見せかけ
ミステリのトリックでは、「○○に見せかけた○○」みたいなのは大きな威力を発揮します。
具体的には密室トリックに見せかけてアリバイトリックみたいな感じですね。
このような「見せかけて」というのが何故威力が大きいかというと、作中探偵や読者の考えを明後日の方向へ飛ばすことができるからです。これが上手くできれば、本当のトリックが案外ばれやすく、相当に大味で大胆なものでも意外と気付かれないものです。それぐらい思考の外に追いやるというのは大事なものなのです。
手法は簡単。作中探偵を敢えて明後日の考えに動かせばよいのです。こうすればストーリーもそういう方向に動きますし、読者の考えもそのような方向に誘導しやすくなります。
ですが、これには、作中探偵を上手く動かせないと、探偵が転げ回ってるだけの印象を与えてしまうというデメリットもあります。往々にして天才設定のついてまわる探偵が見せかけに引っ掛かって転げ回る姿は何とも滑稽で、最終的に解決しても微妙な印象を持たせてしまったりします。
なので、見せかけに引っ掛かってそうで引っ掛かってないという微妙な匙加減が必要になってくると思われます。
逆に、苦労して真相に辿り着くタイプの探偵なら、一旦思い切り引っ掛かってもいいかもしれません。その方が、何かを乗り越えた感を出せそうでもあります。
この辺は描く探偵のタイプによってきっちり書き分ける必要があるでしょう。
ここまでが壮絶な前置き。
私は今、「密室であからさまな他殺体。真相は他殺に見せかけた自殺」という構想を抱えています。
この枠組みだと、
密室トリックを考えさせて実は殺害方法(自殺方法)を問うもの
という図式が完成していますし、ミステリで成立の難しい自殺を扱うことができます。真相:自殺だけでも十分に裏をかいたものにはなると思います。
他殺に見せかけた自殺の動機なんていくらでもでっち上げられます。そこは問題にならないでしょう。
完全な密室だと作中人物に自殺を意識させざるを得ないことを考えると、この場合だと偶然できた微妙に不完全な密室ぐらいの方が都合がいいかもしれません。
というところまではあるのですが、肝心のトリックや、それっぽい舞台設定が思い描けずに頓挫しています。
これを見て何か着想を得た方なんていらしたら最大限、いやそれ以上の協力を惜しまない考えはありますが……