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8月23日
朝、仕事に遅れそうで駅に小走りで向かっていると、一羽の鳩が倒れ伏しているのを見かけた。
特に動物愛護の精神に溢れているわけでもないのだが、何となく良くない気分を持ちながら視線の端に追いやった。


8月24日
朝、昨日と同様小走りで駅に向かっていると、昨日と同様一羽の鳩が倒れていた。
交通の邪魔になるような位置ではないが、誰も片付けたりしなかったのだろうか?とはいえ自分がそれをできるほどの時間的余裕は無く、そのまま小走りで駆け抜けていった。おそらくみんな似たようなものなのだろう。

昨日と違って今日は家の明かりが外に漏れている時間帯に帰れるように仕事を終えることができた。
家に着いてから思ったのだが、そういえば朝見た鳩の死骸が無かった気がする。誰かが片付けたのだろう。


8月25日
今日もギリギリまで寝ていたせいで慌てて仕事へ向かっていると、昨日と同じような位置に鳩が倒れていた。
誰かが設置してるのか?少し気になったが、調査の暇などは無い。
二度ほど振り返りながら通り過ぎ去った。

あまりに仕事が多く、終電で帰ることになってしまった。
自宅に帰り着いてから、そういえば鳩を見なかったなと思ったが、誰かが片付けたのか、それとも暗かったからわからなかっただけなのかはわからない。考える体力もなく、ベッドに倒れ伏した。明日は休みだ。


8月26日
目覚めると昼の二時だった。溜まった家事をしていると夕方になってしまい、一食で済ませてしまうことにした。家には調味料ぐらいしかなく、仕方無しで買い物に行った。
ここ最近仕事に行く際に見た鳩はいなかった。


8月27日
休み明けで体力が回復していたのか目覚めが良く、余裕を持って仕事に出ることができた。仕事の時間が少しゆっくりだったこともあるのだが。
通勤・登校の喧騒を避けた時間帯での出勤で、のんびりした気持ちで仕事に向かうと、またもや鳩が一羽倒れていた。
……場所が微妙に変わっている気がする。これまでのはもっと電信柱寄りだったような?
少し近づいてみたが私に何かがわかるようなことなど無く、そのまま過ぎ去るしかなかった。

今日は仕事があまりに少なく、夕方には片付いてしまった。
珍しく日の出ているうちに自宅の最寄り駅に降り着いた。
また鳩の死体を見るのは嫌だなと頭に過ぎったが、朝死体があった場所には何一つなかった。
まだ外は明るく、見落としなどは無さそうだった。
誰かはわからないが毎日ご苦労様だ。


9月4日
休みだったので市役所に行く用事と昼食をまとめて済ませることにし、十一時に家を出た。
ここずっと毎日見ていた鳩の死体が一体だけ転がっていた。
今日は時間に大量に余裕があるので、私が片付けようと思い立った。
近所のコンビニで軍手と大きめのビニール袋を入手し、軍手で鳩を掴み、袋に入れてゴミ捨て場に投棄した。あまり良い気はしなかった。昼食の後にすればよかったと少し後悔した。


9月21日
久々の休みだったが、少し朝早めに済ませる用事があった。
やはり鳩が一羽死んでいた。毎日のことでもはや何とも思わなくなっていた。
用事を済ませた後、せっかくだからと映画を見てから帰途につくと、鳩は片付けられていた。これも毎日のことだ。

自宅で飲み物を飲みながら一息つき、鳩について考えてみることにした。疑問点を列挙してみる。
1.鳩は毎日死んでいる
何が起きて死んでいたのだろうか。私が処理をした際には直視したわけではないが、これといった外傷は見当たらなかった。考えてみれば死因も不明である。
2.死んでいるのは一羽だけである
何故一羽だけなのだろうか。残念ながら私は鳩の生態に詳しいわけではないが、必ずしも単独で生活しているわけでも無かろう。電柱や電線に何羽か停まっているのを見るが、そのうちの一羽だけが死ぬというのはよくわからない。
3.毎日片付けられている
私は何とも言えない不快感を持って処理をした。どんな心理で毎日処理しているのだろうか。

寝るまで色々なことをしながら頭の片隅で考えてみたが自分を納得させられるような回答は導き出せなかった。何となくもやっとした気持ちを抱えながら寝ることになった。



10月1日
通勤電車に揺られている際に、ふと、そういえば今日は鳩の死体を見なかったことに気付いた。


10月9日
一度鳩の死体を見なくなってから、再び見ることは無くなっている。
あれは一体何だったのだろうか……



さて、どういうことが起こっていたのだろうか?

問題形式にした以上私の中に一応それっぽい答えは用意してはいますが、それと確定できるような要素は作中に無いと思います。
というわけで、これを問題として固く考えるのではなく、どういう状況ならこんなことが起きるか?というように想像を働かせてみていただけることを主眼としています。



最後に
今作が死ぬほど面白かったという酔狂な方向けに、投げ銭スペースを一応用意しておきます。
この先は謝辞しかないので、投げ銭しないからといって何もないです。


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