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福岡で20億規模のファンド設立。StartupGoGoが福岡でスタートアップ支援を行う理由とは

スタートアップが成長するのに、資金調達は不可欠だ。成長初期にあたるシード期やアーリー期の資金調達を助けるのが、創業融資やVC(ベンチャーキャピタル)、エンジェル投資家と呼ばれる個人投資家らだ。

VCが事業会社や金融機関などから資金を集めて運用する基金のことをファンドと呼ぶ。

今、福岡のVCが設立したシード期・アーリー期向けのファンドが熱い。


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2019年4月1日に福岡で20億円規模のファンドが設立された。ファンド名は、「九州オープンイノベーション1号ファンド」。

GxPartnes LLP(ジーエックスパートナーズ有限責任事業組合)が設立した。今回は、GxPartnes LLPマネージングパートナーの中原健氏に九州オープンイノベーション1号ファンドが誕生した背景と、福岡でスタートアップ支援を行う理由を聞いた。


福岡独自のエコシステムを創る

GxPartners設立の背景について教えていただけますか?

もともと一般社団法人StartupGoGoという団体を代表パートナー兼CEOの岸原稔泰とマネージングパートナーの寺井博志、そして私(中原健)の3人でやっていました。2014年からシード期のスタートアップを対象としたピッチコンテストを主催する活動を中心に、これまで計5回開催しています。

加えて、3年半前から西日本鉄道株式会社(以下、西鉄)とのコワーキングスペースの運営を行ってきました。そのようなオープンイノベーションの動きの中で、事業会社がスタートアップと一緒に何かビジネスを創っていきたいという相談を受けることが多くなり、西鉄や凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)など大手企業と協業したいスタートアップを募集して実際に協業事例を創ってきました。

また、3~4年前からアクセラレーションプログラムを運営しています。福岡にはイグジットを経験した起業家が少ないことや、VCの不足から福岡で起業しても、東京に行ってしまうという事例もあったことから、そこの不足を埋めるために東京からイグジットを経験した起業家やVCを連れてきてメンタリングしていただき、コミュニティの輪を広げていきました。

この活動の中で、もともと私が金融系出身ということもあり、資金調達の相談を受けることが多くて、VCや事業会社を紹介する中で、どうせだったら自分達できちんとお手伝いできた方が良いのではないか、というのが当初のもくろみでファンド設立の流れになりました。

画像2StartupGoGo ディレクター/GxPartners マネージングパートナー&COOの中原健氏

設立の思いとは?

福岡はスタートアップ都市として注目されていますが、東京と比較するとお金、人が循環するエコシステムが足りないと感じています。福岡はシード、アーリー期のスタートアップが多いのが特徴です。そこに資金供給しながらハンズオンすることで、次のステージに進めてイグジットできるスタートアップを産み、お金が流れて、人が流れていくといった動きを東京とは違う形で創っていきたいという思いがあります。

投資対象は福岡に限っていなくて、日本全国どこでも良いと思っています。プラス、もともとパートナーが居る台湾、韓国、香港の海外のスタートアップも投資対象としています。彼らが福岡に来たいと言ったときに来てもらえるように、アジアと近いという特性を活かしつつ、他の都市と違うスタートアップのエコシステムを創るお手伝いができたら良いなという思いです。

海外から進出するスタートアップから見た、東京と比較した福岡の違いとは何でしょうか?

台湾のスタートアップからは、東京より福岡の方がコミュニティや市場に入りやすいと言われることが多いです。東京だとそこに市場があるので、国内の他都市や国外に行かなくても稼げる環境があります。福岡だと、マーケットがそこまで大きくないので、海外も含めて外に行かなきゃいけないという感覚があると思います。福岡では、東京に行くのと海外に行くのがそんなに変わらないので、福岡の人達は海外に意識が向いているなと感じることも多いです。

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お金だけじゃないところを支援したい

九州オープンイノベーション1号ファンドの特徴とは何でしょうか?

