「タイタニック」ネタバレあらすじ感想
0,基本情報
実際に起きた出来事を基にした歴史的大作。監督は「ターミネーター」シリーズや後に「アバター」などのSF映画を手がけるジェームズ・キャメロン氏が、配給は日本では20世紀FOXが担当している。上映時間は3時間15分となっている。また、CINEMAランキング通信、TSP映画によると本作の日本興行収入、世界興行収入はともに歴代3位となっている。また、1998年のアカデミー賞で、作品賞・監督賞など合計11部門で受賞を果たした。本作のFilmarksでの評価は5点中4.1点、Rotten Tomatoesでの批評家支持は89%、オーディエンス支持は69%となっている。
1,予告編
2,ネタバレあらすじ感想
1996年、1人のトレジャーハンターは仲間と共に、沈没した豪華客船タイタニック号に眠るとされている「碧洋のハート」と呼ばれる大きなダイヤのネックレスを求め、タイタニック号周辺を捜索していた。彼はタイタニック号の中から金庫を見つけ、その中から「碧洋のハート」を身につけた裸体の女性の絵を見つける。テレビでそれを見たローズという老婆はハンター達に「自分がこの絵のモデルだ」と電話をかけた。実はローズは84年前に起きたタイタニック号沈没事故の生存者だったのだ。ローズが84年前出来事を彼女自身が語り手となって話し始めるところから物語は始まる。
1912年、貴族の両親の元に生まれたローズは、破産寸前の家計を救うために政略結婚を強いられており、タイタニック号の航海は上流階級という自身にとって生きづらい立場を目の当たりにすること、心の奥底までは愛していない婚約相手と時間を共にすることであり、後ろ向きな気持ちでいた。その一方、画家をやっている貧しい少年ジャック・ドーソンはタイタニック号の出港直前に賭けで勝利して乗船チケットを手に入れ、豪華客船の旅に加わる。
自分の置かれた立場に嫌気がさしたローズは船尾から飛び降り自殺を図る。それをジャックが止め、二人は出会う。ジャックはローズを身分的には彼女自身よりも低いパーティの場に招き、酒やダンスなどを共に楽しみ、互いに惹かれ合っていく。二人が楽しんでいる事実を知った婚約者キャルは心の底からローズを愛していながら彼女をどこかモノ扱いし、キャルの思いはジャックに偏っていく。一度は家族のためにジャックの告白を断ったローズだったが、本当の自分の気持ちに向き合いジャックと駆け落ち、タイタニック号で愛を育みながら楽しい時間を送る。「碧洋のハート」を身につけた裸体の女性の絵というのは、その時間の中でジャックがローズをモデルにして書いたものだったのだ。
だが、幸せな時間は長くは続かなかった。タイタニック号は氷山に接触、船内への浸水が始まってしまう。ジャックは「碧洋のハート」を盗んだと濡れ衣を着せられ、下の階に監禁されてしまう。タイタニック号の船長は救援を要請するが、応答に応じた船はたったの1隻、加えて接触事故が起きた場所は大西洋中心部で到着まで最速でも4時間がかかるという情報が入る。対してタイタニック号沈没までの時間は1時間、外観維持のために救命ボートは乗員に対して半分を乗せられる分しか積載されておらず、乗客全員の救助は絶望的な状況だった。乗客が状況を理解できないまま避難指示がでてパニックに陥りかけるなか、ローズはジャックを救出すべく船底部へと向かう。なんとかジャックを救出し甲板に出ることができたが、間もなくタイタニック号は船首の重さで船尾が持ち上がり、重さに耐えきれず真っ二つに割れ、タイタニック号は海の藻屑となった。ジャックはローズに「死ぬところはこの寒い海ではなく暖かい床の上だからこれからもしっかり生きろ」という約束をさせ、救助用のボートが到着する前に息絶えてしまう。結局、20隻のボートの内生存者捜索に当てられたボートはたったの1隻、1,500人が海に投げ出されたうち生存した者はたったの6人であった。
