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素敵なステーキ

ずっと忙しくて延期延期とリスケしていた予定。うなぎを食べに行く約束。元々お客さん、今は店子をしている人に会った。その人はいつもフワフワしていて、何を言ってるんだかよく分からなくて、でも少し冷静になるとよく解ることを言っている人で、そんな人からご飯に誘われたのが嬉しかった。

道中「そこのうなぎ食ってさ〜、近くに映画館あるじゃない。映画見てさ〜それでゴールデン街行くの」と話してくれて、「いい一日だねそれは!」と言っていると着いた先のうなぎ屋は閉まっていて、「あれ〜?」とその人は残念がっていた。すぐに携帯で調べて「定休日だって!」と言うと「よかった〜あのおじいちゃんもう歳だからさ〜閉まったら俺悲しいよ」と。携帯ですぐ調べることを何故だか少し悔いた。

うなぎ屋からご飯を変更、目の前にある鉄板で焼いてくれるステーキを食べに行った。「よくランチの時間帯に来てさ〜、近くに映画館あるじゃない、映画みてさ〜それでゴールデン街行くの」とさっきと似たような紹介してもらった鉄板焼き屋さん。一目散にカウンター席に座り、ビールと2番目に高いコース料理を頼んで料理を待った。

前菜は真鯛のカルパッチョ。次にホタテのアンチョビ。そこらへんでビールをマッカランに変更。接客も素晴らしいお店だったので、私にとって思い出深い酒を頼んだ。

昔ホテルで働いていた時のような丁寧な接客を受け、それでも連れて行ってくれた人はいつも通りわけのわからない、解ることを言っていた。カウンター越しの白髪混じりのおじいさんが「この人いつもビール飲むペース早いんですよ。一口で終わっちゃう」と笑いながら言ってた。その一言で「ああここでもこの人はこの人なんだな」と思った。

元々ウイスキーは苦手なのだが、マッカランは別。苦手とか得意とかそういうところに位置付けていないお酒。閉鎖病棟から出た私を引き取ってしばらく育ててくれた叔父が、マッカランを水の様にカパカパと何杯も空けて、少し残ったのを未成年ながらちびっと舐めるようにして飲んで、部屋に漂う匂いが好きだった。いや、違うな。あの時は「お酒飲んで酔っ払ってだめだめな人だな」と思ってたけど、叔父の家を出てからあのお酒を特別だと思うようになったんだ。

そんなマッカランを飲みながら、カウンター越しのおじいさんや連れてきてくれた人と色々な話をした。「こんなに美味しそうに食べてくれる人久しぶりですよ。作りがいがあります」とお肉を鉄板で丁寧に焼いているおじいさんに言われた。

とにかくいい時間だったんだ。酔っ払ってあの後ゴールデン街にまた行って、この酔いをさましたくなくて慣れない宮城峡を飲んだ。好きな店員さんが作る酒はなんでも美味いな、そう思いながら宮城峡を飲み、最後にダッシュで尊敬してるお姉さんのお店へ。「もう閉店やから〜お酒は出せへんけど〜」と言いながらいつも作ってくれる赤い例のものを出してくれた。

幸せなまま家に着いた。良い酒を飲んだなら幸せな顔をしたい。昨日は本当に良い日だった。今日もいい日だろう。だって半年以上ぶりにあるお客さんがアフリカ出張から帰ってきて、ようやく会えるのだから!きっと今日もへべれけで帰ってくるだろう、でも幸せな顔をして、泣きながら帰ってくるだろう。

備忘録:2021年4月後半の話

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