2022 シルバースラッガー賞について
2022年のシルバースラッガー賞が発表されましたので、それについて書いていきたいと思います。
アメリカンリーグ
C
Alejandro Kirk (TOR)
Sean Murphy (OAK)
Cal Raleigh (SEA)
Adley Rutschman (BAL)
Salvador Perez (KC)
Martín Maldonado (HOU)
今シーズン正捕手に定着し、オールスター出場も果たしたKirkが初受賞。
開幕こそJansenにスタメンを譲ったが、持ち前のパワーと選球眼を武器にレギュラーに定着し、シーズン成績としては、14本塁打 .285/.372/.415を残した。
特に打率と出塁率は捕手の中でトップであり、今シーズン三振より四球が多い6人の1人であった。
ただ、出場試合の1/3程度はDHとしての出場であり、Martínezのように将来的には1B/DHのコンバートが視野に入ってくる可能性も考えられるか。
受賞者以外の選手では、WC進出決定のサヨナラ本塁打を放ち、捕手として最多の27本塁打を放ったRaleighやルーキーながら128 OPS+をマークしたRutschman、昨シーズン本塁打王を獲得し、4度のシルバースラッガー受賞歴のあるPerezなどの活躍が目立った。
(15本塁打をマークしたと言え、打率1割台のMaldonadoがノミネートされたのは謎である。)
1B
Nathaniel Lowe (TEX)
Vladimir Guerrero Jr. (TOR)
José Abreu (CWS)
Anthony Rizzo (NYY)
打撃成績全部門でキャリアハイをマークしたLoweが初受賞。
ほかの候補者3人がいずれもシルバースラッガー賞の受賞歴がある中で、27本塁打 .302/.358/.492とバランスの取れた成績を残し、激戦区の一塁手部門を制した。
キャリアハイの成績を残したLoweだが、四球数が昨年の80個から48個と大幅に減っていることが気にかかる。
他の候補者の成績は、一塁手として最多の32本塁打を放ったGuerrero Jr./Rizzoと打率.304をマークしたAbreuがいるが、前者は低打率、後者はパワー不足と中途半端な成績だったことから、突き抜けた成績はないものの全体がハイレベルだったLoweが選ばれたのだろう。
2B
Jose Altuve (HOU)
Andrés Giménez (CLE)
Marcus Semien (TEX)
DJ LeMahieu (NYY)
Altuveが6度目の受賞を果たし、Canoと並んでいたアメリカンリーグの最多受賞記録を更新した。
今期の成績は28本塁打 .300/.387/.533と文句のない成績であり、ここ数年1ケタにとどまっていた盗塁も18盗塁をマークした。
チームとしてもワールドシリーズを制覇し、個人/チームとしても非の打ちどころのない1年と言えるだろう。
二塁手としての最多受賞はSandbergの7回であり、まだまだ衰える年齢でもないことから、記録更新は確度はかなり高いと言えるだろう。
Altuve以外の選手だと、打率.297 17本塁打 20盗塁とソリッドな成績を残したGiménezや昨シーズンより本塁打は減少したものの26本塁打 25盗塁をマークしたSemienがいる。
またLeMahieuは2塁手部門以外にもユーティリティ部門にもノミネートされた。
3B
Rafael Devers (BOS)
José Ramírez (CLE)
Alex Bregman (HOU)
Matt Chapman (TOR)
リーグ有数の3塁手であるRamírezが4度目の受賞を果たした。
今期はリーグ2位となる126打点、リーグ1位の44本の二塁打とチームの主砲として申し分のない活躍を残した。
また、29本塁打 20盗塁を記録し、今シーズン20-20をマークした唯一の3塁手であった。
(ちなみに過去7シーズンのスパンで見ても、唯一の3塁手である。)
その他の3塁手の成績は、昨年の受賞者であり.295 27本塁打 88打点のDeversや23本塁打 93打点のBregmanなど、いずれも甲乙つけがたいハイレベルな争いとなった。
SS
Bo Bichette (TOR)
Xander Bogaerts (BOS)
Carlos Correa (MIN)
Corey Seager (TEX)
リーグトップクラスの攻撃型遊撃手のBogaertsが2年連続5度目の受賞となった。
リーグ3位の打率.307に加え、出塁率.377は遊撃手してNo.1の数値をマークした。
