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陰陽五行の話3 真面目な「干支」の話

「えと」って何だ?

皆さんは、このタイトルを何と読まれたでしょうか?
今回は、余りに誤解が多いので、声を大にして真面目に述べます。
一般的に、「えと」という言葉がありますが、これを漢字で書くとどうなるでしょう?

「十二支」?
「干支」?

これ、どちらも完全な間違いなのです。
十二支の出来た由来、なんて読み物もよく目にしますが、この為に皆さんが、陰陽五行の理解からどんどん遠ざかってしまうのも困るので、きちんと説明します。

特に十二支は、構造と意味が分かると、え?十二支って、こんなに便利で実用的だったの?、と目からウロコになります。十干十二支は、風水学のみならず、東洋学の基礎ですから、頑張って覚えて下さいね。

言葉の意味をきちんと理解しよう

今回は、誤解を解く為に言葉の分類整理をしますが、「えと」というのは「十干・十二支」のうち、十干を陰と陽に分類したものです。

この説明では、まだよく分からないと思いますので、順番に、図も使って説明します。
「陰陽五行」という言葉がありますが、これは「陰陽」と「五行」に分かれます。

「陰陽」は文字どおり、「陰」と「陽」ですね。これは、山の日向と蔭、という意味です。

左:山陰  右:山陽

日本の中国地方は、山陰地方、山陽地方に分かれますがそのまんま、中国山地を境に、陽の当たる南側を山陽、北側を山陰としたものです。とってもカンタンですね。

次に五行。五行ですから五種類「木火土金水」(もっかどごんすい)と、丸暗記で覚えて下さい。
ほとんどの方は、九星気学とか四柱推命なんかで、「自分は一白水星だから水かな?」とか「土星人て言われたよー」と、少しかじっておられることでしょう。
或いは少しマニアックに、「辰巳空亡なんだけど、これも五行と関係あるの?それとも別物なん?」と思う方があるかもしれません。

安心して下さい。このシリーズで、全部、疑問が解けます。
動物占いも十二支に当てはめて考えることが出来ますが、他の新興の占いは、その占いの作られた経緯を考えると、あまりお勧めできないものもあるので、立ち入らないことにします。

陰陽+五行ですから、木なら木の陽と陰、火の陽と陰、という風に、十種類あります。これが十干です。

五行の陰陽

何も予備知識が無くても、カンの良い方は上の表をじっと見ただけで、十干の構成や呼び名の由来に気づかれたことと思います。
もう少し詳しく、それぞれの文字を、違う書き方をしてみます。

陽干
甲=きのえ=木の兄
丙=ひのえ=火の兄
戊=つちのえ=土の兄
庚=かのえ=金の兄
壬=みずのえ=水の兄

陰干
乙=きのと=木の弟
丁=ひのと=火の弟
己=つちのと=土の弟
辛=かのと=金の弟
癸=みずのと=水の弟

皆さんもう、お分かりになったことと思います。
陽干には全部「え=兄」がつきます。陰には全部「と=弟」がつきます。
弟ではなく妹でも良いのですが、男女の陰陽とはまた少し違う話ですので、ここはいちおう、セオリー通りに「兄、弟」としておきます。

木火土金水にそれぞれ陰陽があって、全部で十種類、これが十干(じゅっかん、じっかん)です。

そして、兄(え)+弟(と)で「えと」ですから、「えと=兄と弟=陰陽」という意味なのですね。

「えと」に強引に漢字を当てはめるなら、「兄弟」が一番近いですが、これを「えと」と読む人は少なそうです。

それじゃあ、十二支って何?

十干の陰陽五行は分かりました。
今の段階では、置いてけぼりになっている十二支ですが、十干とは全く別物で、これは月や季節の流れと連動させて考えると、覚えやすいでしょう。
子が始まりだと、どの暦を使おうとしても、少し覚えにくいので、筆者の使っているルールで、立春=新年からスタートします。

立春=2月4日として、寅月スタートです。

十二支の四季


春=木性、夏=火性、秋=金性、冬=水性で、それぞれ季節の変わり目には土性が入ります。
一年に四回、土用がありますね。土用は複数の要素が混じり、変化してゆくのです。

十干十二支は、実はどれも、植物や人間の栄枯盛衰を現す文字で、ズバリ象形文字なのです。
例えば、「寅」だと、次のような文字が原形です。一番上のウカンムリは建物を現し、中に入っているのは人間です。
ここはいかにも、農耕民族らしい発想です。古代文字の出来た時代には、群雄割拠の戦国時代もあったでしょうから、象形文字にはいろんな意味が込められています。

象形文字(左が十二支の寅)

有名な太公望の「望」など、太公望がいつも背伸びして、遠くを眺めているので、背伸びした姿が「望」の字になった、ということです。
宮城谷昌光の「太公望」も面白いですよ。

古代文字に興味のある方、他の文字も変換してみたい方は、「白川フォント」のサイトで、一度に一文字だけ表示できますので、試してみて下さい。

白川フォント
http://www.dl.is.ritsumei.ac.jp/Shirakawa/search/

このように、十干と十二支が出揃ったところで、合わせると組み合わせが六十干支になります。
組み合わせは、自動的に、最大多数の組み合わせが作られているわけではありません。例えば癸戌という組み合わせは無いのですが、これは十干と十二支をそれぞれ循環させているからで、六十年経つと、十干が六回、十二支が五回、循環します。
そして、目出度く六十干支が一還すると、「還暦」というわけですね。ちょうどこの還暦ぐらいから、心身の状態が大きく変化し、それまでの生活態度によって、差がつく場合が多いようです。

十干と十二支の関係は、「干=幹」、「支=枝」に通じます。
漢字は音が同じだと、意味が近いものが多いです。
鉄道路線とか、電線でも、幹線、支線とか言いますよね。太い幹と細く枝分かれした支線。「え」が太いおおもとで、「と」は細い末端のほうです。

十二支の五行は?

それでは、残った課題、十二支の五行は?
実はこれは、非常な難問なのです。
十二支にどれぐらいの木火土金水が含まれるのか、これを「蔵干」と言い、四柱推命の最大の問題点です。
これは、干支暦を自分で丹念に作ってゆき、命式を出す練習をしていくと、自然と理解できるようになります。
筆者のサイトに来られる方は、「うちは何の流派なので、この蔵干表を使って下さい」という、ブラックボックス式のやり方は好まれない方が多いので、この辺りはできるだけ、自分で納得できるように教えています。

今回はとりあえず、十干十二支の文字に馴染むようにして下さい。
十二支はともかく、十干の方は見慣れない文字もあると思います。
特に「戊(つちのえ)」と「戌(いぬ)」などは、見間違えやすい文字です。
「未」を「み」と読んでしまうと、「巳」と取り違える結果になってしまいます。「午」(うま)にはツノはありませんから、「うし」と読んではいけません。

東洋占術にご興味を持たれた方は、まずは十干十二支の書き取り練習をするのが早道です。きっとすぐに上達します。
ただ書き取りをするだけでなく、年単位でも月単位でも日単位でもいいので、順番に並べていくと、干支暦が出来ます。
甲=十干の1番、子=十二支の一番ですから、甲子が六十干支の一番です。一番近くて、1984年が甲子年です。その後は、十干は木火土金水の陽・陰、陽・陰と並べればいいわけですね。出来上がった暦を使うよりも、遥かにみっちりと身につきます。

「陰陽五行の話3」


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