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みちくさ⑪‥PTA文化部の活動

学校法人明星学園発行の『明星学園報』に、資料整備委員会が連載している「資料整備委員会だより・みちくさ」を転載します。

資料整備委員会だより第11回
‥‥2020年7月発行分、明星学園報No.112に掲載

 明星学園のPTAは2009年度まで、現在も続く学年学級委員会のほかに、
  厚生通学安全対策部
  広報編集部
  文化部
  公費助成推進部
という4つの専門部に分かれて活動していました。
 今回の「みちくさ」では、2009年度のPTA改革で解消されたPTA専門部のなかから〝文化部〟を取り上げて紹介します。
 明星のPTAがこのような体系になったのは1952(昭和27)年です。
 それ以前にも創立当初から教師と協力し合って子どもたちの学校生活を支える「母の会」があり、教育的な取り組みや宿泊行事など、父母――とくに母親たちの協力は、明星の教育活動には欠かせない存在でした。
 小学校だけで始まった明星が上級学校を併設し、のちの新制中学校・高等学校に続くきっかけを作ったのも父母の意向でした。
 また学校に対する手伝いだけでなく、母親たちが独自に企画したさまざまな催しも実施され、教師は積極的に協力しました。
 明星は教師と父母が一体となって育ててきた学校なのです。
 「母の会」の活動はアジア太平洋戦争の混乱で中断しましたが、敗戦から7年後、人々の生活が落ち着きを取り戻した時期に、「明星学園P.T.A.」として再始動します。
 新たな体制で発足したPTAでは全学年・各学級から募った代議員が編集部/文化部/厚生部の3つの専門部会(当初は3つだった)に分かれて仕事を担当しました。戦前の「母の会」で盛んだったさまざまな文化活動は、新生PTAの専門部のひとつ、文化部に引き継がれました。


■文化部の活動
 PTA文化部は立ち上げの当初から、各分野で活躍している専門家を講師に招いて、頻繁に講演会を開いてきました。
 1960年代に招いた講師を追ってみると、家永三郎氏、国分一太郎氏、松岡洋子氏、岡倉古志郎氏、羽仁説子氏、山住正巳氏、なだいなだ氏、金澤嘉市氏、林道義氏、小原秀雄氏、藤田恭平氏、開高健氏‥‥錚々たる顔ぶれから、社会問題や教育問題など新聞・テレビではわからない事まで勉強したいと願う保護者たちの意気込みが感じられます。
 そして講演会だけではなく、その時々に問題になっているテーマで教師と父母との座談会・懇談会もたびたび開かれました。展覧会、観劇の会、父母の一日教室なども主催し、活動の内容は年ごとに広がっていきました。明星に子どもを学ばせるだけではなく、父母もまた学ぼうとする姿勢が文化部の活動に表れています。


■多彩な文化部サークル
 文化部のもうひとつの柱として、サークル活動があります。
 PTA会報『道』のNo.96(1963年)、No.105(1983年)に掲載されている文化部サークルの案内から要旨を紹介しましょう。