シルバースラッガー賞の受賞とは関係ないが、今年は守備の指標も大幅に改善し、ゴールデングラブ賞でもファイナリストにノミネートされた。
FAとなる今オフはその動向が非常に注目される。
他の活躍した選手は、リーグ最多の189本のヒットを放ったBichetteやBogaertsと同じくアメリカンリーグを代表する打てる遊撃手の代表格であるCorrea、32本塁打を放ち両リーグでの受賞を目指したSeagerがあげられる。
OF
Aaron Judge (NYY)
Julio Rodríguez (SEA)
Kyle Tucker (HOU)
Mike Trout (LAA)
Randy Arozarena (TB)
George Springer (TOR)
Taylor Ward (LAA)
Anthony Santander (BAL)
Adolis García (TEX)
Teoscar Hernández (TOR)
Judge/Rodríguez/Troutと非常に順当な選出となった。
Judgeは2年連続3度目、Rodríguezは初受賞、Troutは9度目の受賞となり、アメリカンリーグの最多受賞回数で単独首位となった。
(これまではRamírezと並んで8回が最多)
今シーズン最もホットな選手だったJudgeはMarisの記録を更新する62本塁打に加え、打率2位、打点/得点/塁打/出塁率/OPS1位とMVP間違いなしの圧倒的成績を残し、オフにFAを迎える就活シーズンにこの上ない1年を過ごした。
Rodríguezはチームの久しぶりのプレーオフ進出に貢献しただけでなく、28本塁打 25盗塁と史上3人目の25-25を達成した。
シーズン中には最大18年に及ぶ超長期契約も締結し、今後リーグの顔となるが外野手まで成長できるかどうか、非常に楽しみである。
Troutはケガによる長期欠場もあり、規定打席には未達となったが、それでもリーグ2位となる40本塁打をマークし、9度目の受賞となった。
上にも書いたが9度の受賞はアメリカンリーグの外野手では最多の記録であり、次に目指すは外野手として両リーグ最多であるBondsの12回である。
来シーズンで32歳となり、徐々に怪我も目立ちつつある状況ではあるが、是非この記録の更新を成し遂げてほしい。
DH
Shohei Ohtani (LAA)
Yordan Alvarez (HOU)
Giancarlo Stanton (NYY)
George Springer (TOR)
Adolis García (TEX)
プレーオフで大活躍したAlvarezが初受賞。
今期は規定打席をクリアしつつ、打率/本塁打/出塁率/長打率/OPSでキャリアハイをマークし、中でも長打率/OPSはリーグ2位、本塁打はリーグ3位と卓越した成績を残した。
(長打率/OPS 1位のJudgeが異次元の成績を残しているため2位となったが、通常のシーズンであれば十分リーグ1位が狙える成績だった。)
惜しかったのは大谷だ。
二刀流として投打両方で規定をクリアするという前人未到の記録を達成したが、打撃成績だけで見てみるとほとんどの成績でAlvarezを上回れなかった。
他の選手の活躍としては、Stantonが31本塁打、Springerが25本塁打、Garcíaが27本塁打、25盗塁で25-25の達成、という活躍だったが、Alvarez/大谷の争いに割って入るほどの活躍ではなかった。
UT
Luis Arraez (MIN)
Shohei Ohtani (LAA)
DJ LeMahieu (NYY)
Luis Rengifo (LAA)
今シーズンの首位打者に輝いたArraezが初のシルバースラッガー賞を受賞した。
昨シーズンの時点で打率.294とコンタクト能力の片鱗は見せつけていたが、今シーズンはそれにさらに磨きがかかった形だ。
シーズン打率.316は首位打者としては、低めの数字であるが、あのJudgeの三冠王を阻止したという意味で、ある意味で非常に意義のあるものだったと言えるだろう。
大谷はDH部門以上に惜しい結果となった。
打撃成績で上回られていたAlvarezは致し方ないが、OPS低めの首位打者と打率低めの高OPSだと、後者に十分勝ち目があるとある思ったが、首位打者というタイトル補正に敗れた形か。
LeMahieu/Rengifoの2人は正直、ユーティリティ部門の数合わせの感が否めず、実質的にはArraez/大谷の一騎打ちだったと言えるだろう。
ナショナルリーグ
C
Will Smith (LAD)
J.T. Realmuto (PHI)
