「クルエラ」感想~クールに、全てを壊せ~
0,基本情報
・監督:クレイグ・ギレスピー(「ザ・ブリザード」など)
・主演:エマ・ストーン(「ラ・ラ・ランド」など)
・時間:2時間14分
・製作:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
・配給:ウォルト・ディズニースタジオ・モーション・ピクチャーズ
1,予告編
2,あらすじ
パンクムーブメントが吹き荒れる70年代のロンドン。親を亡くした少女エステラは、反骨精神と独創的な才能を活かし、ファッション・デザイナーになることを決意。ロンドンで最も有名な百貨店リバティに潜り込む。
そんなある日、伝説的なカリスマ・デザイナーのバロネス(エマ・トンプソン)との出会いによって、エステラはファッショナブルで破壊的かつ復讐心に満ちた”クルエラ”の姿へ染まっていく──。
なぜ少女は悪名高き”ヴィラン”に変貌したのか?
引用:ディズニー公式
3,全体の感想
またまたやって参りました、ディズニー映画の鑑賞記録。前回劇場で見たディズニー製作・配給の映画は「ラーヤと龍の王国」で、その際はこれでもかと思われるくらい絶賛しましたが、果たして今回はどうだったのか?
下調べは101匹わんちゃんを既に鑑賞していることくらいで他の関連作品には手をつけておらず、鑑賞後にパンフレットは購入しましたがまだ読んでいません。鑑賞後時点で私が持つ知識と表現力でほぼ生の声をお届けしたいと思います!
まず結論を言います。「とても良い」です。本作のポスターには「ディズニー史上最も悪名高いヴィランの誕生秘話」みたいなフレーズが書いてあったかと思いますが本当にその通りでした。ダークヒーロー寄りの描き方で若干キャラクターの描写に不足を感じてしまった「マレフィセント」を払拭するかのごとく堂々たるワルっぷりを披露。悪のイメージは崩さないが主役として「良く」みせるということも不足なく、バランス取れた素晴らしい作品でした。あと、エマ・ストーンの演技が神すぎるんや…キャスティングした人100万点です。
4,詳細な感想(ネタバレ注意)
それではここから詳細入ります。まず冒頭、エステラはバロネス主催のパーティーにて母親がダルメシアンに殺されてしまうショッキングなシーンを目撃、それを自分が殺したと錯覚しその場を離れます。その際、エステラはゴミ収集車らしき車の中に飛び乗りますが、これはエステラの今後を暗示しているかのように感じられました。ゴミ袋を連想させる黒い袋に囲まれたエステラ、今後の人生が黒く泥臭いものになることを示しているのではないでしょうか。その直後に車の片方のライトが映されたショットがあるのですが、これは希望の光ではなく、エステラの歩む道が明確に定まったという印象を受けました。
次に彼女が働く環境について、ロンドンの百貨店で働いていた頃は細く狭い環境、バロネスに才能を見いだされた後は広く開放的な環境で仕事をしていましたよね。これはエステラの才能の今後を表すメタファーとなっているように思います。百貨店に勤めていた頃はひたすら雑用をこなし、布地にも触れなかったので自信の才能、それを用いて製作した成果物を世に発表する機会はありませんでした。人生の「迷走期」といったところでしょうか。その後彼女はバロネスに見いだされ、その下で働き始めますが自身の成果物を世に出すことに成功し、アーティの店でショーウィンドウに自分の服が展示されている事実を知ります。自身の才能とその成果物における認知度が高まったことの裏付け。対象を変えると、バロネスの影響力の強さなんていう解釈もできそうですね。
クルエラ暴走のシーンではクルエラが下の階で作業し、クルエラがより権力の優れた者ではありましたが、道徳性はジャスパーやホーレスに比べて劣っている事を示しているというギャップもまた興味深い点ではありました。バロネスのドレスをだめにして外でライブショーをやった展開でもバロネスが高い場所からクルエラを見つめ高低差が現れています。(ここではおそらく今まで歩んできたキャリアの差が現れているのではないでしょうか)さらに、彼女の髪が半分白・半分黒という点にも動機付けがきちんと為されてい思います。(黒:サイコパスの母の血、白:2人目の母親から教わった良心・環境適応・母親に対する愛情)抜かりがないですねディズニーは!
バロネスとエステラ(クルエラ)におけるファッション関連のシークエンスについて、ここが私が本作で最も粋なポイントだと思っています。まず、二人のアイデア発想について、バロネスはエステラを誤って切りつけた時に出た血の色をドレスに用いるという発想、エステラはショーウィンドウを荒らすという発想を具現化してみせた。最近読んだとある本に「日常の中にアイデアは転がっている」なんて文があったが普段から感性や創造力を働かせる人達は日常からヒントを得る力が優れているのでしょう。
※余談なのですが、自分は経営とか商学系の学部で勉強しているので必然的にビジネスの話を多く聞きます。その中で思考法がいくつか存在して、顧客(ユーザー)起点でその課題を解決するような商品・サービスを展開する流れをよく説明されるのですが、本作は自分の感性起点で商品を作っていましたね。普段あまり聞かないような話を聞けて、個人的にはとても面白かったですね。もっと言えば、メディアが面白い。バロネスは新聞を良く見て、クルエラはテレビをよく見ていましたが、最も効果を発揮した手段は地道にリアルで営業かけること。「全員クルエラドッキリ」(仮称)は完全にバロネスの不意を突きましたよね。コロナ渦ではオンラインで偽情報が出回りやSNSの活発化、学校教育や労働のオンライン化によってリアルの時間がかなり減っていますから、今後の社会(特にビジネス)においてはリアル/アナログは一つのキーワードになっていくのかもしれません。
かなり脱線しましたので話を戻します。エステラ(クルエラ)のデザイナーという立ち位置が魅力的なんですよね。彼女がデザインしたのは服だけではありません。自分のキャリア・自分の知名度を上げるための活動(主にメディア露出)・バロネスを蹴落とすためのストーリーもデザインしているんですよね(周りとの差別化・メディア露出戦略・ポジショニング)。デザインも映画と同じように多面的、デザイン=絵を描くことではなくあくまで表現の一手段でしかないんですよね。
エステラを”殺し”、クルエラを”生き返らせた”演出について、実際のロンドンにおけるファッション文化の移り変わりを示しているのでしょうか?それともそれを用いてバロネスからの決別を示しているのでしょうか。スカートに求めるもの・備えているモノをデザイン性から機能性(ハンググライダーみたいになりましたよね)に。これはデザイン重視で服を作っていた本作においては大きな変化のように思えます。
振り返ってみるとすごいビジネス的な映画でしたねw(僕の感想がそれに寄っているだけでしょうか?笑)まあ、こういう見方もあるよということで…
もっと汚いセリフを使ったり敵をボコボコにしてくれたらいいなとはおもったのですが、ディズニーなのでしょうがないですね(今作はターゲットファミリーではないような気もしますが…)。ロックな音楽とクールな立ち振る舞いで楽しませてくれたクルエラ、「101匹わんちゃん」への繋ぎも完璧で「クルエラ」という物語の存在自体とてもクールで面白い作品でした。
「Luca」や「ブラック・ウィドウ」にも期待!
以上、「クルエラ」感想でした~