特徴は、事業会社と連携して、スタートアップの成長を支援するという点です。お金だけ投資しても、その後の売り先が無いといった課題がでてしまう場合があるので、西鉄や凸版印刷などパートナー企業の顧客を紹介してもらったり使ってもらったりして、お金だけじゃないところを支援していこうというところが主旨です。

FFGベンチャービジネスパートナーズが共同パートナーでジョインしてもらっています。シード、アーリー期のスタートアップを投資対象としていきます。投資先は、業種にこだわりは無く、10年くらいかけて50社~80社くらいを予定しています。

ファンドの出資先は、現状は西鉄、福岡銀行、QTnet、新出光で、今後も増えていきます。

画像4公式ホームページより参照

5月23日に開催された当ファンドの誕生祭は盛り上がっていたようですね。

結構来ていただいて、150名くらいの方にお越しいただきました。事業会社の新規事業関連の方や、スタートアップの方、学生さんもいらっしゃっていました。

出資を受けるスタートアップのメリットについて教えていただけますか?

資金調達ニーズに応えること。そして、事業会社との連携窓口として、リソースを使ってもらえることがメリットです。例えば、凸版印刷だと全国2万数千社の取引先があって、toBのビジネスだと一緒に組みやすいですし、西鉄だとインフラを持っていたり物流関係のネットワークなど色々な分野があったりするので、toC関係だとそちらを使ってもらえるのがメリットです。

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事業会社のメリットとは?

オープンイノベーションを目的として、スタートアップと組みたいというニーズがあります。既存のビジネスが儲かっていない訳ではないけど、新しい分野を開拓していかないといけない中で、自社だけの研究開発には限界がきています。その中で、スタートアップと組むメリットがあります。いきなり事業会社がスタートアップに電話をかけても、スタートアップは忙しいですし、限られたリソースの中で提携先を慎重に選ばないといけないので、ウチが間に入ってスムーズに事業連携を実現していきたいと思っています。

どんな人に投資したいですか?

ビジネスモデルも大事ですが、人が一番大事だと思っています。やりたいビジネスをやりきれる情熱があるか、という点です。投資した後は長い付き合いになるので、一緒に仕事をしたいと思えるかどうかが最終的に大事なポイントです。

スタートアップはお金がないとか人が辞めたりとか色々なストレスがかかります。シード期のスタートアップなのでピボットすることもあると思いますが、ビジョンだけは変わらずに続けている人、それがあればストレスが多いスタートアップですが、続けていっていると思うので、そういった人に投資をしたいと思います。

画像6公式ホームページより参照


目指すのは、日本の中の“西海岸”

直近の事業目標、3年後、10年後の事業目標についてお話しいただけますか?

今年は、10~20社の投資をやりたいと思います。3年から5年では2号ファンドも立ち上げたいなと個人的には…これ言っちゃって良いのかな(笑)

10年後は1号ファンド2号ファンドで投資した人がイグジットして、その人達がエンジェル投資家やシリアルアントレプレナーになって、福岡のエコシステムの中で人とお金が回るようになって、日本の中の“西海岸”的なポジションが取れるような世界になっているのが最終的な目標です。

スタートアップが集まる都市。アジアから福岡に来たらスタートアップがしやすくて、成長のために組める企業も多くてというようなエコシステムが回っていく未来になれば、と願っています。

最後に、スタートアップの方や事業会社の方にメッセージをいただけますか?

あくまで事業会社とスタートアップは対等なものと考えています。どちらも成長しないといけない点や、ビジネスを広げていかないといけないという点では、それぞれ欠けて足りないものがあると思っています。それを上手く掛け合わせて両者が成長できれば良いなと思っています。そのために、組織としてはまだ規模が小さいシード、アーリー期のスタートアップの成長を第一に考えています。

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StartupGoGoの長年に渡るスタートアップ支援の知見と、本ファンド設立の背景から、スタートアップの成長に福岡を拠点とするVCならではの介在価値がうかがえた。

未来の福岡に米国の西海岸のようなエコシステムが広がり、福岡が“アジアの西海岸”と呼ばれる日が来る。そんな可能性を感じた。

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