教えるとは

英語の授業を受けていた時のこと。

「teachとtellはどっちも教えるって意味があるけどどう違うかわかる?」
という話になりました。
「teachは授業するみたいなので、tellは話すとか伝えるって意味があるからそっちよりの言葉じゃないんですか」
こんなように一人の生徒が答えていました。私も似たようなことを思ってはいましたが。
「まあ大体それでいいんだけど、teachは教えて理解させないといけなくて、tellは相手がわかったかどうかは問題にならないって差があると俺は思ってる。俺はみんなに授業するteacherって立場だからみんなにわかってもらうまでが仕事。テキスト読んで問題させるだけだとteacherじゃなくてtellerになってしまう。そんな授業は多分一回もしたこと無いはずだけどどう?」
これまでの授業を思い返してみんなでふんふん頷いていました。

その授業の後。
「teachとtellの話って僕宛ですよね?」
「そうだよ。お前の授業で生徒置いてきぼりなんての見たこと無いから、別に怒って言ったわけじゃないよ」
と言われて一安心しました。そこまで考えて授業したことなかったですし。
「にしても、生徒がわかってくれないとteacher足り得ないと考えると結構条件厳しいですよね。どんなにわかりやすいように言ってるつもりでも、それでわかってくれるとは限らないですし」
「それで言うと、この説明でいけるだろうとかタカくくってる内は三流以下ってことになるな。自分が一流とも思わんけど」
「そんな人いるんですかね?僕が授業する時は毎回こんな説明で大丈夫かと不安でしょうがないですけど」
「意識としてはそれぐらいでいいのかもしれんな。俺も何年もやってても何が最善か全くわからん」
「ですよねぇ……」
自然と二人同時に溜め息をついていました。
「それはそうと、授業の準備もうちょっとちゃんとしろ。半分ぐらいアドリブで授業してるだろ」
実際そうだったので何も言えませんでした。

こんな話を30分ぐらいした中で含蓄のありそうなのは、"真の教え上手は自分のことを教え上手だと気付かないのではないか"ということです。どちらが言い出したかは記憶の彼方です。
当時の自分が真の教え上手の域に達せているとは到底思えませんし、今も大して変わってはいませんが、この真理を知っているだけでもかなりアドバンテージがあるではないかと思っています。何のアドバンテージかはわかりませんが