者及び原告がパークチケットを買った際(My Disney Experience登録時)にもDisney Terms of Useに同意している。
よって、被害者及び原告は様々なタイミングでDisney Terms of Useに同意しており、つまり同Terms of Use内にある仲裁条項にも同意しているため、Disney社を相手取るならば仲裁によって紛争解決するべきだ。
ソース:Motion to Compel Arbitration and Stay Case
https://assets.ctfassets.net/3kqcuzntcg31/7sPUjumUI0oJVVIv0amvY5/4f6ceab0b0378d93fb7ff57698926f33/MAY_31_MOTION.pdf
以下もご参照ください。
考察
詳細は10月2日に控える公判で明らかになると思いますが、散見されたコメントに関して、私は以下のように考えます。
Q.完全に無関係ですといえばいいのではないか?
⇒これを主張する方が困難で、かつ、レピュテーションリスクが高まるため避けたものだと考えます。こんなことを明言・断言してしまえば、将来的にテナントが入らなくなる可能性もあるため。。
Q.なんで訴訟ではなく仲裁?
⇒米国においては訴訟は高額で面倒だから、だと考えます。これは原告・被告どちらにも言えることです。仮に訴訟に発展してしまえば、Trialの前に証拠開示手続き等を行わなければならず、これが想像以上に厄介です。すべての段階において弁護士を付けておくのは当たり前のことですし、そうするとチャージがとんでもない額になります。訴訟に発展すれば、レピュテーションにダメージを食らうから、という専門家の意見も正しいとは思いますが、個人的には、本音では上記の理由もあると考えます。
対して、一般的に、仲裁は迅速かつ比較的費用負担が低い紛争解決方法と言われています。また、非公開なので、仲裁会場でのやり取りが世に出回ることもありません。(非公開であるのは、どちらかといえば企業側にメリットがあるかもしれませんね。)
ということで、原告・被告双方にとって、仲裁の方が合理的な場合もあるのです。なお、紛争手段の選択は、規約無効事由ではありません。
全て個人の見解です。当記事の内容や今後の展開等については一切保証しません。