見出し画像

統計学のはじまり

弱者男性問題や非モテ、婚活のツイートで話題を呼ぶ『すもも(@sumomodane)』さん。

統計インフルサーとして、アンチフェミ・フェミニズム界隈に有名なすももさん。そんな彼が得意とするのは、【統計】の分野。

I こんなお悩みはありませんか?

「男女論をきちんとした学問の視点で精査してみたいけど、どんな視点を持てばいいのかわからない」
「フェミニズムやアンチフェミニズムの正当性って結局どうなの?」
「フェミニズムの学問的アプローチって何があるの?」

このマガジンはそうした「考えたいけどやり方がわからない!」という、熱心に社会問題を考えたい方のためのものです。

「男女論で建設的に議論をしたい。」
「建設的なアプローチを通して社会問題を解決したい。」
そんな情熱をサポートするための、学問的アプローチをお教えします。

I 統計学に触れてみよう!

今回の手法は、ずばり統計学
統計学と聞くと「数学的でむずかしそう」
「議論は文系分野のようにみえる。議論がしたい自分に、理系っぽい統計学は敷居が高い」
という印象を持つ方も多いかと思います。

ですので、統計学はいくつかの項にわけて学んでいきたいと思います。今回は統計学入門として【統計学のはじまり】を紹介します。
統計学のはじまりは統計学史を扱います。「どうやって統計学が成り立ってきたのか」を知る記事です。
統計学未経験でも安心。何の予備知識もいりません。文系で数学がわからなくても大丈夫!楽しく統計学オリエンテーションをしていきましょう!

I 実はめちゃくちゃ生活の中にあった、統計学


今日の統計学というのは、もともとたくさんの分野が、二世紀以上の年月をかけて、ひとつ学問としてまとまったものです。

その「もともとのたくさんの分野」というのは、堅苦しい正統な学問の場で基礎づくられたものかと言えば、実はそうではありません。

ある分野はゲームテーブルの上から、
ある分野は海の航海から、
ある分野は天文観察から、
ある分野は畑の農作物から…
統計学はひとびとの生活に深く関わってできた、ものすごく人間的な学問なのです。

こう言われてみれば、統計学という、何やら堅苦しくて難しそうな学問にも、親しみが湧きやすいかもしれません。統計学の欠片がわれわれの実生活にたくさん転がっていると考えれば、すごく身近ですよね。

I 統計学のカケラを見つける旅に出かけよう!

ということで、統計学が発展するまでの歴史を見てみましょう。これから、読者の皆さんを、【統計学のカケラを見つけに行く旅】にご招待します。

世界には統計学のカケラがたくさん!


たくさんの時代、場所、生活にカケラが埋まっていますので、是非掘り起こしてみてください。

わたくしピッピちゃんは、皆様の学びのお手伝いをする、旅のツアーコンダクターとして搭乗させていただきます。数々のカケラを全て集めて合体させてみるもよし、多種多様な欠片の中からお気に入りを選んで深く研究してみるもよし!
旅を通して欠片をどう扱っていくかはあなた次第です。

さて、本日は『確率論のツアー』といたしまして、ゲーム王国航海保険公国に向かいます。

旅が楽しいものになりますよう、わたしも精一杯サポート致します。それでは、いってらっしゃい!

I 確率論の歴史

右手に見えるのが、カジノや賭博が有名なゲーム王国。夜には煌びやかな摩天楼の夜景が美しく映えます。

そして左手に見えますのが、波の荒い海で囲まれた航海保険公国。たくさんの商人たちがなにやら船に荷物を積んでいますね。

着陸まで少々時間がありますので、ゲーム王国と航海保険公国の成り立ちをご紹介します。

航海保険公国とゲーム王国

I 【ゲーム王国】

建国2500年の歴史を持つ、かなりの人口を抱えた王国。
住民はサイコロや賭博を主として、生計を立てている。

ーゲーム王国の歴史ー
紀元前735年頃 ゲーム王国の古代人は、古代ギリシアや古代ローマに、四面サイコロであるアストラガルスを生産・交易していた。アストラガルスはツタンカーメンの墓から出土したこともある。

1500年 パチョーリがゲーム王国の住民に「球技のゲームをしているとき、途中で試合が中断された場合に、賭け金をどのように分配すべきか?」と問題提起した。彼の問題提起はゲーム王国の中で大きな歴史的位置づけを持つ。

