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【2025年度】中央ロー再現答案&対策について|全額免除合格

みなさんこんにちは。明治大学法学部4年のみやがきしょうごと申します。
今回の記事は2025年度の中央大学法科大学院(ロースクール)の再現答案と対策について考察をまとめております。

私は2025年度中央ローの既習者一般入試を受験し、在籍料と施設設備費全額免除という形で合格いたしました。執筆当時は合格発表から数日しか経っておらず、成績開示手続がまだ始まっていないため、具体的な成績を公開できませんが、成績開示後こちらの記事に掲載したいと思います。

本記事につき、必要に応じてご活用ください。


再現答案

中央ローの入試は6科目(憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、商法)です。私が実際に試験時に起案した各科目の答案を再現しましたので、雑感と合わせてご覧ください。

なお、再現答案は実際の入試と同じく1枚あたり30行と設定して書きました。

※現時点はまだ問題と出題趣旨が公開されていないため、再現答案と雑感のみの記載となります。公開され次第、本記事に追加いたします。

(1)憲法

問題
再現答案
出題趣旨

<出題論点>
・憲法94条「法律の範囲内」
・傍聴人の情報摂取の自由
<雑感>
2年ぶりに統治分野が出題されました。今回は人権分野と統治分野それぞれ1問ずつ出題されました。設問1は論証集に乗っているレベルではありますが、統治分野の論点は書くことが難しいので、どれだけ問題に食らいつけるかがポイントだと思います。私は論証の記憶が曖昧だったので、うろ覚えの状態で規範をでっち上げました。あとは規範通りに事実を当てはめました。

設問2は傍聴人の情報摂取の自由について憲法21条1項の適合性を検討させる問題が提出されました。こちらは保障→制約→違憲審査基準の定立→当てはめという形が妥当すると思ったので、そのように論じました。この問題のポイントはレペタ事件判決を想起し、同判例をうまく使えるかどうかだと思います。判例は裁判所、本問は地方議会という違いがあれども、知覚した情報を自分の表現に役立たせるのに必要不可欠という判例の根拠に注目して、保障と権利の重要性を認定しました。私は被侵害権利を条例の禁止態様に着目して「撮影行為の自由」と書きましたが、抽象化して「情報摂取の自由」と書いても問題ないと思います。

(2)民法

問題
再現答案
出題趣旨

<出題論点>
・解除前の「第三者」(545条1項但書)
・「第三者」(545条1項但書)の主観的要件の要否
・「第三者」(545条1項但書)の登記の要否
・605条の2第1項類推適用
<雑感>
設問1は基本的な論点が出題され、設問2は少し捻りのある問題が出題されました。設問1は、問題が「Aは、Cに対し、乙建物を収去して甲土地を明け渡すように請求した。」とあるので、所有権に基づく返還請求と所有権に基づく妨害排除請求の2本立てか、どちらかを検討すればいいのか迷いました。私は念のため、所有権に基づく返還請求の方をしっかり検討し、妨害排除請求は少し言及するくらいにとどめました。本問では請求原因→所有権喪失の抗弁→解除の再抗弁→「第三者」保護の再々抗弁という順番を意識して検討しました。解除前の「第三者」あたりの論点は多くの人が書けるはずなので、ここはしっかり1点も落とさないように意識して検討しました。

設問2は、AがAB間の売買契約を解除により移転した賃貸人の地位を対抗し、Cに対し賃料の支払いを求めるというものでした。本当は、状態債務論を指摘して605条の2第1項類推適用を検討し、Aに賃貸人の地位が帰属するかを指摘したかったのですが、605条の2第1項類推適用の論証を削っていい箇所が分からなかったことと紙面の書ける箇所の少なさから、あえてAが賃貸人の地位を対抗できるかどうかを書くのを止め、Bが賃貸人の地位を対抗できるかという形で、605条の2第1項を検討しました。これは私の修正力のなさと計画性のなさが招いたミスです。おそらくこの設問2の点はかなり落としたと思います。反省です。

