駐在帯同を決意するまで
マレーシアに来て10ヶ月目がスタートした。
雨季と乾季の違いはあれど、日本のように四季の変化を感じられないためか、10月になったという実感は全然ない。
あと3ヶ月で2024年が終わる。
私が移住を決意したのは、ちょうど2年前の今頃だ。
当時D3の大学院生だった主人とは、交際を始めて2年と少しであったが、彼は研究調査のために後半の1年4ヶ月はタイに渡っていた。
コロナ真っ只中で私は看護師。彼の元に会いにいくことは一度も叶わなかった。
毎日LINEをし、時間のある時はビデオ通話をしながら一緒に映画を見たりして、全く会えない1年4ヶ月を乗りきった。
私は3年目の看護師として、ようやく1人前だと自分を認められるようになり、仕事が楽しくなってきていた。
やっと遠距離が終わり日本に帰国した時、彼は県外の大きな企業とマレーシア現地採用のベンチャー企業から内定を貰っていた。
日本国内であれば大方どこでも働けるだろうから、いずれは彼の希望する赴任地に着いて行こうとは思っていたが、海外となると話が違う。
仕事は続けられないし、家族や友達とも簡単には会えなくなってしまう。
親には心配をかけるだろうし、私は一度旅行で韓国に行ったことがあるくらいの海外経験しかなかった。
海外での生活なんて全く想像がつかない。自分にできるとも思えない。
しかし、彼の心は日本の企業ではなく、マレーシアに向いていることは痛いほど伝わってきていた。
私はどうしたらいいのだろう。
彼のことは1番に応援しているし、彼の信じる道を進んでほしい。
けれど隣に私がいていいのかわからない、、、
もちろん、彼も同じように悩んでいたと思う。
やりがいを持って楽しく仕事をしている私を、いつも近くで応援してくれていた彼は、「仕事を辞めてついてきてほしい」と無責任には言えない優しさを持っている。
履歴書を出した時から報告はしてくれていたので、遠距離中に考える時間はたくさんあった。
「日本の企業に就職してもらいなよ」
「マレーシアにどうしても行きたいのなら、別れることも視野に入れたら?」
「新卒でお金もないのにベンチャーなんて不安だよ」
「彼にこだわることはないんじゃない?」
私の身を案じてくれる家族や友達の意見はほとんどこれであった。
ありがたい意見だし、「でも最後に決めるのは自分だけどね」とも言ってくれた。
声をかけてくれた男性と食事に行ってみたりもした。
「僕なら日本にいるよ」と言ってくれた友人もいた。
けれど、こうして逃げていないで彼と本心でぶつからないといけないと思った。
私はまだまだ海外で生活する決心は固まらなかったが、
「マレーシアで働きたい。着いてきてほしい」
と彼が言ってくれれば、異国の地でも頑張れるだろうと思っていた。
私のために本心ではない国内の企業に就職すると言ったり、またもや遠距離を提案するなら、ここでお別れをしようと決めた。
そして2年前の10月、帰国した彼とカフェで話をした。
日本の企業に就職した場合、マレーシアに行く場合、私の仕事をどうするかなど、色んなパターンを想定し、メリット・デメリットを2人で話し合い、最後には彼からどうしたいかを言ってもらった。
そんな葛藤の末、今がある。
主人と結婚したこと、仕事を辞めたこと、マレーシアに移住したこと、全てに後悔はない。
たくさん悩んで自分で決めた道だから。