1654年 ゲーム王国の住民であるパスカルとフェルマーが書簡で大論争。確率論の歴史的偉功のひとつとされる。この確率論は、後の航海保険大帝国の基礎となる。

1700年 ゲーム王国の数学者・ベルヌーイが大数の法則を発見する。コインやサイコロを投げれば投げるほど、その確率は、コインであれば1/2、サイコロであれば1/6に近づいていく。彼は後のアルゴリズムに大きな影響を与えることになる。

I 【航海保険公国】

建国920年の歴史を持つ、財閥系の公国。住民は航海の保険屋をやって生計を立てている。四方が海に囲まれており、潮風が気持ちいい。たくさんの国から交易にくる商人がいるため、たくさんの文化が入り混じった国。

ー航海保険公国の歴史ー
12世紀 イタリアを中心とした地中海貿易で冒険貸借をはじめる。
交易をしたい貿易民は、資本家に交易資金を借る。
航海交易が成功すれば、資本家は利息が上乗せされた交易資金が手に入る。航海交易が失敗すれば、資本家は交易民からお金は返してもらえない。当時は海難事故と盗賊被害の二種類のリスクがあった。

利息が大きすぎて、当時隣人愛を推していたローマ法皇グレゴリオ9世が、冒険貸借を禁止にする。航海の危険を負担する、前払金の保険料premiumを払う方法が確立される。この方法premiumは、国名の由来になった。

14世紀 冒険貸借を制限された航海保険公国の住民は、どうにか法をかいくぐり、海上保険制度を作り上げた。海難事故の転覆や荷物の破損に対応するような保険であった。

16世紀 航海保険公国の日本支部にて「なげ金」と制度が発足。冒険貸借と似た制度だった。それをはじめとして、日本支部では火災損傷の請負の保険事業が生まれていった。


(歴史をご紹介し終わったところで、そろそろパイロットが着陸に入るようです。シートベルトをしっかりとお締めください。これから両国の国境に位置する確率空港に着陸いたします。)

I 古典的確率論

無事着陸いたしました。荷物をまとめて、ゲーム王国と海上保険公国の国境にある【確率館】に入場しましょう。

確率論は、テーブルゲームや海上保険の実用的な計算が、後に数学にまで発展したものです。この確率館は両国の国民の精神が表れた、とても象徴的な建物なのです。両国が交友した際の理論の合流と、またその発展を記念して設立されたのがこの確率館です。

なにやら入り口で、フランス人とイギリス人が口論をしています。


「This milk tea is made by adding milk to black tea!(このミルクティーは紅茶にミルクを注いだものだ!)」

「Non, ce thé au lait est préparé en versant du thé noir dans du lait!(いいや、これはミルクに紅茶を注いだものだ!)」

よく聞けば、このミルクティーは、紅茶とミルクどちらが先にいれられたのか、彼らは言い当てているそう。紅茶にミルクを注いだものはイギリス式、ミルクに紅茶を注いだのはフランス式だそうです。両者は自国の紅茶の素晴らしさをかけて、熱い喧嘩をしています。

このミルクティーは、色や香りの違いはありません。実際、目の前に出されたミルクティーは、イギリス式かフランス式かを当てられるものなのでしょうか。

試しにミルクティーを用意して、出される紅茶が、イギリス式なのかフランス式なのか予想してもらいます。紅茶は1/2の割合で出てくるものとします。より当てることができた勝者は、敗者に自国式でいれたミルクティーを飲ませることができます。

まずは先攻、イギリス人のミルクティー当てです!紅茶愛にかけて、気合いが入っています。
「とりあえず52杯の紅茶を振り分けてみることにする!よし、紅茶がきたな。一杯目は我が正統な英式紅茶。これまた二杯目も正統な英式。む!三杯目に出てきたのはフランス式の邪道紅茶か!許せん…!」

そうこうしているうちに、52杯の予想が終わりました。なんと、イギリス人は52杯中40杯を当てました。ものすごい勝率です。しかし、これは偶然あてたと言えるのでしょうか?

当たった40という数の、確率論的意味はどんなものでしょうか。確率的意味を考えるために、とある計算をしてみましょう(ここは難しいので、一旦わからなくても大丈夫です。後に簡単に言い換えるので、そこを読んでみてください)。中心極限定理で二項分布Bi(52,1/2)を近似値とした計算です。計算の結果、52杯中の40杯を言い当てるのは標準正規分布の上側確率からみれば、0.0005という値になりました。偶然にしては小さすぎる値です。この説明では難しいので、簡単な言葉に翻訳してみましょう。

「偶然とは思えないくらいに当たっていて、必然的に当てたかのようにすら思えてしまうほど、当たる確率が高かった」

上記の表で見てみれば、その当たり確定のすごさがわかります。もはや超能力のようですよね。

イギリス人の異業の当たり様を見ていたフランス人はこう言います。
「次にどっちの紅茶が出てくるかわからないのに、この勝率を出すのはすごいものだ…

それはそれとして、仏式紅茶を邪道と言うのは許せん。英式こそおままごと紅茶だろ!ふん!

