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新型コロナウイルスで技術系コミュニティイベントはどう変わったか

新型コロナウイルスによって技術系コミュニティがどのような影響を受けたかを数字で知るために「エンジニアをつなぐ IT勉強会支援プラットフォーム Connpass」 のイベントデータを API で取得し、集計・分析してみました。

※この記事で紹介する数字はあくまで参考値であり、必ずしも実態を正確に表していないことにご留意ください。

分析した結果は 3 回に分けて記事にする予定です。

・第1回 新型コロナウイルスで技術系コミュニティイベントはどう変わったか(本記事)
・第2回 地域別の技術系コミュニティイベントの推移と傾向
・第3回 技術系コミュニティの基本的なデータ(明後日掲載予定)

まとめ

記事を読むのが面倒な方のために、いきなりまとめです。

2020年1-7月のイベント数は前年同期と比べて 78% に減少
緊急事態宣言が出た 4月から7月まででは前年同期比で 68 %。

2020年1-7月のイベントは 50% がオンラインで開催されている。同5-7月では83% がオンライン開催となっている。

新規グループ数は 2020年1-7月で前年同期比 65%。同5-7月では 48% に減少。

[以下、推測と私見] イベント数と比べて新規グループ数の落ち込みが顕著。現在のイベント数の多くは既存のグループによって開催されているように見受けられる。

新規グループがどのような経緯で発生するのか、に明確な答えはないが以下のプロセスは主要な経緯の1つではないかと考える。

1. イベントに参加者やスタッフとして参加する
2. 懇親会などでイベント主催者やスタッフ、参加者と交流する
3. 自分もやってみよう、この人達とやってみようと思い新たなグループを作成する

オンライン化が進むと同時に上記のプロセスが機能しなくなり技術系コミュニティにおけるソーシャル・キャピタルの生産が滞っているように思われる。現状はソーシャル・キャピタルを消費して維持されているのかもしれない。とするならば、今後新規グループ数の減少の後を追うように技術系コミュニティのイベント数も大きく減少していく可能性があるのでは?

イベント件数の推移

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この2つの表は 2012年1月から2020年7月末までの Connpass に登録されたイベント件数のまとめです。上は数値、下は上の表をもとに前年同期比を記載したものです。表で黄色に網掛けされた箇所は前年同期比 100%を下回った箇所です。

基本的には右肩上がりです。とくに2015年-2017年にかけての増加が著しいですが、これは Connpass の競合サイトからの流入も寄与しているかと思われます。

イベント数の減少傾向は 2019年9月ごろから始まっています。前年比 100%は超えているものの、以前ほどの伸び率ではなくなっています。そして、2019年12月には前年同月比 98% となりました。この時期は新型コロナウイルスの影響はないので、この時期に技術系コミュニティとそのイベント数の増加については頭打ちの傾向があったのかもしれません。

新型コロナウイルスの影響が顕著となったのは 2020年3月以降です。ただし、同年2月のイベントデータを個別にみていると「中止」や「延期」の表記が多くあるため、実際には2月の時点で影響は大きかった可能性が高いです。

個人的には 2020年2月下旬開催予定であった DroidKaigi 2020 の中止アナウンス 前後から中止や延期が増えてきたように記憶しています。

イベント開催形態の推移

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イベントの開催件数とその形態をグラフにしてみました。
2020年と比較するために、各年の1-7月期で集計しています。

イベント形態の区分はオフライン、オンライン、不明の3つです。
Connpass 上の会場情報をもとに開催形態を区分していますが、イベント名称などで明らかにオンライン開催と分かるものについては会場情報で住所が記載されていても「オンライン」と区分しています。
なお、不明やオフラインとしているイベントの中には中止となったもの、本文を見るとオンラインに移行したもの、などがあるため実際のオンラインイベントの割合はこの数値よりも多いと思われます。

