【ワーママの読書感想文】『Iの悲劇』米澤穂信著
ミステリー大好き、フルタイムワーママ、みりーほです。7月は土日も仕事があり、働き詰めでしたが、8月は余裕がでてきました。来週は夏休みもあります。
やっと、大好きな読書をする時間がとれます!
今回は、昨日読了した本、『Iの悲劇』の感想です。
ネタバレはありませんので、安心してください。
書店で、文庫版を発見し、購入しました。
米澤穂信さんの作品は、今まで、『王とサーカス』等の太刀洗万智シリーズ、『満願』、『黒篭城』、『可燃物』を読んできました。
長編も好きですが、『満願』や『可燃物』のような短編集では、米澤さんの確かな文章力と構成力があってこその、すっきりとまとまった物語を味わえます。
『Iの悲劇』は、長編でありながらも、各章を独立した短編として読むことができる、米澤さんの美味しいとこどりの物語でした。
あらゆる地方都市が、これから直面するであろう、人口減、税収減、産業の衰退等の問題。
主人公の万願寺は、自分の非力さを感じながらも、地元の復興のために、公務員として誠意をもって取り組んでいます。
万願寺は、インプレッサに乗る、等身大の、ロスジェネ世代です。
同世代の人間として、バブルの残党である手抜き上司、西野課長と、価値観のまるで違うZ世代の新人、観山に挟まれて、やりたくもない仕事を背負っている万願寺に同情してしまいました。
Iターン事業によって、蓑石地区にやってきた、癖の強いメンバーが、各章ごとに、トラブルに見舞われ、どんどん転出していきます。
最初のうちは、西野課長の鮮やかな推理や、万願寺と観山のバディ感を発揮した解決に、ちょっとスッキリしたりしたのですが、、
米澤さんのミステリーは、日常のミステリーも多いですが、フツウ過ぎて、疑問を感じ、、
そして、あまりにも、去っていく住人が増えていくので、徐々に不思議な気持ちになりました。
しかし、最後は、その不思議な気持ちが全部ひっくり返り、ピースが全てはまります。
やはり、米澤さん。やられました。
ストーリーとは関係がない部分では、東京で働く、万願寺の弟が、電話で万願寺と議論する場面が印象的でした。
地方で働く兄は、仕事にやりがいを感じているが、成果はないことが多い。
東京で働く弟は、成果や報酬はあるが、忙しくて、家族との時間はとれていない。
本当の幸せとは、どちらにあるのか、と。
極上の長編ミステリーであり、短編集であり、社会派小説でもある、そんな作品でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!