1/2でイギリス式紅茶が出てくるとわかっていたにせよ、目の前に出されたミルクティーがどちらなのかは確証ができない。今回は英式かもしれないし、次回は仏式かもそれない。そんな確証のない中で、これだけの当たりを出したのはどういう規則があったのだろう。

私が彼以上の勝率を出すにはどうすればいいか。仏式紅茶の栄光にかけて、勝たなければならない。うーん。なにかしら規則はないものなのか。ここで考えられる規則は、ランダムに出てくることへの規則である。とすれば、紅茶のランダム性(ランダムネス)を発見して、その【ランダムネスの法則】を導き出してみよう。」

法則を導き出すには、まずは紅茶がランダムに出てくる様子を丹念に調べて、そこから規則性のある法則を発見すればいいわけです。1回目は英式だった、2回目は仏式だった、3回目もまた仏式だった…というように。フランス人はこの考えのもと、ランダムネスの法則を考えてみました。

まず、イギリス式とフランス式の紅茶が出てくるのは同程度に確からしいそうです。それはすなわち1/2の確率で出てくるはずという仮定を表します。

ただ、もし本当に1/2の確率ででくるのならば、イギリス人は26回は当たり、26回は外れるはずです。しかし、実際イギリス人はあんなにも紅茶を当ててしまいました。とすると、1/2という仮定は、必ず現象として現れるわけではないことがわかります。

ただ、出されるミルクティーの見た目や香りはどちらも同じだし、どちらの紅茶も同程度の確かさで出される仕組みのもと、2人は紅茶当てゲームをしています。となると、1/2の確率という仮定を信じるのは、われわれにとって妥当です。なぜならば、英式と仏式によって何ら差異がない状態で、それを分けるすべをわれわれは持っていないからです。仮定を信じることに、他に反対の十分な理由がない状態、これを【理由不充分の原則】と言います。

理由不充分の原則で重要なポイントは、「同程度の確かさ」そのものではなく、同程度の確かさが「信じるのに妥当か」ということです。つまり、「実際にどういう結果が出るか」ではなく、「どういう結果がでるか推測すること」そのものを信用できるかどうかという話です。

私が『カガク×これからのおんなたちへ』でも示唆したように、数学や自然科学の中には、人間の理性に信用した部分がたんまりと含まれているのです。今回の同程度の確かさというのも、「確かさ」にこそ「人間の理性に信用した部分」が反映されています。
(こちらもぜひみてみてね。自然科学の方法についての少し専門的な記事です。)

数学というと、あたかも確固たる真理がそこにあるように思えますが、実は人間の思考様式に沿った数式の作り方をしているのです。それもそのはず、自然を推測するには、人間が推測するしか推測はできないからです。

偉大な近代科学の父であるガリレイは、こう言いました。
「自然は数学という言語で書かれた書物である」数学は人間によって恣意的に運用されているものだと示唆する言葉です。

I ラプラスの頻度説

イギリス人の勝率に圧倒されたフランス人が、自分の勝率をあげるにはどうすればいいか、考えています。

「イギリス人は当てる回数を52回に設定したわけだ。当てる杯数によって、結果的に当たる勝率は変わるのだろうか。

試しに、僕が2杯だけ当てるとしたらどうだろう。二回続けて当てられれば僕の勝利だし、二回続けて外れれば彼の勝利だ。二回続けて当たるというのは、よく起こりうることだろう。でも、こんなに危険な賭けはできない…リターンもリスクも同様に大きすぎる。

では、僕が100杯を対象にしてみたらどうだ。100回連続で当たるか100回連続で外れるかということはまずないだろう。ということは、リターンもリスクもそんなに大きくないことになる。

ん?ということは、試行の回数、つまり紅茶の数を増やせば増やすほど、結果が1/2に近づくのではないか。

そうとわかれば、紅茶を10000杯出してもらって、当たり外れが1/2になるように調整すればよい。僕はある一定の杯数を越えたところで、彼より予想があたることになる。」

フランス人の彼は、紅茶愛によって、新しい規則を発見することができました。これは統計学で言う【ラプラスの頻度説】というものです。自国の紅茶に対する情熱というのは素晴らしいものですね、こんなにも数学的に面白い規則を見つけることができたのですから。