◎新聞サークル★
 PTAのサークルの中で最も古い。1961年、授業参観後の話し合いの中から20人ほどのお母さんが上川先生を囲んで読書会として始めたことがきっかけとなった。いま問題になっている時事ニュースの中から、なぜそうなるのか、私たちとどうかかわりがあるのかなど、先生方にわかりやすく解説してもらい、その問題について話し合う。また社会科の授業とも関連した身近な場所の歴史散歩も実施。上川淳先生(小・中・高社会科)、依田好照先生(中社会科)
◎文学荒川サークル★
 荒川有史先生(中・高国語科)を講師として、開講以来十数年続いている読書サークル。荒川先生の研究テーマでもある井原西鶴の作品を中心に、古典を読み解きながら江戸時代の庶民の生活を学ぶ内容。子どもの卒業後も続けているメンバーの多いサークル。
◎歴史サークル★
 1963年頃、当時PTA会員であった宮川寅雄先生(和光大学教授)が文化部主催の講演会でお話しされ、それを聴いた母親たちの中から歴史の勉強を希望する声があがったことをきっかけに生まれたサークル。高校社会科の武者小路穣先生(退職後は和光大学)に講師をお願いして日本史を学び、武者小路先生のご専門である美術史の講義や美術館見学なども行う。
◎画好会★
 読んで字の如く、画の好きな人なら誰でも参加できる楽しい会。絵筆を持ったことのない人でも、お箸を持てる人なら先生が指導してくれる。太田幸雄先生(小・中美術科)、鈴木五郎先生(小美術科)
◎文学サークル源氏物語
 40年にわたり源氏物語を研究されてきた武者小路辰子先生(保護者・卒業生)がどのような質問にも的確に答えてくださる素敵な講義。10年以上続く古典文学を楽しむサークル。
◎文法サークル★
 読み書きに役立つ文法を勉強するサークル。1967年の「一日生徒の会」で“動詞の活用”というテーマの話を聞いた後、ぜひ続けて勉強したいという要望があり生まれた。文学作品にあらわれた文法事項をとりあげながら、文章の深い意味を読み取る。正しい日本語を知ることは外国語の学習にも大きな力となる。内藤哲彦先生(小・中国語科)、大草繁先生(中英語科)、瀬野卓志先生(高社会科)
◎明星の一貫教育を創る会
 1980年に起こった内部進学テスト問題を保護者の立場から考え、先生方や理事と話し合い、親は子どもにどのような教育を望むのかを明確にするために学園と話し合う活動をする会。
◎表現サークル
 詩、短歌、俳句、小説、童話、随筆、なんでも書くことの好きな人と、耳と口だけの参加もできるサークル。無着成恭先生(小・中国語科)
◎明星学園お父さんの会
 1983年に3年目を迎えた会。内部進学問題を機に、実質的には「母の会」であるPTAに、もっと積極的に父親の参加を得たいとの働きかけを目指す人々があらわれ、話し合いから発展してスタートした会。
◎教育を考える会
 中学校から高校への内部進学問題を契機にして見えてきたさまざまな問題に対し、深い根のところで十分な話し合いが行われてこなかった。それぞれの問題に時間を掛けて考え続ける、話し合いの広場。

 以上のように、保護者もさまざまなテーマで学び、明星生活を楽しんできました。
 『道』No.96(1963年)の特集「PTA各部十年の歩み」にも、文化部の活動が詳しく書かれています。それによると、★印の各サークルがつくられたのは1960年代で、そこには「明星教育を理解するためにPTAを勉強の場にしたいという母親のひたむきな願いが込められていた」と記されています。先生方の協力を得て、共通の勉強の場として、サークルを有意義に活用する母親たちの多かったことが窺えます。

 残念ながらこれらのサークルで現在まで続いているものはありませんが、現在は 和太鼓/コーラス/社会科 の3つのPTAサークルが活発に活動しています。
 明星のPTAは公立学校に比べると在籍している期間が長く、子どもたちの卒業後も明星と関わり続けたいという父母が多い学校です。2020年現在も、OB会員の比率が高いPTAサークルは、新旧保護者たちの交流の場となっています。これも明星の良き文化の伝統と言えるでしょう。

 時代が変わり、PTA活動の負担が大きいという保護者の声を受けて改革が進められた結果、2009年度末に4つの専門部は解消されました。“明星の文化”を受け継いできた各部の活動、とくに文化部がなくなったことは残念です。いつの日か、時代に合った形で復活することを密かに期待しています。

 明星学園では、教師と保護者が風通し良く意見を交換し、尊重し合い、互いに謙虚に援け合って学校をつくり上げてきました。
 保護者はよく理解して学園を後押ししてくださいました。教師たちも保護者の要望に応えるよう努めてきました。
 保護者と教師が手をつなぎ、共に子どもたちを育てる場が理想的な学校です。創立以来、明星はこの姿勢を続けてきました。
 明星学園をこよなく愛し、育ててくださった父母の皆さんへの感謝を忘れずに、これからも教師と父母が心を開いて交流し、子どもを育てていく学校であってほしいと願っています。


取材協力:依田 好照(元小・中学校校長)
文責:資料整備委員会 大草 美紀

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