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私は、その夜ひとつの賭けをした。もし明日の朝晴れていれば、彼とはサヨナラ。もし雨が降っていれば、サヨナラはしないと。私は私の意志ではなく宇宙に身を任せようと眠りについた。
しかし、いつもの強がりも通せない程、おかしなくらい怖い気持ちが押し寄せて来た。寝苦しさに何度も何度も寝返りを打ちながら――そして、朝は来た。
気怠い体を起こしベッドからゆっくりと出て窓に向かうと、ピッタリと閉じていたカーテンを開けた。「ああ」と思わず息がもれた。そう、目の前のガラスには大粒の雨が流れ続けていたのだ。まるで、私の心をわかっていたかの様に、街は濡れていた。
【19:54 神戸】港の風が、私の髪をなびかせ過ぎていく。彼と手を繋ぎながら停泊する大きな客船の前で、私は未来に思いを馳せていた。まるで偶然のような船の名、UNIVERSE<宇宙>。全てを包み込み、次の旅を待ち望んでいるかのよう。「ねぇ、私が望む未来に、連れて行ってくれませんか?」心の中でそう呟きながらちらりと横に目をやると、彼の瞳は、まっすぐにその船を見つめていた。
「少し寒いね」
彼の言葉に、私が思わずギュッと手を握って答えると、彼はコートのポケットに繋いだ二人の手を入れた。「今、彼は何を考えているのだろう?どこに行こうとしているのだろう?」だけど、そんなことは聞かなくてよかった。ただ、繋いだ手から伝わる彼のぬくもりが私の心を温めていて、それでいい、それでよかったのだ。
許される限り一緒にいたい。私は次の雨を、祈った。