香港 #41
一番の身内である祖母が、きっと私達の結婚を許さない。母を苦しめた人達の子であるアンディを受け入れてくれないだろう。
また、私が母と同じ目にあうのではないかと心配し反対するのが容易に想像出来てしまう。それに、私がいつかこの国を離れ、日本に帰る日を楽しみに待っている、そんな祖母にはあまりも酷い仕打ち。
そして、母がもし生きていたら。
喜んでくれないのだろうか?
許してくれないのだろうか?
一度は愛した人が、別の女性との間にもうけた息子と私が結婚するのは受け入れ難いのか?それとも、かつて愛した人の子供だから許せるの?
そして、一番大切な私の気持ち。
祖母を悲しめるのは本意じゃない。でもだからと言ってアンディを諦められるのだろうか?
いいえ、それは、絶対無理とよくわかっている。
祖母には、育ててもらった恩がある。できる限り悲しめたくはない。でも誰がなんと言っても、どんなに祖母が私を責めても、憎んだとしても、私の気持ちはアンディから離れる事は決してないと確信した。
愛ある場所がいつも暖かくて幸せに満ちているわけじゃないのだと気づく。身勝手さ、残酷さ、誰かを傷つけるネガティブなfaceが共にある。
そして、仮に未来の私が目の前に現れて、この選択は違うと言ったとしても、今この瞬間の私の思いが全てだ。
アンディと一緒にいたい。
私の答えは出た。
翌日アンディが会いに来てくれた。眠れなかったのだろう、目が真っ赤だった。
ただ、彼も同じ気持ちでいてくれた事がとても嬉しかった。
「両親が君のお母さんにした罪を背負って、僕は一生君を愛します、大事にします。僕について来てくれますか?」
私は「はい」と強く答えた。
「すぐに、一緒に暮らそう」
思いがけない申し出をしてくれる彼に頷いて、私達は強く抱き合った。
「そうと決まったら、善は急げ。業者に連絡するから、二、三日中に僕の所に来て」
「それと今度、兄にも会わせなきゃ。君のお兄さんでもあるんだからね。
それから、日本にいる君のおばあさまに会って、きちんと話をしよう。わかってもらえるかどうかわからないが、君と結婚する意志は伝えたい」
私とアンディの新しい生活が始まろうとしていた。
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