カガク×これからのおんなたちへ
序
この著には二つの目的がある。一つは女性の研究者が歴史上欠いてきた自然科学の視点をフェミニズムに取り入れようとするもの、もう一つは、自然科学のみならず女性史上で欠かれてきた分野をフェミニズムに再輸入することで、フェミニズムに新たな視点を投げ込み、後世の女性たちに我々の生を託せるようにすること。
したがって、この著は理論と実践の両面を併せ持っている。男性研究者の自然科学の方法論を女性的な感性から出発させようと変換する場合には既存の理論の発展が勝ち、フェミニズムという枠組みに科学の目を付け加え、後世への教育を促す場合には実践が強くなるのである。
本著には不備な点も多々あるが、それらについては、私の成長とそれに付随する経験と共に、付記していきたいと考えている。
一 本著は中谷宇吉郎『科学の方法』(1958 岩波新書)における科学を参考にする。
一 本著は成功した偉人の思索を出すことで、偉人と呼ばれる人間の思考がいかなるものであったかを【これからのおんなたち】に示唆する。
一 本著は現在の自然科学ではなく、58年の視点をとることで、読者に世代の推移を想起させ、後世への教育について自ら思索してもらうことを目的としている。
一 本著は自然科学の方法について述べる。可能な範囲と不可能な範囲の線引きをはっきりさせることで、フェミニズムに応用しても、その可能性と限界を見極める手立てになるであろう。
本論
【何が科学の対象になりうるか】
科学というのは、実のところ万能ではない。目覚ましく進歩する科学といえど、再現可能な問題を対象にしてしか、その力強い効力を発揮できない。
例えば、ここに優美な形をしている土器があるとする。人は、土器の何に優美さを感じるのか、科学的に規定してみたい。そうなれば、土器の持つ特徴は、その器の曲線であるから、優美と言われる土器を集めて彎曲率を分布を数値化してみればよい。実際に、数学の研究者がこれを試みたことがある。
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