密室の謎 解答編
※一応有料記事になってはいますが、無料部分のみで全てを読めるようになっています。
出題編は こちら
この記事は「密室の謎」の出題編(上のリンク)を読んでいることが前提になっているため、こちらから読んでも意味がわからないと思います。
今回は密室トリック一発ものということを明示するために問の部分で犯人を明示するという、割と今まで見たことないような試みも行いました。
これは、余計なミスリードをして欲しくないという意向の表れですし、難易度調整的にそれなりなものではあるのではないかという自信?のようなものでもあります。
古川宅に着くと、古川の妻が先輩の刑事と話をしていた。雰囲気から察するに、情報を得ようとしているといった感じではなく、励ましているようだった。これも刑事の大事な仕事だ。
「すみません、奥さん。ここにシャベルと梯子ってありますか?」
唐突だったせいか、いた全員にきょとんとされてしまった。
「物置にあるはずですよ。ご入用ならご自由に使って下さい」
「ありがとうございます」
最後まで聞かずに駆け出した。
「現場に少し手を付けますけど構いませんか?」
戻ってくるなり警部に尋ねた。
「写真は残してるから、ある程度は大丈夫だが……何をするんだ?」
「小屋の雪を降ろそうと思ってます」
「ん……?そうか!雪の重みで小屋が歪んで窓が開かなくなってるってことか?」
「僕はそうじゃないかと思ってます」
「よし、やってみよう」
僕が20センチぐらい積もった雪を小屋の屋根から降ろすと、警部は窓に手をかけた。
すると窓は自由に開閉した。
「どうやら当たりだったようですね」
窓が開いた音を確認して屋根の上から声をかけた。
「これで密室は密室ではなくなった……か?いや。これで、今密室ではなくなったが、問題は、事件当時が密室だったかどうかだ」
「雪がいつから降ってたかってことですか……あ!」
「どうした?」
「それなら天気を調べるまでも無いです。雪が降り始めたのは二日前の夜のはずです」
「何故そうだと言えるんだ?」
「僕は昨日と一昨日連休だったんですが、その一日目の二日前は、晴れてる中を車で走っています。その時には雪は降っていませんでした。で、次の日の朝起きたら雪が積もっていたので……」
「たしかに昨日は雪が降っていた。つまり、そのタイミングで密室が形成されたということか」
「だと思います。これで行動の矛盾も説明できそうです。犯人はそもそも密室を作る気なんか無かった。入る時は恐らく普通にドアから入ったのでしょう。そして犯行後、その時点ではなんの問題も無く開閉する窓から出た。その後にたまたま降った雪によって、意図せず密室ができてしまった。といったところでしょうか」
「うむ……大体問題なく説明がつきそうだな。しかし、一つだけ疑問がある」
「何でしょう?」
「何故大野は密室を盾に粘ろうとしているんだ?」
「それこそ本人に聞かないとわからないですが……大した工作を施したわけでは無さそうですし、あくまで僕の予想ですが、文字通り降って湧いたチャンスにこれ幸いと咄嗟に縋っただけなんじゃないですかね」
〜あとがき〜
というわけで、問の答えは、「事件の起きた日〜次の日の雪によって小屋が歪んで窓が開かなくなったことにより密室が完成した」が正解となります。もっと異なった表現でも問題は無いです。ほぼ単語で"雪のせい"だけでも80点ぐらいはあげられます。
ヒントとしては、
・以前より窓が動かなかったわけではないこと(雨宮の証言)
・冒頭の、主人公の休日の描写(解答編中で述懐させています)
あたりでしょうか。
他に伏線となり得るような記述は特に入れておらず、ミスリードのしようは無いと思われるので、伏線に気付くのは特に難しくなかったのではないでしょうか?
最終的には問題部分で約4000〜5000字となり、最短クラスの密室問題を目指す、という目論見は何とかできたように思います。
ミスリードを入れまくったら難易度を上げること自体は可能ですし、分量もそれなりになるんでしょうが、それで難しくするのはポリシーとして美しくないような気がするんですよねぇ……私の目指すところが"木を隠すなら森"ではなく"普通にそこにあるのに気付かなかった"だからだと思います。これで難しくできたら本当の良問になるという期待があります。このポリシーはしばらくは曲げないと思います。
最後に
今作が死ぬほど面白かったという酔狂な方向けに、投げ銭スペースを一応用意しておきます。
この先は謝辞しかないので、投げ銭しないからといって何もないです。
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