見出し画像

「ライアー×ライアー」ネタバレあらすじ感想

0,基本情報

・日本公開:2021年

・監督:耶雲哉治

・時間:1時間57分


1,予告編


2,あらすじ

恋愛経験がなく地味な女子大生・湊は、両親の再婚により同居中の義弟・透と仲たがいしていた。そんなある日、彼女は親友に頼まれギャルメイクを施し高校の制服を着て街へ出る。街中で偶然にも透と遭遇した湊は、彼に別人の女子高生“みな“であると嘘をつき……

引用:映画ナタリー


3,ネタバレあらすじ

ここからは、湊と透は幼い頃に親が再婚して家族となった血が繋がっていない兄弟であるという設定を多少頭に入れて見ていただきたい。物語はあらすじの通り、親友に女性モデルを頼まれた地味女子大生の湊は街で自らの弟である透とばったりでくわし、野口みなという偽名を使って他人だと偽るところから始まる。透は野口みなに一目惚れし、連絡を取るために携帯を渡したり、今までの女性関係を全て断ったり、連絡が来たら人数合わせの合コンの場から立ち去ったり、一人暮らしを宣言し合鍵を渡したりと、みなと付き合うため、同じ時を過ごすために行動を起こす。湊は軽いいたずらのつもりで始めた嘘だったが、透の猛プッシュになかなか真実を打ち明けることはできない。それどころか、大嫌いだった透が、野口みなには振り向いて、湊には振り向かないという状況下で、自らが作った偽りの人間に嫉妬すらするようになる。透もまた、湊に取っている態度に対して疑問に思う点が存在した。


透とみなが恋愛している頃、湊は大学のサークルが企画した他大学との飲み会で昔の知り合い烏丸に偶然再会する。烏丸は湊のことが好きで、ついには告白する。みなは透にこれ以上嘘をついて傷つけることのないように海外に引っ越すと言って別れ、湊はそのタイミングで烏丸と付き合い始める。だが湊は、透が予想以上に精神を病んでしまっていることに心を痛めて烏丸との恋愛に身が入らず、長くは続かなかった。湊は再び野口みなとして透と付き合い始めるが、今度は透の方から別れを切り出されてしまう。透は湊に対して冷たい態度を取っているにもかかわらず、同じ大学に通っていたのだが、実は透は湊に初めて会ったときに一目惚れをしており、結婚までしたいと思っていたが、兄弟では結婚できないことを知り、自暴自棄のようになってしまって女癖が悪くなり、好きでもない女性と付き合いまくり、湊はその被害者となってしまって透を嫌ってしまい、それでも少しでも湊のそばにいたいという理由からだったのである。みなを好きになったのも、湊と顔が似ており、湊とは違って関係もぎくしゃくしていなかったからであった。だが、1からの関係やみなを使って自分の感情に嘘をつき、利用していたとして別れを切り出したのである。


最終的には湊と透はお互いに真実を打ち明け、気持ちが通じ合って本当の二人同士で付き合い始めてエンディングとなる。


4,感想

普通の恋愛モノに終わってしまうかと思ったら、日本社会の状況や日本人の一般的な感覚が取り入れられて、多少のツッコミどころはあるものの、印象に残るシーンがあった作品だった。


まず、タイトル「ライアー×ライアー」について。公式サイトによると本作は森七菜とSixTONESの松村北斗のW主演だったが、森七菜が主演だと思うくらいには湊の演出が多かった。本作は、見た目は嘘(2つある)だが心は本物で同一の湊と、見た目は本物ただ一つだが、心は嘘で自分の本当の気持ちに背を向ける透、二人がそれぞれ一つずつ嘘を持つということでライアー×ライアーというタイトルが設定され、構図的には魅力的なので、もう少し透視点のシーンを取り入れてもらいたかった。透もまた湊と同じように嘘をついているので、どうしようもない状況下での葛藤や心情の変化等映し出してくれればW主演がさらにタイトルに近づき、設定が活きていたのではないかと思う。


演出的にはバックミュージックに違和感があった。リズムを生み出すことで物語の展開に良いテンポをもたらしたかったのだろうが、音楽がキャラクターの心情変化、心の変化、シーンの状況が伝わりにくくなってしまった点があるように感じる。だが、透とみなが再び付き合い始めたときのデートの様子をセリフではなく音楽だけを流し、幸せなシーンを見せたのは退屈さが消え、テンポが良くなってその後の夜景シーンの魅力が沸き立つことに繋がっていたので、よく見るシーンではあるものの良い工夫であった。


物語面で一番興味を持ったのは、湊が烏丸に、弟である透と付き合っていることを打ち明けた後に烏丸が発したセリフ「気持ち悪いと思ってしまう」である。YAHOOニュースに掲載された松岡宗嗣氏の「LGBT法律めぐる状況、日本はOECDワースト2位。「LGBT平等法」求める国際署名が開始」によると、OECD諸国のうちLGBTに関する法整備状況を調べると、OECDに加盟している35カ国中34位のワースト2位、G7でLGBT関連の法整備をしていないのは日本だけ、ELEMISTに掲載されている「2020年版「ジェンダーギャップ指数」で日本はG7最下位に 主要国のランキングと男女格差の問題点」のよると、2020年のジェンダー・ギャップ指数のスコアをつけている153カ国のうち日本は121位で、G7のなかでは当然最下位であるなど、日本は性などに関しては先進国とは到底言えずむしろ後進国なのである。烏丸は、人との付き合い方が多様化している世界に取り残された日本の社会、そこに住む人々の一般的な感覚をたった一言で示して見せたのである。ドラマなどでよく見る三角関係モノになりそうだった雰囲気を烏丸が鋭い槍で突き刺した。兄弟通しで恋愛しているという設定が最も活きた瞬間であった。ほかにも、大学内の仲間などが湊に対して陰口をたたいたり、嫌な視線を向けるシーンなどがあればなお良かったと思う。同時に、物語はあくまで恋愛モノなので、あまり社会性を入れてもストーリーが渋滞してしまう、故にこれくらいがちょうど良かったのかなともまた思う。


私はジャニーズや日本女優にあまり詳しくないが、ただの映画好きでも楽しめる作品になっていたと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?