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紀の善よ、さようなら

2022年10月16日の夕方、

大好きな甘味処、紀の善が閉店したと知った。

紀の善は神楽坂にある老舗で、毎年ここの杏氷を楽しみにしていた。

紀の善のかき氷で夏が始まり、
紀の善のかき氷で夏が終わるのが、私の楽しみだった。

冬にはあわぜんざいを求めて通った。

寒くて凍えそうな時、紀の善のあわぜんざいであったまって帰路に着いたものだ。

他にも有名な抹茶ババロア、あんみつはいうまでもなく餡子が美味しかった。



9月が終わってから、改装のため閉店すると張り紙を見て、残念ながらも楽しみにしていた。

まさか閉店のための改装だったとは・・・思いもよらなかった。

Twitterで教えてくれた諏訪部順一さん、ありがとうございました。

あなたのグリードは最高です。



ともあれ、楽しみにしていたお店がまたひとつ減ってしまった。

有楽町のマルイにあった、かき氷の美味しいお店、紬もそのひとつである。

紬は足を伸ばせば竹芝などにもあるが、

有楽町店の雰囲気が好きだったので、これまたがっかりした。

いつでも行ける、いつでも食べれると安心していると、

足元を掬われることがここのところ多い気がする。



外食は毎日する方ではない。

だからこそ、たまに行く時の、ワクワク感が大切で。

美味しかったあの店のあれを、もう一度食べたいな。

雰囲気の良かったあのカフェに行ってみようかな。

それがなくなった時の喪失感は、意外と大きい。



そうは言っても、客商売だし、採算が合わないとか、後継者がいないとか、

いろいろな理由でなくなってしまう、素敵な店のなんと多いことよ。

最近ではコロナのせいもあるだろうと思う。

思い立ったら吉日、その気持ちで、

行きたい時に行かないと後悔するようになってしまった。



実家の近く、というには徒歩30分のところに、

これまた素敵なパン屋がある。

海外のコンクールで何度も賞を取り、

お値段も良心的で文句なく美味しいパン屋さんだ。

そのパン屋さんが最近、ネットでの予約を始めた。

売れているから予約が必要というのならいいが、

そのお安いお値段だから採算が合わなくて

ピンチになっているのだとしたら。

そう思った母は、以前よりそのパン屋へ行くことが多くなったそうだ。



食べ物は人間にとってどうしても必要であるとともに、大切な文化だ。

私も以前より「ここがなくなったら困る」

という観点で店を選ぶようになったと思う。

ここは好きだけどいつでも行けるから、ではなく、

ここが好きだから今日行こう、と。

もちろん予算の関係でお見送りすることもあるが、

私の好きな店で働いてる人に、

あたりまえだが、お客という形で感謝したいのだ。



自己満足だが、紀の善に最後に行ったのは9月中旬。

ちゃんと美味しく食べれて、しかもお店の人に、

美味しかったです、と伝えられて良かった。

今年で最後になる紀の善での夏の締めくくりが

ちゃんとできてよかった。



本当に美味しかったです。ありがとう。

これからも太らない程度に、思い立ったが吉日で、

お気に入りのお店に行こうと思います。

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