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『高い城の男』の書評。アメリカが負けちゃったパラレルワールド

アメリカが日本とドイツに負けた…

第二次世界大戦に日本とドイツが勝ってしまったパラレルワールド。
そんな世界を描いた小説が『高い城の男』著者はフィリップ・K・ディックさんです。

この小説に結論はないと思うんですが、あえて言うなら日本とドイツが勝ってしまった世界は今よりも住みにくい。

私は日本人ですしドイツに好意をもっている人間ですから、喜ばしい世界といいたいところですが…
現代人から見れば、あの当時の大日本帝国と第三帝国(ドイツ)が天下を取ってしまったら厳しいです。

やはりアメリカが勝ったからこそ、今の自由な世の中になったと思っています。

本題に戻ります。

『高い城の男』の世界では、日本とドイツが世界を分け合う形で成り立っています。
ロシアに至っては、中央アジアに押し返されました。

ヨーロッパにロシアがいない状態です。

アメリカは分断されて、西部は日本、東部はドイツが支配。

そんなアメリカで繰り広げられる人間ドラマ。
日本、ドイツ、アメリカ、イタリア…それぞれの人種がそれぞれの立場で必死に生きています。

アメリカでも日本でもドイツでも、世界中で歴史if小説が流行りますが、人間は「if」が好きなんでしょうか?
私にも理由は分かりませんが、パラレルワールドは人間の好奇心をかき立てるようです。

著者であるフィリップ・K・ディックさんの描く世界にハマる人が多いのも、うなずける気がします。

フィリップ・K・ディックさんと言えば、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の書評を書いていますので、よかったら読んでみてください。


『易経』が流行するアメリカ

古代中国が生んだ「四書五経」

「四書」とは、『論語』『大学』『中庸』『孟子』の四つ
「五経」とは、『易経』『詩経』『書経』『礼記』『春秋』の五つのことを指します。

『高い城の男』が描くアメリカでは、なぜか『易経』が流行っているんです。

『易経』は儒教の経典の一つで、占いの書でもあります。
私は占いについて詳しくありませんので分かりませんが、敗戦国であるアメリカで日本経由の書物である『易経』が流行るのは、フィリップ・K・ディックさん独特の世界観ですね。

ちなみに易経で用いられる八卦(はっけ)から「当たるも八卦当たらぬも八卦」という言葉が生まれています。
やはり完全に占いの世界。

実際にアメリカが敗戦国だったら、日本や東洋の文化がアメリカで流行ったんでしょうかね…
アニメやアイドルが流行るくらいだから、ありえるかもしれませんけど。

イナゴ身重く横たわる

歴史if小説は、いつの時代、どこの国でも流行るものですが『高い城の男』で設定されているアメリカでも「イナゴ身重く横たわる」という歴史if小説が登場します。

この小説をもとに、さまざまな人間がさまざまなドラマを巻き起こすわけですが、著者のホーソーン・アベンゼンはドイツの秘密警察(ゲシュタポ)の目をかいくぐり、ひっそりと暮らしています。

ホーソーン・アベンゼンが住んでいるのが、日本の支配地域であることも幸いしているんだと思います。

ちょっと読んでみたくなったのでいろいろと調べてみましたが、書籍化はされていないようです…残念。

それぞれの日本・ドイツ・イタリア

『高い城の男』の世界では、日本とドイツ(枢軸国)がアメリカ(連合国)に勝った設定になっています。

枢軸国とは、主にドイツ、日本、イタリアのことを指します。(他国もありますが割愛します)
作中で、日本はそれほど嫌なイメージを持たれていないと感じますが、黄色人に対する差別心も感じます。

一方、ドイツは「悪の枢軸」といった観念で描かれており、欧米でのドイツに対する固定観念がありありと感じられます。

問題はイタリアなんですが、枢軸側の戦勝国でありながら居場所がない感じに描かれています。
これは実際の第二次世界大戦後のイタリアと大差ありません。

実際のイタリアは敗戦濃厚とみると、枢軸側を裏切って連合国に加担しました。
そのことが影響しているのか、欧米ではイタリアに対する不信感があるのかもしれませんね…

「イナゴ身重く横たわる」では、イタリアの裏切りがきっかけとなって連合国が勝ったような感じでしたが、実際の第二次世界大戦はイタリアの存在はそこまで大きくなかったと思います。

まぼろしの日米関係

『高い城の男』の世界、あなたはどう思いますか?

現在アメリカのおかげで、政治・経済・文化すべてにおいて日本は恩恵を受けています。
しかし、アメリカのいいなりで自分の意志を持たない国とも言えますよね?

もし日本とドイツが戦争に勝っていたら…どうなっていたんでしょうか?
『高い城の男』の世界のようになっていたらどうだったんでしょうか?

答えは誰にも分かりませんが、あの当時の日本やドイツが戦勝国だったら、我々平民は今のような贅沢ができるんでしょうかね…

『高い城の男』は、いろいろな意味で考えさせられる小説でした。

まとめ

今回は『高い城の男』の書評を書いてみました。

いつも通りネタバレに注意しながら、ここでしか読めない書評を意識して書いています。
結論はありませんが、連合国の勝利で終わった世界でよかったのかもしれませんね…

個人的には枢軸国側が好きなんですが、もし枢軸国が勝っていたら…考えるのも恐ろしい気がします。
答えは誰にも分かりません。

最後まで『高い城の男』の書評を読んでいただきありがとうございました。

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