愛犬の最期の瞬間/救急病院に駆けつけて【さよなら③】
かけつけた救急病院の待合室。待った時間はどのくらいだっただろう。
助手の方が来てこういった。「今は人工呼吸器をつけている状態です。」
急いで処置室に入ると、先生が強い力で心臓マッサージをしていた。管で繋がれたわんこ。
もう魂が抜けている
と思った。
「心臓が止まって、わずかな可能性をかけてマッサージをしています。でもこのまま動き出さない可能性のほうが高い。マッサージをし続けるとアバラが折れる事もある。でもやめたら可能性はゼロになる」
そんな説明だったかと思う。
傍らにはいくつかの使い済みの注射器があった。
こうなる前に呼んで欲しかった、という気持ちと、心臓マッサージをする先生の姿がポーズに見えた。なんだかとても悔しかった。
「やめてください、もういいです。」
先生は心臓マッサージをやめた。
もう意識のないワンコが、微動だにせず横たわっている。
最初にかけた言葉は「頑張ったね」だった。
泣きながら何度もなでた。涙がとめどなく溢れる。トリミングへ連れて行ったことを悔んだ。
ただただ泣く私。あふれる後悔。そんな時、
「後悔はない! 後悔はない!」
と、なんども声が聞こえた。私はこの声が何なのか、その時は考えられないまま、ただただ泣いた。
「原因を知りたければ解剖」を断り、お見送りまでのケア(エンジェルケア)の説明をされ一旦退出した。
白い箱に入り、レースのクロスがかけられたわんこを受け取る。娘(3歳)は「わんこはどこなの?」と探していた。
トリミングの病院まで歩いた。思うことはあふれる涙と、ごめんねばかりだった。
娘が生まれてからずっと、かまえなくなった事が気がかりだった。留守番が増えてしまったことも。
もっと一緒に過ごせばよかった、ごめんねと謝る私にまた声が聞こえた。