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「ジョジョラビット」ネタバレあらすじ感想

0,基本情報

日本では2020年に公開され、クリスティン・ルーネンズの小説「Caging Skies」を原作とした作品。監督は「トゥー・カーズ、ワン・ナイト」でアカデミー賞短編映画賞にノミネート、MARVEL作品の「マイティ・ソー ラグナロク」などを手がけたタイカ・ワイティティが手がけている。また、タイカ・ワイティティは本作でアドルフ・ヒトラー役で出演もしている。配給は米国ではFOXサーチライト・ピクチャーズが、日本ではウォルト・ディズニー・ジャパンが担当している。上映時間は1時間48分で、Filmarks評価は5点満点中4.2、Rotten Tomatoesの評価は、批評家支持率は80%、オーディエンス支持率は94%となっている。本作はアカデミー脚色賞を受賞した。


1,予告編


2,ネタバレあらすじ

ナチスのナショナリズムに傾倒している少年ジョジョはドイツ軍への加入を試みて、空想上の友人であるアドルフ・ヒトラーの励ましの元、軍隊養成のキャンプに参加する。厳しさを感じつつも訓練に真摯に取り組むジョジョだったが、ある日共感から生きているウサギを殺せという命令が下される。だが、ジョジョはウサギを殺すことができず、周りからウサギのように臆病なジョジョ・ラビットというあだ名をつけられてしまったジョジョは、そんな彼らを見返すべく教官の手榴弾を盗んで投てきの見本を見せるが、木にあたって跳ね返り自分の目の前で爆発、顔に傷を負ってしまう。
さらに周りから冷ややかな目で見られてしまうこととなったジョジョ、足にも怪我を負ったため軍への加入どころか訓練にも参加できなくなり、雑用の仕事をすることとなったジョジョは、自宅の屋根裏で見知らぬユダヤ人女性エルサを見つける。はじめはユダヤ人に対して強いあたりや反抗的な態度を取るが、お互いの利害が一致し自分の書いた手紙でエルサの心を傷つけてしまってからは積極的に交流するようになった。だが、それはあくまでユダヤ人の暴露本を出版するためのものであった。
ジョジョは母から、(おそらく)ナチスの意志に反する者を吊した処刑台を見せられ、戦争や政治思想よりも人生の楽しさや自由な生き方について語る。実はジョジョの母は自由を求めて影でこっそり運動しており、父親も戦争に行ったのではなく海外で自由を求めて運動をしに行ったのであった。
ある日、ジョジョの家に秘密警察が押し入り家宅捜索を行う。エルサにも疑いの目が向けられ、身分証明や尋問が行われる。その場にジョジョの直属の上司キャプテンKなども合流し、エルサに対して生年月日などを問う。エルサは身分証明とは違う生年月日を言ってしまったが、キャプテンKが見逃してくれ、事なきを得る。が、その後の外出にて自らの母親が反ナチス運動をしていたことがばれてしまい、処刑されてしまったその光景を見て、悲しみに暮れるのだった。エルサと互いのつらい過去、痛みを共有したジョジョは遂にエルサと有人になる。
日に日にドイツ軍の状況は悪くなっていき、ヨーキーの着ている服はボロボロ、訓練されていない民間人や女性まで戦わなければいけない状況になっていた。ドイツ軍の劣勢で遂にジョジョの住む街にも連合軍の戦火が迫る。まだ幼い子どもが自爆特攻していく様子、今まで戦争とは無縁でそれなりに平和に暮らしていた、しっかりとした訓練がなされていない民間人が戦い死んでいく様を目の当たりにする。連合国軍の猛攻にドイツ軍は為す術なく破れ、ジョジョは敵国の兵士に捕らえられてしまう。だが、キャプテンKが自らを犠牲にしてジョジョを救った。ユダヤ人が安全な状況であることを理解したジョジョはちょっぴり意地悪で優しい嘘をエルサにつき、外に出て二人で音楽に合わせて踊るのだった。


3,感想

私自身、今年に入ってから、ディズニーの「くまのプーさん」シリーズ、イライジャ・ウッド(同じくディズニー作品だと「ハックフィンの大冒険」の主人公ハックル・ベリーフィン役)製作の「ダニエル」など、”空想上の友達”を活用した作品をよく見ている気がするが、本作はそれらとは似て非なる作品であった。