(3)刑法

問題
再現答案
出題趣旨

<出題論点>
 ・事後強盗罪の成否
 ・実行の着手(43条本文)
 ・承継的共同正犯
 ・建造物侵入罪の「侵入」の意義
<雑感>
今年の刑法はXでも話題になっていましたね。憲法と民法で時間を使い過ぎて時間内に書ききれませんでした。試験時は時間がないのに焦ってテンパってしまい、いい加減な検討しかできなかったので反省しています。多分時間があっても、良い答案ができなかったと思います。ロー入学までに刑法をしっかり鍛えようと思います。

唯一点がつくとしたら、承継的共同正犯の規範をしっかり書いたことぐらいだと思います。設問2は書けませんでしたが、定義は抑えていたので、少しは書けていたはずだと思います。本当に反省です。

(4)民事訴訟法

問題
再現答案
出題趣旨

<出題論点>
 ・「請求の基礎の同一性」(143条1項)
 ・重複起訴の禁止(142条)
<雑感>
設問1が「請求の拡張」という聞かれ方にピンと来ず、あれこれ考えて処分権主義(246条)で書きました。しかし、帰って調べたところ、これは訴えの追加の可否が問われていたということに気づき、ここで不合格を確信しました。明らかに勉強不足でした。実際は、143条所定の要件を全て検討し、「請求の基礎の同一性」のところをしっかり書けば点数がつくと思います。

設問2は、重複起訴の禁止に関する問題でした。ぱっと見ではわからなかったですが、問題文に「B裁判所で新たな訴えとして提起」と書かれていたことと別訴の係属中に訴えを提起していたことから、重複起訴の禁止が問われていると気づきました。ちなみに、本問では先に提起した別訴の判決が確定していないので、既判力(114条1項)は問題になりません。142条の要件をしっかり検討しつつ、審判対象の同一性のところだけ少し厚く書きました。重複起訴の禁止は2023年度にも出題されています。典型論点なのでしっかり押さえましょう(私も頑張ります。)。

(5)刑事訴訟法

問題
再現答案
出題趣旨

<出題論点>
 ・令状の事前呈示の要否
 ・捜索中に届いた「物」に対する令状の有効性
 ・「必要な処分」(222条、111条1項)
<雑感>
今年は証拠法が出題されるかと思っていましたが、意外にも捜査の分野から出題されました。30行制限が課されていることから、真面目に一から要件を検討すると行数制限に引っかかると思ったため、問題点を明確に指摘して論点をしっかり書くということを意識しました。実際に、問題文にも「問題となる点を指摘したうえ、適法性を論じなさい。」と書かれているため、論点主義的な答案になりましたが、問題点をしっかり指摘し検討すれば良いかと思います。

下線部②の「必要な処分」(222条、111条1項)は紙面の都合上、判例の論証をそのまま書くのではなく、あえて「①必要性と②相当性」という要件を簡略的に書いて、当てはめのところで判例のフレーズをねじこみました。この方法はかなりリスキーですが、むしろこのおかげで紙面不足にならないで済みました。このような書き方は場面によって使い分けるべきだと思います。

ちなみに、刑事訴訟法は当てはめがかなり重視される科目であるため、事実を引用→評価という形を守ることを意識しました。事実評価という点については、学部の刑事訴訟法の授業で議論を通して教わっていたため、なんとかなりました。刑事訴訟法の先生には感謝しています。

(6)商法

問題
再現答案
出題趣旨

<出題論点>
 ・取締役会の承認のない代表取締役による取引行為
 ・任務懈怠責任(423条1項)
 ・株主による会社への株主代表訴訟
<雑感>
試験時は、民事訴訟法→刑事訴訟法→商法という順番で解いたので、商法に着手する時点で残り20分程度しかありませんでした。そのため、小問(3)は不十分な論述になってしまいました。

小問(1)は、代表取締役の行為が会社に帰属するかという問題です。今回は「多額の借財」(362条4項2号)該当性を検討する必要がなかったので助かりましたが、似たような問題が出た時はしっかりと検討しないといけません。そして、代表取締役に代表権があること(349条1項、同条4項)を指摘し、原則→修正という形を守って論述しました。