Willson Contreras (CHC)
Travis d'Arnaud (ATL)
Realmutoが2019年以来の3度目の受賞を果たした。
今シーズンは22本塁打、21盗塁を記録し、Rodriguez以来史上2人目の捕手として、20-20を達成した。
(ちなみに盗塁成功率も非常に高く、22回企画して失敗はわずか1回である。)
今期はシーズン後半に成績を上げ、後半戦はOPS.950と、プレーオフ進出の原動力になったのは間違いない。
昨シーズンでPoseyが引退したことから、攻守ともにRealmutoがNo.1の状況はしばらく続きそうだ。
他の候補者の活躍は、キャリアハイの18本塁打をマークしたd'Arnaud、捕手としてリーグ最多の24本塁打のSmith、同様に22本塁打のContrerasが光った。
1B
Paul Goldschmidt (STL)
Freddie Freeman (LAD)
Pete Alonso (NYM)
Matt Olson (ATL)
Christian Walker (ARI)
Goldschmidtが一塁手として、MLB最多となる5度目の受賞となった。
(Pujolsは6度受賞しているが、外野と三塁手としてそれぞれ1回ずつ受賞しているため、一塁手としては4回である。)
今シーズンはシーズン終盤まで、三冠王ペースで打ちまくっていたが、最終盤に失速し、個人での打撃タイトル獲得は叶わなかった。
とはいえ、打率3位、本塁打5位タイ、打点2位、OPS1位と圧倒的な打撃成績をマークしていることは事実であり、シルバースラッガー賞に加え、MVPの受賞も濃厚である。
他の候補者としては、Freeman/Alonsoも今シーズンでなければ、十分受賞できた成績だっただろう。
Freemanは本塁打数こそ昨年より減らすことになったが、打率は短縮シーズンの2020年を除きキャリアハイの.325をマーク。
首位打者こそMcNeilに僅かに及ばなかったが、移籍初年度としては十分に結果を残したと言える。
Alonsoも持ち前のパワーを十二分に発揮し、リーグ2位の40本塁打と打点王に輝いた。
2B
Jeff McNeil (NYM)
Jake Cronenworth (SD)
Ketel Marte (ARI)
Kolten Wong (MIL)
Brendan Rodgers (COL)
今シーズンのナショナルリーグ首位打者を獲得したMcNeilが初受賞となった。
内外野を守れるユーティリティ性と常に3割をマークするバッティング能力を合わせ持ち、チームにとってグッドスタッフ的な位置付けだったこれまでと打って変わり、チームの主軸として大きく飛躍した。
今シーズンの打率.326はメジャー全体でもNo.1の記録である。
7月こそ不調で打率を落としたが、シーズン終盤にかけてブーストをかけ、わずか1厘差でFreemanとの首位打者争いを制した。
ナショナルリーグの二塁手部門はMcNeilが圧倒的な成績ではあるが、リーグ3位の42本の二塁打を放ったMarteや17本塁打でパドレスのプレーオフ進出に貢献したCronenworth、キャリアハイの15本塁打、118OPS+をマークしてWongの活躍も見逃せない。
3B
Manny Machado (SD)
Nolan Arenado (STL)
Austin Riley (ATL)
Justin Turner (LAD)
Arenadoが激戦を制し、5度目の受賞を果たした。
ナショナルリーグの三塁手部門の最多はSchmidtの6度であり、十分記録の更新が狙える状況だ。
今シーズンは.293 30本塁打 103打点とArenadoからしてみると、当たり前のようなハイレベルな成績を残した。
対抗馬のMachadoが.298 32本塁打 102打点と全くの互角だったが、チーム成績が両者の明暗を分けたか。
この2人以外にもRileyの成績も十分受賞に値するレベルだっただろう。
打率こそ昨年の.303より大きく下げてしまったが、38本塁打はキャリアハイの数字であり、リーグ3位の好成績だった。
地味に塁打数325ほリーグ1位の数字でもあった。
SS
Trea Turner (LAD)
Willy Adames (MIL)
Francisco Lindor (NYM)
Dansby Swanson (ATL)
昨シーズン首位打者と盗塁王の2冠に輝きながら、本塁打王のTatis Jr.に受賞を許してしまったTurnerが、今シーズンは初めての受賞を果たした。
