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香港 #26

レースのカーテン越しに朝の光が透けているのを感じ、目覚めた。
アンディも丁度起きたばかりの様子で私の方に向くと、おはようと私のおでこにキスをし、髪を撫でた。
「今日一日中、優亜を抱いていたい」
「私も、そうされていたい。でも・・・今日は帰るね」
と、はにかんだ。
「じゃあ、明日は会える?」
とアンディ。彼に、何故私が日本に帰国したかという話を一切していなかったので、きっとただの休暇中だと思っていたに違いない。しかし、そんな事よりこれで終わりではなく、また彼に会えるんだと私は大きく安堵する。
「二日後、香港に戻る予定なの。その次の日の夕方、私の仕事帰りに会えないかな?」
と聞いてみる。
「優亜、どこのエアラインで帰る?何時の飛行機とってる?」
「CXで17時50分発だけど」
「じゃぁ、僕が予定を変えて同じ飛行機に乗るよ。優亜の予約一旦消すね。ビジネスクラスの席を二席取るから一緒に帰ろう。優亜は何も心配しなくていいから、ただ空港に16時に来てくれる?着いたらスマホに連絡を入れてくれれば、それでOK」
驚いてキョトンとしている私の返事を聞かず、彼は強引にすべて決めていた。でも、それもなんだか嬉しかった。

それから、アンディは、恥ずかしがる私の腕を引っ張りバスルームに連れて行くと、二人でシャワーを浴びた。
「二日後一緒に香港に帰れるなんて。なんて楽しみなんだ」
彼はとても浮かれていた。
私もとても嬉しくてたまらなかったが、これから祖母の家に帰る事を考えると気持ちが重かった。

昨日嘘をついて家を出た。仕事だと言った以上、浮かれた顔で戻る事は出来ない。祖母に何も悟られないまま、私は香港に帰るまでの日を過ごさなければいけない。それに母の葬儀が終わってまだ三日目。祖母の心の整理はついているはずもなく、まだ深い悲しみの中にいるのを十分承知していた。それを考えると私の行動は、ずいぶん勝手だという事もわかっていた。私は、母の死に向き合うのを避け、自分の心が痛むのを避け、逃げていた。

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