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『夏への扉』の書評。山﨑賢人主演で映画化されたが原作との違いは?
『夏への扉』SFファンなら一度は耳にしたことがあると思います。
超有名な古典的SF『夏への扉』は、なぜか映画化されたことがありませんでした。
アメリカの小説家、ロバート・A・ハインラインさんの原作ですから、当然アメリカで映画化されると思っていましたが…
結論から言うと、日本で映画化されたわけですが、驚きというか信じられませんでした。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のモチーフになったりしたことはありましたが、アメリカでは映画化されなかったので不思議には思っていました、まさか日本とは…
調べてみると、それもそのはず、『夏への扉』原題:The Door into Summeは、ロバート・A・ハインラインさんの著作の中でも、本国アメリカでは評価が高くないそうです。
どちらかといえば『宇宙の戦士』や『人形つかい』の方が評価が高いようで、『夏への扉』の世界観は、日本人に合っていたのかもしれませんね。
小さなの恋の物語というか、復讐劇というか、日本人には受け入れやすかったんだと思います。
待望の映画化は、まさかの日本だった
『夏への扉』なんと日本で制作され、2021年6月25日に公開されました。
⇒『夏への扉 -キミのいる未来へ-』公式サイトはこちら
主演は、『キングダム』ので見事に主役を演じた山﨑賢人さんです。
映画化されるとき、注されるのが「原作と映画の違い」ですが、ネタバレが怖いので、まずは双方のあらすじを見てみましょう。
原作『夏への扉』のあらすじ
ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にあるいくつものドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。1970年12月3日、かくいうぼくも、夏への扉を探していた。最愛の恋人に裏切られ、生命から二番目に大切な発明までだましとられたぼくの心は、12月の空同様に凍てついていたのだ。そんな時、「冷凍睡眠保険」のネオンサインにひきよせられて…永遠の名作。
映画『夏への扉 -キミのいる未来へ-』
1995年の東京でロボット開発に携わる科学者・高倉宗一郎は、愛猫・ピートと尊敬する偉大な科学者だった亡き父の親友・松下の娘・璃子との平穏な日常生活の中で、完成間近となった松下の遺志を継ぐプラズマ蓄電池の開発に没頭していた。しかし、宗一郎は信頼する共同経営者と婚約者・鈴の裏切りによって会社と開発中のロボットや蓄電池をすべて奪われ、さらにコールドスリープに入れられてしまう。
2025年の東京で目覚めた宗一郎は、ピートや璃子の死を知ってすべてを失ったことを悟り、変えられてしまった運命を取り返すため、30年の時を超えた復讐を決意する
あらすじを見る限り、大きな違いは感じられませんが、時代と国が違いますよね。
原作が1970年のアメリカに時代を設定しているので、映画で設定されている1995年の日本とでは時代背景がかなり違います。
したがって30年後の未来も、かなり技術進歩が違ってくるため、作品の雰囲気は違います。
登場人物の相関も、若干のズレがあって
原作では、主人公「ダン」の共同経営者「マイルズ」の義理の娘だった「リッキィ」が、映画では、主人公「高倉宗一郎」の養父の娘に変更されています。
相関は、ストーリーに大きな影響を与えるほどの変更ではないと思いますが、時代背景のズレとラブストーリー色の強さが、原作との違いを生んでいると思います。
双方を読んで、あるいは見て思うことは、本当につきなみで申し訳ありませんが、原作の方が面白いです。
『夏への扉』と『ピートのふしぎなガレージ』
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ここまで、原作『夏への扉』と映画『夏への扉 -キミのいる未来へ-』について書いてきましたが、もう一つ紹介したいことがあります。
2013年4月~2020年3月まで、TOKYO FM放送されいた『ピートのふしぎなガレージ』です。(私は山口県在住なので、FM山口で聴いていました。)
もともとラジオが大好きな私なんですが、その中でも『ピートのふしぎなガレージ』は特別な番組でした。
番組名を聴いた瞬間、「ピートって夏への扉じゃん!」
案の定、タイムトラベルが番組の主題だし、ピートの名前の由来は『夏への扉』でした。
終了した番組なので、残念ながら公式サイトは閉鎖されています。
なので、Wikipediaから番組概要を引用します。
とある街にある洋館にひょんなことから足を踏み入れた主人公が、そこで出会った住人の宇宙人、エヌ博士に翻弄されながらも色々な事を学んでいく。番組は、その回ごとに様々な趣味やテーマについて、タイムトラベルをしながらその成り立ち・発展を学ぶドラマパートと、その道に通じたゲストの話を聞きに行くトークパートが交錯しながら進行する。登場人物の名前をはじめ、劇中ではSFに関する小ネタも多い。番組冒頭でガレージから出発する時に毎回流れる曲は、ジョージ・マハリスの「ルート66」である
番組の設定は、回ごとのテーマに沿ってタイムトラベルをして、その成り立ちや発展を学ぶスタイルです。
放送中ほどよいタイミングで、その回のエキスパート(ゲスト)に話を聞くチャプターもあり、番組の雰囲気を楽しみながら、ついでに勉強もできる番組でした。
毎週(土曜 17:00 – 17:50)楽しみにしていた…と言えばウソになりますが、なぜかその時間に車に乗っていることが多かったため、結果的に聴けていました。
アメリカではそれほど評価されていない『夏への扉』が、日本では愛されている…
『ピートのふしぎなガレージ』も、典型的な例だと思います。
もう聴くことはできませんが、主人公である「新一」と「ボッコ改めマリア」の寸劇(恋愛?)がとても面白かったです。
『ピートのふしぎなガレージ』はもう聴くことはできませんが『夏への扉』は、Audible(オーディブル)で聴くことができます。
まとめ
アメリカの古典的SF小説『夏への扉』の書評を書いてきましたが、主人公「ダン」の才能、不運、行動力が、ものがたりを引っ張っていくイメージです。
ネタバレを恐れながら、映画『夏への扉 -キミのいる未来へ-』や、ラジオ番組の『ピートのふしぎなガレージ』の話を交えて『夏への扉』に想いを馳せてみて…やはり原作の作り出す雰囲気とはズレがあると思います。
映画化が日本だったことが原因なのか、時代が若干ズレてしまったのが原因なのか…
私は、映画『夏への扉 -キミのいる未来へ-』は、恋愛色を強めたことで原作との違いが生じてしまった、もう少しドライに描いてもよかったのかな…と思います。