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【超短編】白紙回答

 「はい、それではスタート!」

 館内にその声が響き渡った瞬間、私達は机の上に伏せられていた用紙をひっくり返し、テストに臨んだ

最初の項目
あなたの名前をアルファベットで書きなさい

用意された鉛筆で自分の名前を書いた


次の項目
問題を最後までよく読んで答えなさい

問題1 アメリカで喋られている言語は?
1 スペイン語 
2 日本語
3 英語

問題2 1+1 はいくつになる?
1  “2”
2  “4”
3  “5”

問題3 「愛」は英語で?
1  “dream”
2  “love”
3  “kiss”

誰にでも答えられそうな、くだらない3択がいくつも続いている

問題は時間制限だ

3択問題は全部で70問近くあり、制限時間は1分だ

私達はわき目も降らず必至に問題をクリアしていく

 「はい、終了!」

 最後まですべての問題を終えることはできなかった

 私だけじゃない、ほとんどの人が不合格だった

 1分なんて短すぎる


 わずか数人だけ合格者がいた

 でも合格した彼らのテスト用紙は名前が記入されている以外、ほぼ白紙だった

 「なんで、問題に答えてない人が合格なんだろう? 」
 私達の多くはそう思った

 一緒にテストを受けた私の友人は合格した

 私は彼女に聞いた

 「テスト問題、なんで答えなかったの? 」

 「ちゃんと、答えたよ」

 「ほとんど白紙だったじゃない」

 彼女は呆れたように笑った

 「『問題を最後までよく読んで答えなさい』って書いてあったよね」

 「うん」

 「最後まで読んだ? 」

 「読めなかったよ。タイムオーバーで」

 「私は最後まで読んだよ。 そしたら最後に書いてあった」

 ―― 問題5のみ答えなさい ――

 「だから、5番だけ答えたよ。 殆どの人は『最後までよく読んで答えなさい』っていうのを無視して、いきなり取り組みはじめたから、当然制限時間内には終わらなかったんだよね」

友人は最初にテストの問題を回答せず問題だけ読んだのだ

 たしかに

 ―― 最後までよく読んで答えなさい ――― 

って書いてあったな……

大失敗!

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