不完全密室殺人

―ホテルの一室にて―
ハァハァ・・・勢いとはいえ殺してしまった・・・
だが、手袋をしていたから指紋は残らないし、帽子を被っていたから髪の毛が落ちていることもないだろう。靴下だったから靴の跡が残ってることもないし、凶器も小田の持ち物だ。俺が犯人である証拠はない。あとは運さえ良ければ・・・

部屋のドアはオートロックではないため、ルームキーで鍵を閉めなければならない。男は窓の鍵が閉まっていることを確認した後、ドアの鍵を閉めた。
そして、ルームキーを室内の机の上に置いた。

30分後、部屋のドアをノックする音が響いた。
「小田さん、小田さん・・・?おかしいな。いるはずなのに反応がない。それにいつも居る時は鍵なんて閉めないのにな・・・」
男は一階まで降りてカウンターでマスターキーを借りに行くことにした。だが、簡単にマスターキーなど借りられるはずもない。
「では、済みませんが一緒に来て頂けませんか?」
「ですが・・・」
勿論ボーイは渋る。
「申し遅れました。私は警察の田辺といいます。嫌な予感がするので小田さんの部屋を開けたいのです。一緒に来て頂きたいのですが」
男=田辺が名乗ると、ボーイも不穏を感じ取ったのか、
「はい、畏まりました」
と少し震えた声で応じた。

二人で小田の部屋へ戻り、ボーイが持ってきたマスターキーを使って鍵を開けた。
ドアを開けると真っ先に目に飛び込んできたものは、頭から血を流して倒れている小田の姿だった。
「何てことだ・・・!下まで戻って救急車と警察を呼んで頂けますか?私は廊下で待っていますので」
「は、はい!」
ボーイは突如現れた非日常に大慌てでカウンターへ走って行った。

結局この事件は警察が到着してすぐに解決してしまうのだった。
なぜなら室内から決定的な原因が見つかってしまうからなのだが・・・
それは何だろうか?