小問(2)は、P社に対する取締役A B Cの任務懈怠責任(423条1項)を検討する問題でした。基本的に捻りのない問題なので、条文文言に淡々と当てはめるだけで十分ですが、A B Cそれぞれが負っている「任務」の内容をしっかり特定しないと点はつかないと思います。個人的に書き損ねましたけど、ABの損害賠償債務は430条により不真正連帯債務になることも言及すれば良かったと思います。これができたら完璧だったのではないかと。

小問(3)は、時間がなくて全く書けなかったのですが、上記取締役に対する対会社責任を代わりに株主が株主代表訴訟で提起するという問題です。これは847条の要件をしっかり検討すれば足りると思います。私は刑法の途中答案が頭によぎったので、形だけでも完成答案を書きたいと思い、あのような形で書いてしまいました。途中答案になってもあまり変わらないと思いますが、採点側の印象を損ねたくないという理由からあえてそうしました。

(7)全体の感想

出来に関しては正直なところ、合格するとは思いませんでした。結果は全免合格でしたが、途中で無理だと思っていました。直近2ヶ月は大学の定期試験もありほとんど勉強していなかったので、当然の結果だと思っていました。しかし、たとえ不合格であっても「問題に食らいつくぞ」という姿勢だけは採点側に示したかったので、「できることをやろう」という気持ちで解きました。私は精神論が好きではないですが、どんな試験でもメンタルは大事なので、今後司法試験に臨むときもその気持ちでいようと思います。

中央ローは30行制限という特殊なレギュレーションがあり、かつ3科目同一時間内に解くという形式があるため、書く分量の調整と時間配分がポイントです。私は最初の30分を答案構成に使い、あとはそれぞれ均等に配分して臨もうと作戦を立てていました。結果は途中答案が1科目(実質的には2科目)が出てしまいましたが、過去問や基礎的な問題を解いて自分の書くスピードを把握し、それに合わせて調整するべきです。また、試験時では30行制限のある科目は文字を少し小さめに書いて分量を調整することも意識しました。なので、再現答案では30行制限のない憲法と民法は文字のサイズを10ポイント、30行制限のある刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、商法は文字のサイズを9ポイントで再現しています。

難易度については、問題は比較的難しかったと思います。Xでは例年に比べて難化しているという言説が流れていましたが、個人的には去年よりかは難化しているものの、一昨年ぐらいのレベルに落ち着いているかなという印象です。理由は、基本論点・分野と応用論点・分野がはっきり分かれていたからです。去年は比較的基本論点が多かった一方で、一昨年は応用論点もそれなりにありました。なので、基本論点・分野をきっちり仕留めて、応用分野は踏みとどまらずに食らいつくというスタンスで試験に臨むのがいいのかなと思います。また、中央ローは例年受験者の半数程度合格者を出すので(全免・半免はまた別。)、問題の難易度と合格の難易度はあまり比例しないと思います。実際、試験終了直後私が出来が良くなくて絶望していた時にふと周りを見ると白紙答案がかなりいたので、たとえ試験中あまり出来が良くないと感じても気にしなくていいです。

対策について

ここでは、試験までの対策と試験中の対策を分けて説明します。

(1)試験までの対策

前述の通り、中央ローは8月の下旬とロー入試では比較的早い段階で始まるので、受験者が学部生の場合は定期試験後すぐに直前期を迎えると思います。そのため、次のことを直近1ヶ月は以下のように対策するといいかと思います。

・基本論点(Aランク、Bランク)は満遍なく押さえる
・問題集で検討手順や事実を確認する
・過去問演習で時間配分とレギュレーションに慣れる

上記について、それぞれ説明します。

  • 基本論点(Aランク、Bランク)は満遍なく押さえる。
    →前述した通り、中央ローは基本論点と応用論点どちらも出題されます。
    基本論点が書けないと点がつかないので、基本論点を押さえておきましょう。また、後述する理由から、30行制限のある刑法、民訴、刑訴、商法については省略していい箇所も押さえておきましょう。