今期の成績は.298 21本塁打 27盗塁といずれも昨年より数字を落としているが、キャリアハイとなる100打点や昨年とほぼ同じの194安打とハイレベルなバッティングセンスは相変わらずである。
遊撃手部門はTurner以外の選手の成績もハイレベルであり、かなりの激戦区だったと感じている。
162試合全試合に出場し、25本塁打とキャリアハイの115OPS+をマークしたSwanson、26本塁打 107打点で昨年の不振から復活したLindor、キャリア初の30本塁打を記録したAdamesと多士済々であった。
OF
Mookie Betts (LAD)
Kyle Schwarber (PHI)
Juan Soto (SD)
Starling Marte (NYM)
Joc Pederson (SF)
Michael Harris II (ATL)
Bryan Reynolds (PIT)
Hunter Renfroe (MIL)
Brandon Nimmo (NYM)
5度目の受賞となったBetts、3年連続受賞のSoto、今シーズン初受賞のSchwarberとナショナルリーグも順当な結果となった。
Bettsは今シーズンキャリアハイの35本塁打とリーグ1位の117得点を記録した。
外野手としての5度目の受賞は歴代13人目の記録であり、まだ老け込む年齢ではないことから、この記録をどこまで伸ばせるか楽しみである。
Sotoは若干24歳ながら、既に3年連続3度目の受賞となり、次世代のスーパースターであることを十分に見せつけた。
今シーズンの打率は.242とSotoの実力を考えると、低すぎると言わざるを得ない数字であるが、出塁率は4割を超え選球眼に狂いはなかった。
あえて残念な点をあげるのであれば、パドレス移籍後期待に応えるような活躍が出来なかったので、ここに関しては来年のリベンジに期待したい。
Schwarberは打率.218と例年通りの低打率ではあったが、46本塁打を放ちナショナルリーグの本塁打に輝いた。
また、本塁打だけでなく打点/得点、そして盗塁でもキャリアハイを記録している。
低打率に加え、200三振と相変わらずの荒さではあるが、IsoDは.105をマークしている。
この選球眼を見込んで、シーズン半ばからは本塁打王ながら、1番バッターで起用されていたのが印象的だった。
DH
Josh Bell (SD)
Albert Pujols (STL)
Luke Voit (WSH)
Justin Turner (LAD)
Charlie Blackmon (COL)
Bryce Harper (PHI)
今シーズンからユニバーサルDHが導入され、コロナによるイレギュラーな事態となった2020年を除き、初代ナショナルリーグDH部門の受賞者は、ナショナルズ/パドレスの2チームでプレイしたBellとなった。
トレード前のナショナルズ時代のパフォーマンスは、103試合で.301/.384/.493と文句のない成績だったが、パドレス移籍後は成績が急落。
17本塁打 .266/.362/.422と期待を裏切る結果になった。
正直シルバースラッガー受賞には、不満の残る結果であることは否めないが、有力な対抗馬もいなかったため、Bellの受賞もある意味で妥当な結果なのかとも思う。
(アメリカンリーグがAlvarez/大谷のハイレベルな争いだったことを鑑みると、大谷が受賞を逃したのが悔やまれる。)
個人的には、シーズン後半に全盛期と遜色のないパフォーマンスを見せつけたPujolsの受賞を期待していた。
仮に受賞していた場合、史上初の4部門での受賞となり、700本塁打達成に更なる花を添えることになったが、出場試合数等の差から受賞は逃す結果となった。
UT
Brandon Drury (SD)
Tommy Edman (STL)
Thairo Estrada (SF)
Jeff McNeil (NYM)
Chris Taylor (LAD)
DH部門と同じく、今回から新設されたユーティリティ部門の初代受賞者はDruryとなった。
今シーズンは本塁打/打点/OPSでキャリアハイをマークしながらも、内野全ポジションと右翼を守り、ユーティリティ性を存分に発揮した。
あえてケチをつけるのであれば、Soto/Bellと同じくパドレス移籍後に大幅に打撃成績を落としているので、打者地獄であるペトコパークの影響をもろに受けてしまっていることが残念だ。
その他の候補者として、二塁手部門を受賞したMcNeilがいるが、2部門での受賞とはならなかった。
今日はここまで。
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