【あとがき】『後輩がイケメンすぎると問題かと……　』のモデルとなった人物『S』について

　「後輩がイケメンすぎると問題かと…………　」を無事執筆し終えて、なんか安心した気持ちとポッカリ穴が開いた気持ちがあり、とっても複雑な今日頃の頃です。長いお話をお読みいただいた皆様に感謝感謝です。いつも心温かい『スキ』とコメントに励まされ、1日がとっても楽しく過ごせました。重ね重ね本当にありがとうございます。

もちろんお話はフィクションですが、実は登場人物の中で一番あり得ないキャラに見える主人公の1人、イケメン「恵基（しげき）」にはモデルがおります。今日はその恵基のモデルとの思い出を記録がてら残しておきたいと思います。

今からウン十年前のことですが……

当時私はスペインのマドリッドでバカンスを利用して私立の語学学校に通っておりました。１ヵ月の予定でしたが、私が入ったクラスにエキゾチックな超イケメン　"S"　がいました。

入学したてでウハウハウキウキのあづきは、最初の週末に

トレドへ遊びに行こう！

と、クラスの皆を誘いオーガナイズします（← 一応本業ですので、こういうの得意…　笑）。その時、無茶苦茶イケメンだった「S」にも声かけました。（ちょっと下心あったかも　反省）　/(^o^)

そしたら、行く気満々だったクラスの殆どがキャンセル……　皆「S」と関わりたくなかったのでした。かれこれ1年以上学校に通っているSは、実家がモンテカルロの超○金坊ちゃんだそうで、とにかく周囲をバカにした傍若無人ぶりに、皆は最初チヤホヤするものの、すぐ遠巻き疎遠になっていくんだそうです。

で、結局あづきとＳとＳの友人というフランス人カップルの4人でトレドに行きました。

「Ｓ」は噂通りとんでもない輩でしたが、同行したSの友人のフランス人カップルがうま～く調整してくれて、トレド日帰り旅行はまあまあ楽しかったのです。

それからというもの友人がいないＳは、学校であづきに付きまとい（というか、利用しまくり）、週１回授業で行われるスペイン語の作文発表でタッグを組むことになりました。全くやる気のないＳでしたが、イベント前日、準備をしようとあづきを自宅アパートに呼び出します。そしてその日はあづきが仕上げていた原稿の下書きを一緒に手直しする程度で『下準備』は終わり、残りの時間はSの家にあったワインを飲みながら一方的にSの話を聞いていました。その時のSは、誰かに話しを聞いてもらえるのが嬉しかったみたいで、わりと普通の青年っぽく見えました。

Sの家庭環境は聞くからにかなり複雑でした。彼は父親と愛人の中華系女性の間に生まれた非嫡子で、父の正妻もそれを承知で一緒に暮らしていたそうです。彼が16くらいの時に父親が離婚、それからは父が所有しているモンテカルロのアパートで形式上は父親と同居で独り暮らし。Sの父が家にいることは殆どなかったんだそうです。

本人曰くマドリッドでは地味な暮らしをしているようでしたが、私達より遥かに金回りがよく、考えも行動も坊ちゃん過ぎてついていけないあづきでした。まあでもどうせコイツとの付き合いも1か月だ、それまで（あづきにとっては）地球外生物のようなSと一緒にいるのも面白いかも　という好奇心から、結構譲歩してつるんでいました。

あづきがマドリッドを出発するまで、Sとの妙な友人関係が続き、授業をよく欠席していたSが、授業が終わってシエスタから目覚めたくらいの時間に必ず「家に来い。うまいもの食わせてやる」みたいな俺様口調であづきを呼び出しては、夜な夜な酒を呑み交わような仲でした。（←酒と食べ物につられてノコノコ行くあづきもバカですが、まだ若かったんです……　大反省）

まあそうやって美味い酒のご相伴に預かりながらSの傍にいた即席友人あづきは、

イケメンでお金もあるけど、誰にも真面に相手にされないのが寂しいんだろうなあ――　

と、Sに同情しはじめました。派手に動きたがる癖に、家にいる時は一人でしょぼんとしていたSに「それ、あんたの責任だよ。もちっと周囲の空気読まなきゃ、ずっとこんな感じだと思うけどね」と発言してしまい、ちょこっと傷つけてしまったみたいです。

マドリッドの楽しい1か月はあっという間に過ぎて、その後学校の友人やSとも疎遠となってしまい、彼のその後は全くわかりません。

周囲から一時的にチヤホヤされるのではなく、自身が『誰か（=由美さん) 』を追い求める勇気を持った物語の中の恵基（しげき）のように、Sも『誰か』を追い求めて、幸せな家庭を築いてくれていればいいなあ　と思うあづきです(^o^)