今、「タカヤ」を読んでみて
「タカヤ」は大人になってから読んでも面白かった。
中学生の頃と変わらず楽しめた。
「タカヤ」とは週刊少年ジャンプで2005年から約一年間連載されていた『タカヤ -閃武学園激闘伝-』(終盤からは『タカヤ-夜明けの炎刃王-』と改題)の事である。長いのでここでは「タカヤ」と略す事にする。
あらすじなどはこちらを参照ください
「あててんのよ」というセリフと共に鮮烈にデビューしたものの、謎理論による格闘技の応酬、とにかく倒れない主人公、終盤にいきなり学園バトルから異世界ファンタジーになったと思えば「THE ENDォオ!!」で打ち切り。
この強烈すぎる流れにより伝説的な打ち切り漫画として今も語り継がれている。
しかし、わたしがここで言及したいのは打ち切り漫画という側面ではない。
「タカヤって普通に面白かったよね?」という話だ。
中学生の頃、ジャンプを定期購読していたわたしは「ワンピース」や「ナルト」と同じぐらい「タカヤ」を楽しみにしていたのだ。
当時はインターネットで漫画の評判を調べる事もあまり無かったので、漫画を楽しむ尺度は自分の中にしか無かった。
要は「ワクワクできるかどうか」だ。
その点で言うと「タカヤ」はずっとワクワクできる漫画だった。
平凡な主人公が借金の肩代わりに幼なじみのヒロインと共に力こそすべての学園に入学し、どんどん強くなっていく。
なんというか、ものすごく真っ直ぐで、あまりにも少年ジャンプじゃないか。
当時中学1,2年生だったわたしは、この真っ直ぐさに心打たれていた。
格闘技の理論が謎とか主人公が打たれ強すぎとか、気にする人は気にするだろうが、それよりもワクワクする気持ちの方が大きかった。
物語の展開にも同じことが言える。
最初に主人公とヒロインの関係性を描いて、ラスボスとライバルになるであろうキャラクターの登場、最強を決めるトーナメントの開催。これらを進むとともに主人公も成長していく。
これ以上ない分かりやすく王道の物語だ。
田舎に住む中学生に難しい漫画はいらない。
強い奴がどんどん出てきて「主人公とどっちが強いんだ?」という事だけ分かればいい。その間に可愛いヒロインが見られればいい。
細かいツッコミどころなんて全く気にしていない。
大切なのはワクワクできるかどうかだ。
先日、電子書籍で「タカヤ」全巻を購入した。
読んでいたのはジャンプ本誌のみで単行本は買っていなかった。
どこかで立ち読みぐらいはしていたかも知れないが、腰を据えて読むのは約20年ぶり。
少し緊張しながらページをめくって驚いた。
内容をほとんど覚えていた。
大枠はほとんど、細かいやり取りも覚えている部分が多かった。
当時は娯楽も少なく、ジャンプを本当にボロボロになるまで何度も読み返していた事を思い出した。
そして、あの頃と同じようにワクワクしながら読み進められることにも驚いた。
あれから何年も経ってわたしは中学生の頃なら見向きもしなかった漫画や小説を読むようになった。
考え方もだいぶ変わり、世界を真っ直ぐな目で見る事ができなくなった。
本当にクソだと思う事ばかりだ。
そんなわたしでも「タカヤ」を読んだ時は、あの頃の少年の気持ちを取り戻してワクワクする事ができた。
大人を少年の気持ちに戻してくれる漫画がいくつあるだろうか?
当然これはわたしが中学生という多感な時期に出会っていたから、という事が大きい事も分かっている。
「あの時期にこういう漫画読んだらこうなるよね」と。
だが、大人になってからではなく、あの時期に「タカヤ」に出会えて本当に良かったと思う。
あとから知っていれば「こういう打ち切り漫画があった」というメタ視点でしか読むことができないだろう。
だが、わたしは真っ直ぐ「タカヤ」を楽しんでいた。
今、いくら打ち切り漫画だとネタにされようが、私のあの頃の気持ちは誰にも変えられない。
ワクワクした気持ちのまま『タカヤ-夜明けの炎刃王-』を読んだ。
あの頃と同じ気持ちで「は?」と思えた。
最終回翌日に友達と「あれ、ヤバかったよな」と話したことを思い出した。