  • 問題集で検討手順や事実を確認する
    →間接的に司法試験に続く試験なので、検討手順は重要です。受験後に私の再現答案と他の方が公開している答案を比較すると、中央ローは知識よりも書き方を重視している可能性があると思いました。なので、問題集を通じて検討手順や要件の検討方法を確認しましょう。また、論点を展開するべき事実との対応関係も押さえておきましょう。

  • 過去問演習で時間配分とレギュレーションに慣れる
    →前述の通り、中央ローは刑法、民訴、刑訴、商法に30行制限を課されるため、特殊な形式の試験に臨むことになります。また、時間もギリギリなので過去問演習に慣れておきましょう。過去問演習を通じて各分量と時間配分をしっかり練って試験に臨むべきだと思います。実は私は過去問を真剣に解いたのが2024年度の下3法(民訴、刑訴、商法)だけだったので、後悔しています(問題自体は直近3年度分をしっかり確認しました。)。

(2)試験中の対策

基本的に試験は本番までの勉強が合否に大きく影響しますが、特に試験中に使えるテクニックを説明します。

・法的三段論法をしっかり守る
・30行制限の科目は規範を簡略化してもいい
・試験中に絶望しない
・当日は大きめのカバンを持っていく

  • 法的三段論法をしっかり守る
    →私は刑法は設問の半分、民法1問、商法は1問、民訴は1問は論点を確実に落としていますが、それでも全免合格したことから、中央ローは知識よりも書き方が重視されている可能性があると思います。条文と事実の当てはめ方、当てはめ時の論述の方法、検討手順がありますが、特に法的三段論法は未知の論点が来ても守れる書き方なので、法的三段論法は徹底しましょう。法的三段論法なら規範をでっち上げても書けます。規範と当てはめをしっかりと対応させることを意識しましょう。

  • 30制限の科目は規範を簡略化してもいい
    →30行制限では各分量を取捨選択する必要があります。特に、長めの論証は理由づけを省略したり、規範を簡略化するのもテクニックの一つです。たとえば、民法94条2項の類推適用なら、「民法94条2項類推適用の要件は①虚偽の外観、②真正権利者の帰責性、③第三者の正当な信頼の3つである。」と簡略化してもいいと思います。用紙不足よりかはマシです。もっとも、問題文の事実や指示によっては簡略化が通用しないことがあるので、臨機応変に対応しましょう。

  • 試験中に絶望しない
    →試験はメンタル勝負の側面もあるので、試験中に絶望するのはマイナスです。1科目の出来がダメだったからといって引きずって、解けていたはずの他の科目もダメにするのは本末転倒です。中央ローは比較的早い時期に始まるし、答案を最後まで書けば何が起こるか分からないので、答案をしっかり完成させることを意識しましょう。私が試験中不合格を確信しても、結果全免合格できたので「なんとかなる」と思うようにしましょう。

  • 当日は大きめのカバンを持っていく
    →試験とは関係ないと思いますが、大きめのカバンを持っていくことをオススメします。というのも、予備試験の論文試験を受験したことのある人なら分かるかと思いますが、中央ローではポケット六法が貸与され、帰りに「持って帰ってください。」と指示されます。荷物がパンパンだと帰宅が大変なので、少なくとも六法が入るだけの容量のカバンは持って行った方がいいです。私は小さめのカバンを持って行って後悔しました。

【まとめ】形式は特殊、しっかり対策して臨もう!

最後に記事の内容をまとめます。

試験までの対策

  • 基本論点(Aランク、Bランク)は満遍なく押さえる

  • 問題集で検討手順や事実を確認する

  • 過去問演習で時間配分とレギュレーションに慣れる

試験中の対策

  • 法的三段論法をしっかり守る

  • 30行制限の科目は規範を簡略化してもいい

  • 試験中に絶望しない

  • 当日は大きめのカバンを持っていく

以上になります。長々とここまで読んでいただきありがとうございました。
お互いに頑張りましょう!


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