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ナツの大冒険[RPG風]-7-謎解き〈海に落ちる月・第2部〉

◆第1部あらすじ
動画配信で起業を目指す神野(カンタ)とインフルエンサー倉田(クラゲ)
成功は目前と思われたが、倉田は両親の死にまつわる謎のために、神野の元を去ってしまう
意気消沈した神野を思う恋人ナツは、倉田を探しにゆく決意を固め、彼女のクエストが始まる


25.11.49.7
55.16.26.8

ナツがアキラから手に入れたヒントはこれだけだった

とりあえずググってみたが、全然ヒットなし
いちおう浅井企画の住所や電話番号などと比較してみたが関係なさそうだ

ChatGPTに聞いてみると
「25.11.49.7や55.16.26.8のような数字の並びは、典型的にIPv4アドレスを表している可能性があります」
という返事が返ってきた

(IPアドレスかぁ、なるほど、これなら場所を特定できるかも)

しかし、IPアドレスとして検索してもヒットはなかった

(うーん、わからん!
 こういうのに強いのは、やっぱぐっさんかな)

神野のオフィスでは山口がカメラマン代行をやることが多い
メカに強いので、なんとなく数字に強そうだ

「ぐっさーん、これ何か分かるかな?」

「よお、ナッちゃん
 この前の配信見たよ、すごかったね
 春麗の再現度なんかバッチリだったよ
 で、何それ?」

「クイズ研の人がお題出してるの
 答えが分かるとアイスがもらえるのよ」

「へぇ、近頃の学生さんはそんな遊びやってんだ」

(よしよし、疑われなかったぞ)

ナツは適当な話をでっちあげて山口に相談した
彼は人はいいのだが、かなりのスピーカーなので本当のことは言えない

「これなんだけど」

ナツは数字の書いてある紙を見せた

「えーっと、この数字の並びはIPアドレスっぽいけど、それはひっかけと見た」

「なるほどなるほど」
(お、ぐっさん、鋭い! がんばれ)

「他には何もないのかな、これだけ?」

「うん、これだけ
 たぶん、地名とか連絡先とかだと思うんだけど」

山口はしばらく数字を眺めていたが、はっと何かに気付いたようだ

「これ、NとかEとか付けてみたら?」

「NとかE?」

「SかWかもしれない
 緯度経度だよ」

「そっか! わかった、それで検索してみる
 さっすが、ぐっさん
 今度アイスおごるね」

「はは、ありがと」

ナツはさっそくスマホを取り出し、数字を入れてみたがうまくいかない

(ああそうか、緯度経度を英語で書かなきゃいけないんだ)

25°11'49.7"N 55°16'26.8"E

マップが開いた

そこに現れたのは
ブルジュ・ハリファ
ドバイにある世界一の超高層ビルだ

(ドバイ!
 旅費に100万かかるってことか
 あんにゃろ、こんな贅沢してたなんて)

ナツはすぐにAシステムに電話した

「わかったわよ、あれはドバイのブルジュ・ハリファね」

電話に出たのは秘書だった

「正解です
 では、ドバイ国際空港に向かってください
 ドバイで電話を受信できるように設定をお願いします」

神野が悩んでいる間に、倉田がドバイで豪遊していたかと思うと、ナツの怒りは瞬時に沸騰した
すぐに荷物をまとめて空港に向かう
空港に向かう途中でドバイ便のキャンセル待ちを検索、一番早い便に飛び乗った

(カンちゃんが仕事も手につかないほど悩んで、食欲もなくなっちゃたのに、ドバイで遊んでるなんてひどい!)

それは当初の1週間くらいのことで、いまの神野は非常に忙しく働いていたし、なんなら水泳を習い始めたので食欲は旺盛なくらいなのだが、ナツの脳内では”可哀想なカンちゃん”に変換されてしまったらしい

ドバイ国際空港に降り立ち、入管を済ませたところで電話が鳴った
アキラのAシステムの番号だ

「はーい、ナッちゃん」

「アキラさん?」

「ドバイに着いたね、すごいじゃない
 じゃ、お使いお願いね」

「は?」

「ブルジュ・ハリファの近くに、ゴールドスークってとこがあるから、そこにあるお店で受け取ってきて欲しいものがあるんだ
 引換証はキミのバッグの右ポケットに入れといたから、よろしくね」

「ええっ、いつの間に?
 あの、クラちゃんは?」

「彼はドバイにはいないよ」

「はいいい?」

「ドバイにいるなんてひとコトも言ってないよね」

「じゃ、どこに」

「お使いが終わったら、次のヒントあげるよ
 さすがに日帰りはキツイから、泊っておいで
 ホテルの予約票もバッグに入れといたから、お金は自分で払ってちょうだい
 じゃーね」

「ちょっと待って!」

電話は切れてしまい、かけ直しても通じなかった

さすがにナツも気づいた

アキラはただ、ナツをからかっているだけなのだと


▶ナツはあんごうをかいどくした
▶ナツはドバイにいった

●ブルジュ・ハリファ
アラブ首長国連邦にある世界で最も高い建築物
高さは828m、展望台は555m
高さだけでなく階数、レストラン、エレベーターの高さなど数多くのギネス記録を持つ

◆ゴールドスーク
歴史的に金取引のあった地区で何百もの宝飾店が軒を連ねている
展示されている金の総量は10トンに達すると言われている
土産物で人気なのは、アラビア語で名前を入れたネックレスなどの装飾品



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