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『独り占めしているのをいいことに』№192【2分で読める】日々の暮らしにクスっとエッセイ
ある日、歯磨きをしながら思い出した、わが家のしょうもない歯磨き粉事情。
※
結婚してすぐのころ、もう15年も前の話。歯磨き粉がなくなったので、ワタクシスーパーで特売だったものを適当に買って帰った。
するとダンナが残念そうにこう言った。
「俺、つぶ塩が好き。次はそれにして欲しいな」
「覚えていたらね~」
正直、ワタクシ、なんでもいいじゃんと思っていた。
その次のタイミングでダンナが選んだのは、例のつぶ塩歯磨き。
「こんどはこれにしようよ」
つぶ塩・愛がハンパない。早速その晩から使い始めた。
ところが1週間たった頃、ダンナがワタクシにこんなことを言ってきた。
「ねえねえ、歯磨き粉、減るの早くない?」
そりゃそうでしょ2人で使うから減るのも2倍。それに使えば使うほど歯磨き粉が増えるなんて聞いたこともない。
軽ーく聞き流そうとしたその時、ワタクシが歯ブラシに乗せた歯磨き粉を見てダンナが目を丸くしてこう言った。
「それ使い過ぎじゃない? 俺の10回分、いや15回分はあるよ」
それは歯ブラシの半分ほどの長さ、これでもケチっていると思っていたのにダンナの15回分? 本当に?
ワタクシ、ハッキリさせてやろうと思いパッケージの裏を見た。
「ひょーっ! 適量が書かれていないんですけど」
その昔、ある歯磨き粉のパッケージに「歯磨き粉を歯ブラシ全体につけてお使いください」もしくは「何㎝」と書いてあったのは幻だったのか。確かめようがないのが悔やまれる。
そのまましょうもない言い合いは平行線、それ以降別々の歯磨き粉を使うことに。ダンナは愛用のつぶ塩を独り占めしているのをいいことに、使い始めた日付を記入し何か月使えるかという記録に挑戦し始めた。
「見て~! 1年超えたよ~。まだまだたくさん残ってる~!」
調べて見ると、歯磨き粉の使う量に関する流派は数多く存在し、歯磨き粉を使わずに歯磨きすることをおススメしている歯医者さんもいるとか。
「え?無くてもいいって、そんなのあり?」
だんだん減っていくダンナの歯磨き粉が、なんだかモッタイナイと思い始めた。
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