動物園

割り当てられた仕事が終わって、のんびりお茶を飲んでいると、警部が現れた。警部は別部署の応援に行っていたはずだが……?
「ヒマしてるやついるか?」
必死に目を合わせないようにしたのだが、しっかり見つけられて引っ張って行かれることになった。
「警部って今怪盗108面相の事件に当たってましたよね?」
怪盗108面相とは、煩悩の数だけ顔を変えるというキャッチコピーで世間を賑わせているドロボウである。108面相全てを見た人はいないらしいし、恐らく全てを見る人はいないであろう。当人も把握しきれていないかもしれない。
「そうだよ。なかなか捕まらないもんだな」
「で、なんで僕なんかを?」
「ちょっと人手が欲しいらしくてな。猫の手でも借りておこうというわけだ」
人を招き猫扱いするのはやめてほしいものだ。

捜査本部に着くと、多くの刑事が顔をしかめていた。
「雰囲気悪いですね」
思わず耳打ちした。
「新たな犯行予告が届いてな。これまでもよくわからなかったが、これまたよくわからないものらしくてな」
「僕も見ていいんですか?」
「ああ、取ってきてやる」
警部もまだ見ていなかったらしく、2枚の紙を持ってきた。

犯行予告状に曰く。
(日付にして今日の)21時に、1体の動物を盗ませていただく。
これだけだと犯行が簡単すぎてつまらないからヒントをあげようではないか。
ア.サイの角は毛が硬質化したもの
イ.ゾウは最大40km/h近くで走れる
ウ.キリンは高血圧
エ.カワウソはイタチの仲間
オ.フラミンゴがピンク色なのは赤色のエサを食べるから
カ.ゴリラはみんなA型
キ.シマウマは基本的に白地に黒の縞
ク.ウサギは年中発情期
ケ.フクロウは首を270°回せる
コ.トラは水浴びが好き
まあ頑張ってくれたまえ          怪盗108面相

「なんだこれ?ドロボウなんかやらずに動物博士でもやった方が良いんじゃないか?」
警部が唸りながら他の刑事たちと同じような顔をした。恐らくみんな同じようなことを思っているのだろう。
ホワイトボードには、汚い字で、挙げられた10種類の動物が書かれていた。
予告状とホワイトボードを交互に見て頭を痛めている。
「警部、この中に1つ明らかな嘘があります」
周りの刑事の邪魔をしないように小声で言った。
「本当か!?」
警部が立ち上がりながら大声を出したせいで一斉に視線がこちらに集まってしまった。


Q.怪盗108面相が盗もうとしているのはどの動物でしょうか?