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『カラスの親指』爽快などんでん返しに驚愕【映画と原作の比較】
騙されましたね、完全に。『カラスの親指』は伏線の連続でそれを見事に回収します。
そして驚愕の「どんでん返し」
最終的な「どんでん返し」には、少しだけ残念な部分もありましたが、すべてがひっくり変える結末。
「どんでん返し」といえば道尾秀介(著者)さん。そう確信できる作品でした。
※そっちに持っていったら、すべての緊張感は何だったの?とツッコミたくなる「オチ」ではありましたが…
それでは『カラスの親指』の書評は書いていきましょう。
□あらすじ
人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは? 息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。道尾秀介の真骨頂がここに! 最初の直木賞ノミネート作品、第62回日本推理作家協会賞受賞作品。
□登場人物
・武沢竹夫 (タケさん) ⇒ 主人公で詐欺師
・入川鉄巳 (テツさん) ⇒ タケさんの相棒で詐欺師
・河合まひろ ⇒ 18歳のスリ
・河合やひろ ⇒ まひろの姉、仕事はしていない
・石屋貫太郎 ⇒ やひろの彼氏
・トサカ ⇒ オスの子猫
爽快などんでん返しに驚愕
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冒頭でもお伝えしましたが、『カラスの親指』の魅力は何といっても「どんでん返し」です。
どんでん返しにもいろいろありますが、これほどまでに「ほっこりするどんでん返し」があったでしょうか?
賛否両論あると思います。『カラスの親指』のどんでん返しは、本当のどんでん返し。
良く言えば、とても「ほっこり」して収まるところに収まった感じです。
しかし悪く言えば、それまでの緊張感が台無し、言葉で言えばいいじゃん!
えッ!そんなオチ!?
そんなグチが飛び出すほどの「大どんでん返し」でした。
まあ序盤の重たい物語の連続は、どんよりとした気分になってしまいましたから、最後のオチが救いになるのかもしれませんね。
詐欺とマジックの違い
『カラスの親指』の物語では、武沢竹夫 (タケさん) と入川鉄巳 (テツさん)は詐欺師です。
それから河合やひろの彼氏、石屋貫太郎はマジシャンという設定になっています。
ギターを持っていたので、タケさんとテツさんは石屋貫太郎のことを「ミュージシャン」だと勘違いしてましたけど…
『カラスの親指』の作中で、石屋貫太郎が詐欺師とマジシャンの違いについて語っていました。妙に納得してしまったので掲載しておきます。
詐欺は相手が騙されたことに気づかないのが理想的。マジックは相手が騙されたことを自覚できなければ意味がない。
似て非なるもの…詐欺師とマジシャンを一緒にしたら、マジシャンに怒られてしまいますけど、相手が騙されたことに気づかないようにするのが、詐欺師のエチケットなのかもしれませんね。(どうであれ、人を騙すことは最低です)
タケさんとテツさんは、それぞれの事情があって詐欺師になっているわけですが…やはり人間としてやってはいけない稼業ですよね。
「まひろ」と「やひろ」
完全にネタバレになってしまうので詳しく書くことはできませんが、タケさんは「まひろ」と「やひろ」に負い目を感じています。(タケさんと2人の母親の間に大きな事件があったため)
そしてテツさんも「まひろ」と「やひろ」の間に、問題を抱えています。(この関係が切ない)
まひろはスリ。やひろは働かず、まひろの稼ぎをあてにする。そんな2人になってしまったのも、タケさんとテツさんに責任の一端が確実にあります。
複雑に絡み合った関係ですが、これ以上書くことはできません。『カラスの親指』を読んで確認してください。
「タケさん」と「テツさん」のどんでん返し
タケさんは、ヤミ金組織と深い関わりを持っています。テツさんも浅からぬ因縁がありそうです。
そして、「まひろ」と「やひろ」、石屋貫太郎(やひろの彼氏)もヤミ金組織との因縁に巻き込まれてしまいます。
そこで5人は、対ヤミ金組織に立ち上がるわけですが…これが壮大な作戦で大変な戦いに発展。
九死に一生を得て、ヤミ金組織から生還するわけです。ハッキリ言って面白かったですし、感動もしました。
ところが…ここから「大どんでん返し」
え!そんな展開!?今までの緊迫したストーリーは何だったの?って感じでした。まさに「大どんでん返し」
まあ、アットホームで爽快な「どんでん返し」の方が、『カラスの親指』には合っているのかもしれませんね。確かに「ほっこり」幸せな気分になりました。
映画と原作の比較
『カラスの親指』は映画化もされています。
気になるキャスティングは以下の通りです。
武沢竹夫 (タケさん) ⇒ 阿部寛さん
入川鉄巳 (テツさん) ⇒ 村上ショージさん
河合やひろ ⇒ 石原さとみさん
河合まひろ ⇒ 能年玲奈(現・のん)さん
以上のキャスティングで上映されましたが、まあまあハマっていたんではないでしょうか?
原作とドラマに大きな違いは見受けられませんが、細かく比較してみると違いを感じます。
タケさんとテツさんの出会いのシーン
ヤミ金組織と絡みが緊張感に欠ける
能年玲奈(現・のん)さんと石原さとみさんが似ていない(原作では姉妹は似ている)
このあたりが、原作と映画を比較して違いを感じるところですかね。
予告編を掲載しておきますので、雰囲気だけでも感じ取ってください。
まとめ
今回は『カラスの親指』の書評を書きました。
「どんでん返し」という意味では、これ以上ないほどの「大どんでん返し」
しかし「どんでん返し」によって、それまでの緊張感が無意味になってしまった感じはあると思います。
最終的に「タケさん」と「まひろ」と「やひろ」の隠された過去は、解決に向かいます。
「テツさん」と「まひろ」と「やひろ」の問題は、棚上げされたまま。
「どんでん返し」があったり、隠された過去が解決に向かったり、ハッピーエンドっぽく終わったのは良かったと思います。
私だけではないと思うんですけど「まひろ」と「やひろ」に感情移入してしまって、2人が笑顔で暮らせるならそれでOK!と思ってしまいました。
最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。