ラストは涙がとまらなかった。『存在のすべてを』塩田武士著
皆さん、雨が多い季節ですが、お元気にお過しになれますように。
ミステリーファン、フルタイムワーママ、みりーほです。
『罪の声』で大ファンになった、塩田武士先生の新作、2024本屋大賞3位の『存在のすべてを』を読了しました。
ネタバレはありませんので、ご安心ください。
あまりの感動に、涙が次から次へと流れ続け、しばらく放心状態になりました。
過去に起きた、二児誘拐事件の、事件当時の緊迫した様子から物語は始まります。
元新聞記者である著者による、綿密な取材に基づく、緻密で現実感のある事件の描き方により、まるで、現実に起きた事件記事を読んでいるかのような気分になります。
事件の本当の謎が解決されないまま、物語の舞台はコロナ禍の現代へ。
当時新米記者だった門田は、週刊誌の記事をきっかけに、再び事件の真相を追います。
『罪の声』と同様に、一つのヒントが得られ、そこからまた次のヒントを追いかけていくと、解決の糸が途切れそうになります。
諦めそうになる度に、門田が粘り強く築いた、過去の人間関係により、思わぬ線からの情報を得ます。
門田による、真相を追う物語と並行して、事件に関わった人物達の、人生ドラマが描かれます。
その大きなテーマとして、写実画があります。写実画にこだわった画家と家族、そして、その周辺の人間達が、事件と絡み合い、運命に翻弄されていくのです。
事件の真相と、絵を描くことの意味、運命と愛、記者の使命が、最後に合わさった時、著者の訴えたかったことが、胸に迫ります。
とくに、子を持つ親には、ぜひ読んでいただきたい作品です。
読後に、我が子を抱きしめたくなる小説でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。