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文字を失う男~京都磔磔で観客が震えた夜~
2月17日の夜、みずのまい、人間としても作家としても衝撃的なことがありました。
京都の磔磔っていう有名老舗ライブハウスで、すごいネタを目撃してしまったのです!!
その夜は一年に一度行われるラジオディレクター涌井慎さんの一人パフォーマンス、「涌井大宴会」の日でした。
涌井慎さんがどういう方かはこちらを。
いろんなパフォーマンスがあったのですが、やはり一番の目玉は「文字を失う男」です。
一番上に画像があると思いますが、一文字ずつ失っていくんです。
「あ」を失えば「愛してる」は言えなくなります。
「く」を失えば、苦しいは言えない、こんなに苦しいのに、苦しいと声に出せない。
「き」を失えば、「あなた」に続き「きみ」も使えなくなる。
文で書くとたやすいですが、一人芝居なんです。
一人芝居って、一人がしゃべり続ける、動き続けるってことです。
これで、文字を失うってすごい試練です。
ドカベンで山田太郎が記憶喪失のまま試合に出ちゃうとか、宇宙戦艦ヤマトでヤマトがぼろぼろになって使える武器がないのに、巨大白色彗星に立ち向かうとか、そのぐらい、いやそれ以上に大変ですよ。
客席が数回、笑いながら凍りつきました。笑いながら鳥肌が立ちました。
今まで生きてきて、みんなで笑いながら凍りついたことあったかな?みんなで笑いながら鳥肌たったことあったかな?って人生振り返りました。
なかったです。
終演後もみんな、涌井さんを「このネタは続けてほしい」「筒井康隆先生の耳に入るまでがんばってほしい」と熱く囲んでいました。
今、さらっと書きましたが、筒井康隆さんの「口紅に残像を」がヒントになったネタです。
実は、これに関して、みずのは作家としてめちゃくちゃ感動したんですが、ここが涌井さんのすごくセンスのいいところといいますか、創作の神が味方してくれるお手本みたいなことをやってのけてしまったのですが、この話は2月25日の粟生こずえさんとのトークセッションで使わせていただきます(自分の宣伝ではなく、偶然にも、ヒント作品を見つけることがどれだけ大事かみたいな内容なんです笑)
簡単に説明すれば、涌井さんは、大学在学中に涌井大宴会を毎年サポートしてくださる、片山ブレイカーズのボーカル、タカシやそのあとも奥様と運命の出会いをされたのでしょうが、「口紅に残像を」とも同じく運命の出会いをしてしまったわけです。
こうなると、極めるしかありません(笑)
試練が多すぎるネタだし、一人芝居なので、あんまり期待しすぎて違法薬物に手を出したらどうしようと、周囲は心配するかもしれません。
が、私はシリーズ作家なので、ちょっとわかるんですけど、1巻で、ものずごくパワーのいることやって大うけした場合、それでも、2巻、3巻と続くんです。
逆を言えば、初め大うけすれば、あとは続くのさ。大沢在昌さんもどこかで書かれているのさ、ふっ。
いい夜でした。
涌井さん、苗ちゃん、タカシ、磔磔……ありがとう!!
ええ、ただいま校閲様からご指摘がありました。口紅に残像をじゃなくて、残像に口紅を……でした(笑)