ラプラスの頻度説


I 公理主義的定理

フランス人の独り言を聞いていたイギリス人は焦りはじめました。なんせ、彼はラプラスの頻度説まで辿り着いてしまったのです。

「このままではフランス人に勝たれてしまう!どうにかまた追い上げることはできないものか…

いや、まてよ。ちょ、まてよ。イギリス人は確かに1/2に近づけることはできるが、紅茶を増やしたとて、毎回その当たりはずれの割合は変動する。ある時は3回連続で当たることもあるし、ある時は交互に当たり外れが出るときもある。完璧に1/2に収束することはない。

極限への収束は無限に試行され続けてはじめて確認されるものだから、ほんとうに1/2にするのは無理なはずだ。彼も完璧な結果を出せるわけではない。

彼の頻度説は、理論的には完全ではない。あくまで近くなるという話であって、1/2に収束することはない。であるならば、彼がいつ1/2に近づきすぎてもいいように、俺は俺でフランス人の頻度説を理解したうえで、それを体系的に考えていく必要があるな…

そういえば、頻度説を理解していてなおかつ確率論に詳しい友人がいたな。たしかロシア人だったと思うが、彼に尋ねてみよう。彼はこう叫べば何処からともなくやってくるはずだ。おーい、ウオッカの紅茶割がこっちにあるぞ!

すると、何やら強靭な身体つきをした男性が、海から出てきて猛特急で駆けてきました。

鋭い目つき

コルモゴロフ参戦!開口一番に彼はこう高らかに声を上げました。

「🇷🇺Чай с молоком не делают из черного чая и молока. Чай с молоком готовят из черного чая и водки❗️(ミルクティーは紅茶と牛乳によってつくられるのではない。ミルクティーは紅茶とウオッカによってつくられるのである!)」

イギリス人は今まで起きた一概をコルモゴロフに伝えました。自分がたまたま52杯中40杯を当てたこと、それを見たフランス人が頻度説を打ち立てたこと。イギリス人がウォッカを成功報酬として、コルモゴロフに協力を持ちかけました。
「どうだい?一緒に頻度説を上回る理論を作ってみないかい?ここにウォッカが10本ある。」

コルモゴロフは、イギリス人にチラッと目配せして、ニヤッと笑ってこう言いました。
「我々がフランス人に勝利するためには、彼の頻度説を公理的に思考し直さねばならない。

確率を公理として定義し、極限への収束という裏付けなき困難を駆逐しなければならない。

フランス人の頻度説を体系的に表してみる。これを【公理主義的定義】と名づけよう。ミルクティーはウオッカのもとにあらなければならないのだから、公理主義的定義ももちろんウオッカに捧げる理論である。」

イギリス人とロシア人が手を組んだ、新たな公理の設立がはじまる!

コルモゴロフの公理主義的定理


コルモゴロフによって、後の体系的な確率論に公理系というジャンルが発足しました。更なる発展を遂げる公理系は、次回紹介していきます。

I 次回の旅は

せっかくこんなに面白い人たちが揃ったのですから、次回の旅行は、フランス人、イギリス人、ロシア人の三人が加わった『条件付確率のツアー』に出かけることにしましょう。条件付確率のツアーは、袋の中に3種類の玉を用意して、それを一つづつ出していくような確率論です。

次回の記事では、ロシア人のコルモゴロフより、公理主義的定義を詳しく説明していただこうかと思います。後の条件付き確率論も、公理系によって得られたものです。

そうそう、ゲーム王国と航海保険公国で気になったお話はありましたか?
ゲーム王国では確率論大数の法則が、航海保険公国では海難事故の金のやりとりから発展して、保険計算方法に重要な回帰分析の方法が示唆されています。今回は主にゲーム王国の視点で確率館めぐりをしていきました。

本日の旅は一旦ここで休憩です。近くに宿をとってありますので、今日の学びを振り返ってみてくださいね。

その宿というのも、わたくしが厳選した書籍がたくさんおいてある、大変学びがいのある宿となっております。今日の旅で興味をもった体験を、さらに詳しく調べることができます。

今日のお宿

以下がお宿に併設された小さな図書館たちです。
好きなものを手に取ってみてね。

I おわりに

記事が皆様の知識のサポートとなるようでしたら、【noteの購入・noteへの投げ銭】をいただければ幸いです。現在、大学の学費や新たな出発に際して、金銭的に厳しい状況です。ご支援いただけると、誠に嬉しく思います。

(欲しい物リストは、ノート・本・専門書が中心です。)

また、コメントも励みになります。いつもお見守りいただき、ありがとうございます。これからも末永くよろしくお願いいたします。

ピッピちゃん

ここから先は

0字

¥ 320

学費になります