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香港 #47
翌日、七人全員で集まり食事会を行うことになった。
急な話だったので、場所はアンディが日本で撮影する時にいつも利用しているホテルでという事になった。
アンディが、私の写真をまた撮りたいから、約束の時間より二時間ほど早く来てと言ったので、私は祖母より一足先に家を出た。
ホテルに着くとアンディが、撮影用のいいウェディングドレスが何着も入っているので、リハだと思って着てみてと言い出した。
私が躊躇しいる間もなく、彼はドレスのある部屋へ私を連れて行くと、沢山あるウェディングドレスの中から、これが一番似合うはずだと言って、純白の繊細な総レースに、小さなキラキラ光るストーンが無数にちりばめられたドレスを見せた。
私は目の前にある、あまりに美しいドレスに言葉をなくし、ぼおっとして突っ立たままだった。
「すぐにドレスを着せる準備をして。それからヘアーとメイク、清楚めに宜しく」
アンディはせっかちに、まゆさんとアンさんに向かって指図した。
久しぶりに会った二人のスタッフはとても上機嫌で、私に再会できた事をとても喜んでくれるとすぐに仕事にとりかかった。
まゆさんは、華奢な体のどこにそんな力が隠れていたのかと思うほど、力強くコルセットをきつく締めあげ、私のウェストラインがとても綺麗に見える様ドレスを着せてくれた。私は近頃、体重が5キロ程減っていて助かったと、一人心の中で安堵した。
その後でアンさんが大きなケープをかけてくれ、私のヘアーをあっという間に丁寧に編み込み、まとめると、今度は少し白目のファンデーションをつけ、ピンク系のチークや艶の出るリップを塗り、とても優しい顔になるメイクを手際よく施してくれた。それは先日の撮影の時とは全く違った印象のメイクで、私は、彼女はまるで魔術師の様だと目を見張った。
それから、ケープが外され、最後に白いベールが頭につけられた。
鏡に映る自分の姿に涙ぐむと、
「メイクが崩れるから我慢して」
と、いったん姿を消していたアンディがいつの間にか戻ってきていて、背後から声をかけてきた。
「Perfect!優亜、世界一綺麗だよ」
と私の側に来て耳元で囁く彼に、私はとても嬉しい反面、気恥ずかしさを感じた。
私が頬を赤くし俯いていると、彼は以前と同じ様にしゃがみこみ、ドレスの裾を少し捲り上げると、真っ白なシルク生地に小さな青い薔薇が二輪づつ刺繍された7センチのヒールを履かせてくれた。
「Something blue?」
と驚く私に、
「そうだよ。幸せになる為の僕からのプレゼント。さぁ、撮影に入ろうか」
アンディがスタッフに合図を送ると、彼らは私を別の部屋へと案内し、少しだけそこで待機すると言った。