ジヴェルニーのモネの庭<前編>(2020年10月)
2020年10月
「TGV(フランス高速鉄道)乗車記録」シリーズのエピローグ「旅も人生も、まだまだつづく」2020年10月(パリ~リヨン往復)で書いたように、例年どおり、私はこの年もフランスで休暇を過ごした。
最初はパリに滞在し、その後、フランス南東部の都市リヨンへ移動し、ふたたびパリに戻ってきた。
ジヴェルニーのモネの家(クロード・モネ財団)は、以前からずっと行きたい場所だった。
しかし、パリからそれほど遠くないのでいつでも訪問できると思い、あとまわしになっていた。
今回ようやく訪れることができたが、結果として、これがベストなタイミングだった。
その理由は、読みすすめるうちにおわかりいただけるだろう。
また、ちょっとしたハプニングがいくつかあった。
それらの話も、ぜひ楽しんでもらいたい。
深夜にチケットを購入する
この年、クロード・モネ財団の公式サイトでは、感染症対策として、ジヴェルニーのモネの家を訪れる際には日時指定の前売券を購入していくことが推奨されていた。
現地でも、空きがあれば当日券を買えるということだったが、前売券をもっていくほうが確実である。
しかし、予報によると、パリ滞在中の天気はあまりよくなかった。
悪天候では、ジヴェルニーのモネの家の庭と池を存分に楽しむことができない。
ジヴェルニーへ行く日は、日本を出てから7日目以降を予定していた。
そのため、あらかじめ天気がよさそうな日を予測するのが難しかった。
そこで、日本で前売券を購入していくのはやめて、フランスに着いてからスマートフォンで買うことにした。
前述のように、リヨンからパリに戻ってきた私は、その後数日の天気予報をチェックしたが、すっきり晴れそうな日は一日もなかった。
だが、どうしても今回の滞在中にジヴェルニーへ行きたかったので、昼頃に晴れ間が見えそうな日の前売券を買うことにした。
マルチメディアやチケット類もあつかっているFNACというフランスの書店チェーンがある。
中規模以上の都市にはたいてい店舗があるが、ネット通販もしており、日本からも購入が可能だ。
実際に、私は仕事で使うフランス語の原書をここから取り寄せている。
(以前はアマゾン・フランスを使っていた。しかしいろいろな理由で、現在はFNACを利用している)
パリ滞在中のホテルで、ある日の深夜、FNACのサイトで翌日分のモネの家のチケットを購入した。
ところが、そのチケットがスマートフォンアプリで表示できなかったのである。
てっきり表示できると思っていた私は動揺した。
たとえば、毎回フランス国鉄のサイトであらかじめ買ってきているTGVの乗車券は、フランス国鉄のスマートフォンアプリで表示することができる。
紙に印刷したほうが安心なので、それぞれ2枚ずつ印刷してきてはいるが、ここ数年、検札時に提示するのはスマートフォンアプリの画面のほうが多い。
なので、スマートフォンアプリがあるサイトで購入したチケット類は、当然アプリでも表示できると思いこんでいたのである。
モネの家のチケットは、PDFファイルでメールに添付されてきた。
そして、そこにははっきりと「紙に印刷して持参すること」と書かれている。
スマートフォンアプリからも利用できる、などの但し書きはない。
しばらく悩んだのち、ホテルのフロントで印刷してもらうしか方法がないという結論にいたった。
PDFファイルを添付したメールをホテルあてに送って、その添付ファイルを印刷してもらうのだ。
宿泊中のホテルは、24時間フロントが開いている。
しかし、すでにベッドにもぐりこみ、このまますぐに眠れる状態でスマートフォンを操作していたので、人前に出ることができる格好に着替えるのが億劫だった。
そこで、朝食のサービスがはじまる前にフロントへ行くことに決め、明かりを消して目を閉じた。
翌朝目覚めると、急いで身支度を整えてフロントへ行き、事情を説明した。
すると、「もちろん!」という返事とともに、快くその場でチケットを印刷してくれた。
ほっとして、一気に力が抜けた。
その様子を見た相手が、小さく笑った。
私はお礼をいい、印刷してもらった紙をていねいにたたんでバッグに入れた。
このホテルに宿泊したのははじめてだったが、今後、定宿にするつもりだ。
実際、帰国後すぐに、翌年の予約を入れた。
フロント係は毎日別の人だったが、誰もがとても親切で、清掃係やそのほかのスタッフもみな感じがよく、5泊の滞在中ずっと、気分よく過ごせたからである。
滞在前後にもメールのやりとりをしたが、それらのやりとりもスムーズで心地よかった。
パリ・サン=ラザール駅にて
ホテルで朝食をとったあと、地下鉄でサン=ラザール駅に向かった。
サン=ラザール駅から列車に乗り、ヴェルノン=ジヴェルニー駅で下車し、駅前から出ているシャトルバスに乗れば、ジヴェルニーのモネの家に着く。
なにも、難しいことはない。
だが、ある程度予想していたことだが、やはりいくつかイレギュラーなことがあった。
この10年で、もう何十回もパリから列車で日帰り旅行をした。
そして、ほとんど毎回、なんらかのハプニングが起きている。
だから今回も、なにかあるだろうとは思っていた。
なにもなければないで、それはつまらない。
だが、あまり大きなトラブルは困る。
ちょっとした思い出話になる程度にしてほしいのだ。
まずは、行きのサン=ラザール駅での出来事からはじめよう。
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