イベント形態の割合についての詳細は後述しますが、上のグラフを見るだけでもオフラインイベントが大きく減少していることが分かります。

一方でイベント件数そのものは私の想定よりは減っていなかったのですが、これをどう感じるかは人それぞれでしょう。

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上のグラフと表は各年1-7月のイベント開催形態の割合の推移です。
この表を見ると2015年ごろからオンラインイベントが数%あることが伺えます。この数%は主に「Skype」を用いた小規模なイベントで内容的には「もくもく会」が多かったと記憶しています。

現在主流の Zoom などを用いたオンラインイベントとは内容も規模も違いますが、技術系コミュニティにとってオンラインイベントそのものは未知のものではなく、他業界と比べて比較的に移行しやすい環境にあったのかもしれません。

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上のグラフと表は月毎の推移を見るために作成したものです。2019年1月から2020年7月までの各月のイベント数とその内訳となります。

件数としては4月に最低数を記録してますが、5月以降微増し底堅い動きを見せています。

このグラフを割合ベースとしたものが下となります。

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こちらを見ると2020年3月から明らかにオフラインイベント件数が減少し、オンライン化が進んだことが分かります。

緊急事態宣言が発令された4月以降はオンラインイベントの割合が急速に増え、5月以降は8割以上のイベントがオンラインで開催されています。

緊急事態宣言の期間に「接触機会の8割減」が話題となっていましたが、イベント件数の減少とオンライン化率を考えると技術系コミュニティはこの目標を早期に達成し、今なお継続していると言えるでしょう。

新規グループの動向

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こちらは新規グループの数値と前年同月比です。

Connpass ではイベントを立ち上げる際にグループを作成することができます。コミュニティとして継続してイベントを行う場合、多くはグループを作成していると思われるため、新規グループの値は新たなコミュニティの立ち上げと近い意味を持つと考えられます。

このデータは解釈が難しいところがあります。
年単位では集計上最初の年となる2013年と特殊な事情がある2020年以外を除くと概ね増加傾向です。

しかし、2017年下半期、2019年下半期の一部の月は新規グループの増加率が100%を下回っています。一方、この期間でもイベント数は増加しているので減少が何を意味するのか、はさらに深い分析が必要そうです(集計ミスの可能性もあります)。

2020年については1月から減少傾向となり、緊急事態宣言が出た4月以降に大きく減少しています。ここ3カ月では前年同月比で50%程度となっています。

この減少についての考察は まとめ に記載していますが、要因の1つはイベントを通じて新たなコミュニティが生まれる再生産のプロセスが途絶えたことではないかと思われます。

また、企業やオープンソースコミュニティによる大規模なイベントや新技術の発表もコミュニティ発足の契機となりますが、世界的な新型コロナウイルスの流行によって、これらのイベントや発表が滞り気味であったことも要因の1つかもしれません。

データを見る限りでは新規グループ数は右肩上がりとはいえ、増加率は2014年をピークに継続して減少しているので、新型コロナウイルスがなかったとしても2020年に減少傾向となった可能性も否定できません。

次回以降

次回は「地域別の技術系コミュニティイベントの推移と傾向」をテーマに集計・分析したデータを掲載します。

新型コロナウイルスの影響とはあまり関係がありませんが、地域の技術系コミュニティを検討するうえでの基礎データは今までなかったので、地域における技術系コミュニティについて考える際の参考となるようなデータを掲載できればと考えています。

第3回目では曜日毎のイベント開催数や開催時間といった技術系コミュニティの基礎データを掲載する予定です。併せて、今回の集計の基準や注意点も掲載します。

最後に

データから分かるように技術系コミュニティのイベントはこの10年ほどで著しく増加しました。この増加にはさまざまな要因がありますが、無料使える便利な集客ツールの Connpass の存在は大きかったはずです。

Connpass 以外にも類似したサービスは多々あり DoorKeeper や ATND、Peatix Meetup もそれぞれの特徴を活かして技術系コミュニティを下支えしてくれています(ATND は残念ながらサービス終了となってしまいました)。

技術系コミュニティのエコシステムの一端でビジネスする立場として、これらのサイトに感謝の気持ちを表したいと思います。とくに Connpass についてはサービスを提供するだけでなく、API という形で分析の機会を頂けたことについて感謝の気持ちが尽きません。

ありがとうございます!

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