本作に登場する”空想上の友達”はアドルフ・ヒトラー、主人公ジョジョが忠誠を誓うナチスドイツの象徴的存在である。ジョジョの部屋のシーンを除くと、ナチスドイツの国旗やヒトラーのポスターが見られ、思想的にもユダヤ人を嫌悪したりとすっかりナチスのナショナリズムに染まっている。行動面でも冒頭から大声で「ヒトラーバンザイ!」と叫んだり、軍人養成のキャンプにノリノリで参加したりと10歳の少年にして純度100%のナチスドイツ愛国者である。そんなジョジョから誕生したヒトラーだが、”空想上の友達”の約束をしっかりと守り、大人数の場所にも登場するが2人きりの場所でしかしゃべらなず、ジョジョ以外の人間はヒトラーに関与できない。また、作中冒頭でキャンプでヨーキーがジョジョに「誰としゃべっていた?」というセリフがあり、ここできちんとヒトラーが”空想上の友達”だとわかる演出がなされる。鑑賞者がきちんと理解できるような丁寧な説明が良かった。また、ナチスの批判対象であるエルサとの交流時間の増加、彼女に対するジョジョの見方が変化していく過程でヒトラーの登場時間が短くなっているように思う。”空想上の友達”という設定が演出にも変化をもたらしていて興味深かった。


この作品で最も印象的な点はジョジョの信念の変化だろう。ジョジョがナチスドイツに傾倒するそのバックグラウンドは描かれないが、おそらく土地の影響だろう。そこからジョジョは自分が信じてきた信念の負の側面を見る。ジョジョの母ロージーは息子ジョジョにナチスドイツではない国家主義を伝えることではなく、もっと大きな人生について語ることでジョジョの思想や行動の変化を促そうとしているように見えたが、ジョジョの信念は強くそれには至らなかった。

その後、ジョジョは立て続けに社会の闇を見る。エルサはユダヤ人というだけで迫害対象で身分を偽らなければならず、外出もできないので自由に生きられないという状況、反ナチス運動をすれば処刑されるという思想の自由がない社会、昨日まで平和に暮らしていた罪なき民間人やまだ幼い子どもが戦いを強いられ無残にも殺されていく様子、国とその信念を信じて戦った同志があっさり敵軍に殺され、ナチスドイツのユダヤ人迫害とやっていることが何ら変わりない光景。この流れはマーベル・シネマティック・ユニバースの記念すべき第1作目「アイアンマン」にて、強い武器を作れば戦争が終わると確信していたトニー・スタークが、実は自分の考えとそれに基づく行動こそが戦いを助長し平和から遠ざけていたと気づく流れに似ている。闇を見せてジョジョが自分の信念に対して疑問を抱かせるこの流れは非常に魅力的であった。エルサがおそらく受けていたであろう迫害をジョジョに体験させ、立場を逆転させることでその後のジョジョの心情変化やエルサに対して自由を与えた行動に説得力があった。また、互いの正義を主張して武力でぶつかり、勝った方を正義、負けた方を悪とする決定の仕方に対する問題提起のようなものも感じた。


10歳の捉え方もロージーの「まだ」という子ども的な捉え方と、ヒトラーの「もう」という大人的な捉え方の2つがあり、前者は社会から遠ざけ人生そのものを楽しませようとする考え、後者は社会に近づけ責任感を持たせるという考え方だ。終わり方から察するに、ジョジョはエルサに自由をもたらしダンスを踊るという2つの考え方を両立したような結末を迎えたが、同じ10歳に異なる考え方を提示したその時点で面白い。


このように、過去の歴史やナショナリズムなど社会性満載の本作だが、監督がタイカ・ワイティティ氏なこともあり、ユーモアがあった。例えば、物語冒頭、少年の軍人養成キャンプにて、「我が国は劣勢で敗北は濃厚だが表向きは順調だ」と教官が語りなんとも言えない雰囲気になるシーンや、物語中盤、秘密警察や軍人がジョジョの自宅を捜索するシーンで、訪問時は一人一人「ヒトラー万歳」と口にするものの、帰る際は全員が同時に「ヒトラー万歳」と口にするシーンが印象的だ。(だったら最初からみんなで言えよ!5人を1人1人だと長いんだよw)


社会性×ユーモアで皆が理解できるような演出、アカデミー賞を受賞するだけはある傑作であった。


画像元:foxmovies-jp.com

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