時は戻り1996年、トレジャーハンター一行はローズの話を真剣に聞き、タイタニック号から宝を探すことだけに躍起になっていたことを反省・後悔する者、中には涙する者もいた。ローズは当時のことを思い出しながら船尾から「碧洋のハート」を海にわざと落とし、夢でタイタニック号、その乗客に迎えられ、愛するジャックと再開し、102歳の老婆は静かに眠りにつくのだった…
3,感想(さらに詳細なネタバレ有)
私は本作を鑑賞するまで、「過去にタイタニック号という豪華客船が沈没してどうやら多くの人が亡くなったらしい」という文面での事実しか知らなかった。だが、本作を鑑賞した後、いかに自分が持っていた考えが浅はかなものだったかということを自覚した。
私の調べが正しければ、本作はタイタニック号沈没事故は実際の出来事だが、ジャックとローズ、その他のキャラクターが見せる人間ドラマに関してはオリジナルのものである。だが、丁寧に描かれたタイタニック号の乗客を見ることで、「タイタニック号沈没」という一言からは想像もできないような悲しい別れ、悲惨な光景、緊迫した状況下で選択した名誉ある死、絶望の中で生まれた希望など、重厚なストーリーを自分の脳内に想像した。本作で見せられた架空の物語は完全に架空とは言い切れず、実際にタイタニック号に乗船していた者が経験したストーリーなのかもしれないと想像しただけで涙が止まらなかった。
中盤以降(タイタニック号の氷山接触以後)は船員と乗客がパニックに陥る様子がよく映されている。はじめは状況を把握していなかった乗客が次第にタイタニック号沈没が迫っていることに気づき、一人一人が生死がかかった状況であることを理解し、乗務員の制御が効かなくなっていく。当然自分が助かるために他の乗客や乗務員と衝突し、自分のことしか考えられなくなる人が多く出るが、生死がかかっているので致し方ない。だが、そんな中でも他人を助ける者がいたり、食事の場で共に演奏できたことを感謝する者、自分の身分や立場に対して誇りを持って美しい最期を遂げる者、事故から助からない船を設計してしまったことを後悔してその責任を取って死を選ぶ者がタイタニック号には存在した。極限状態で生死の思考を超越し、他人に気を使えたり、最期まで美しい人生を送る人間の美しさが垣間見えた。状況的には時間が経過するたびに深刻さと悲惨さが増す一方だが、それとは対称的に挟まれる美しい曲の数々は、絶望の中でも花を咲かせる人間の尊さを強調していたのだろうか。
本作で一番印象に残ったシーンはジャックがローズに約束させるシーンだ。先ほどから述べている通り、状況は悪くなるばかりで、重傷者や死者は増えるばかり、彼らもまた凍死の危機にある状況だった。だが、ジャックがローズに生き延びる約束をさせたことで、ローズが事故の後も生きるための活力が生まれた。タイタニック号に乗船して間もなく自殺を図ったローズが、恋人を失っても生き続けることができたのは確かな信念があったからだろう。ジャックは美しくも切ない恋愛劇を見せただけでなく、四方八方に凍死した死体が浮かび、自分以外の生存者が見当たらないという絶望的な情景の中でローズ自身に希望を生み出させる手助けまでした。ローズはジャックとの約束を守り、救助された際に「ローズ・ドーソン」と名乗り、後に”2人”の子どもを産み、102歳まで生きた。最後にローズが寝床に就いたシーンは彼女の夢を表すのか、それとも彼女が亡くなったことを示すのかは定かではないが、ジャックの約束を忠実に守ったことは間違いないだろう。
我々が受ける学校の歴史の授業は、一文で片付けられた出来事の集合体なのかもしれない。だが、その裏では記録には残っておらず、文字では語りきれないほどの人がいて、物語があり、人生が営まれている。もう少しで震災から10年となるが、ただただあの出来事を悲観的に思うだけでなく、もっと物事を多角的に見て、そこに多くの要素がちりばめられていることを忘れない状態であの日を迎えられるようにしたい。
絶望の中で人間の美しさが芽生え、それを見ることができるとても素晴らしい作品だった。
参考:OSCAR WATCH