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香港 #39

アンディのおばあさまの家の前につくと、緊張がますます高まった。
とにかく、第一印象が大切だと笑顔を作った。
アンディがベルを押すとすぐにおばあさまが扉をあけ、幸せそうな表情で彼とハグをした。その後で私が、
「こんにちは。優亜です。はじめまして」
と挨拶すると、おばあさまはとても驚きの表情を見せた。
私は理由わけもなく胸のざわめきを感じた。
「あの」
「ごめんなさい。あまりに知りあいに似ていたものだから、とても驚いてしまって。さあどうぞ。どうぞ、中へ」
そういう彼のおばあさまの顔は強張っていて、明らかに何かが変だった。

最高に幸せそうな笑顔のアンディと、何か心につっかえていた私。
二人がソファにかけるとまもなく、おばあさまが紅茶セットを運んできてくれた。そして、おばあさまが席についたところで、改めてアンディが姿勢を正し、横にいる私の手を握りながら私の瞳を見た後、おばあさまの方を向いてはっきりと告げてくれた。
「彼女が僕の愛する人です。結婚しようと思っています」
おばあさまは、瞬間的に下を向いた。
「おばあさま、僕の結婚を喜んでくれないの」
少し様子が妙な事に気づき、アンディが声をかけた。
「いえ、とても喜んでいるわ。おめでとう、アンディ」
すぐさま顔をあげて彼にお祝いの言葉をかけたが、私とは目を合わせないようにしているのがわかった。


それからおばあさまは、「そろそろかしら」とつぶやきながら私の前にカップを置き、ポットの紅茶をカップに注ぎはじめたが、手が震えていたせいなのかソーサーに少しこぼしてしまった。
「ごめんなさい美英」
アンディが「優亜だよ」と間違いを正すと、おばあさまはハッとした表情に変わった。
「どうして母の名を?あの・・・母をご存じんなんですか?」
私が詰め寄る様に聞いた。
おばあさまは突然ひとすじ涙を流したかと思うと私をじっと見つめ、今度は視線をそらさなかった。
「優亜さん、貴女はやはり美英の娘さんなのね。こんな事って・・・あまりに瓜二つだから、さっき初めてお会いした時、美英が帰って来てくれたのかと思ったくらいで・・・」
アンディは何がなんだかわからずぼかんとしていた。



おばあさまは、さらに続けた。
「美英は、一度は私の娘だった人。貴女のお母様は本当に明るくて、優しい人だった。いつも私にとても良くしてくれて、私も本当の娘のように思っていたのに、結局・・・ごめんなさい、本当にごめんなさい」


アンディのおばあさまが、私の母の最初の夫のおかあさま?!
気を確かに持ち、確認した。
「美英の、私の母が最初に結婚したのは、あなたの息子さんなんですね」
おばあさまは、頷いた。
私は、あまりにでき過ぎた偶然に絶句した。

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