プラスαのインターネット活用術42
Medical Tribune 2000年12月14日 36ページ ©鈴木吉彦 医学博士
コンテンツパッケージ構想はCD-ROM問題を解決(2)
日本の医学系のマニュアルやデータベースがコンテンツパッケージなどのデータベース入り、1回の登録ですんでしまえば、後はCD-ROMドライブは不要です。インターネットに接続が可能なノートパソコンや携帯情報端末(PDA)などを携帯するだけですむわけです。それによって、医師は病院ででも自宅ででも、インターネットを経由して、上記のコンテンツにアクセスが可能になり、MEDLINEや医学中央雑誌、医学系教科書を、どこからでも利用できる環境づくりができます。
使い回しも不可能に
CD-Rの問題については、この装置を持っている人があまり多くないので、それほど大きな被害は出ていないようですが、医学部生の間などではコピーが氾濫し、医学系出版社にかなりの被害が出ていると聞きます。しかし、この問題も、CD-ROMビジネスを廃止し、インターネットのビジネスに切り替えることで解決します。インターネットでは、複製商品がつくれません。コンテンツパッケージは、So-netが一括で管理しています。ほかに持ち出されることはありません(11月からサーバのセキュリティレベルもアップしました)。
また、インターネットの場合は、複数の人が使い回しをすることも不可能になってきます。もし、ある個人のIDとパスワードを他人に教えてしまえば、教えてもらった人は、それを使ってネット上で商品を購入したり、競売に参加したり、悪徳行為が可能になります。ですから、IDとパスワードは、他人には絶対に教えないわけです。この心理的な抑止効果が、コピーブロックということにつながります。
Linux登場で代表的OSは3種類に
これまで医学系出版社は、Mac版、Windows版という2種類のOS版をつくらなくてはなりませんでした。解決策としては、ハイブリッド版というCD-ROMもありました。しかし、今後は、MicrosoftのWindowsに対抗した、Linuxという新しいOSが急激な速度で普及していくことでしょう。このLinuxなソースを公開技術とし、全世界のプログラマーがソースを共有してつくっている無料のOSです。1万人以上の世界中のプログラマーが、Windowsを追い抜こうとして日々、協力してつくっているOSです。このような時代になると、医学系出版社にとっては、Mac版、Windows版、Linux版というように、3種類のOSに対応したコンテンツを作成しなくてはなりません。
そのうえ、CD-ROMとDVD-ROMという2つの円盤媒体が普及しようとしていますから、医学系出版社としては、Mac版、Windows版、Linux版のCD-ROM版とDVD-ROM版もつくらなくてはなりません。つまり、1つのコンテンツについて、6種類の商品をつくらないといけないわけです。もし、それができないとなると、顧客である医師からはクレームがきます。
さらに、Windows系やMacでも、約1年から2年ごとに、OSのバージョンアップをするわけです。Linuxは、いつも更新されています。ですから、各OSのバージョンに合わせた商品をつくらないと、クレームばかりに追われて、医学系出版社は仕事にならなくなります。つまり、このような状況がLinuxの出現によって目前に迫っているわけです。これを解決するのは、インターネットしかありません。インターネットであれば、OSが何であろうと関係ありません。円盤媒体も関係ありません。
また、DVD-ROMが普及しても、インターネットのデータのほうが、DVD-ROMよいもはるかに高容量のデータを蓄積できます。また、インターネットであれば、海外、自宅、病院などどこからでもアクセス可能です。これに対し、DVD-ROMはDVD-ROMドライブが必要です。しかし、2000年現在ではまだ、さほど普及しておらず、最も普及しているのはソニーのゲーム機器であるPlay Station2です。しかし、これを自宅や病院などに置いておくわけにはいかないでしょう。もし、病院でPlay Station2を使って、MEDLINEや医学中央雑誌を調べているとしたら、周囲で見ているナースは、その医師はゲームで遊んでいるとしか思わないでしょう。これは、病院内では大きな誤解を招き、問題になるかもしれません。
将来はメモリースティックとインターネットの組み合わせ
ソニーからは、指紋認証機能付きのメモリースティックが発表されています(http://www.world.sony.com/JP/News/Presss/200011/00-1114/index.html)。 2000年11月13日から17日までラスベガスで開催された展示会で、参考出展しました。この指紋認証機能付きメモリースティックは、今後拡張モジュールに対応した携帯情報端末やパソコン、携帯電話などで利用することにより、ハードウェア機能を拡張することが可能になります(メモリースティックについては、hhttp://www.world.sony.com/JP/Electronics/MS/ を参照)。
これは、医学界などに大きなセンセーションを巻き起こすことでしょう。つまり、指紋認証機能付きですから、本人が認証され、指尖をメモリースティックに当てるだけで、MyMediproに入ることや、各種データベースにアクセスすることが可能になります。そうなると、携帯電話やPDAにメモリースティックを付け、そこに指尖を当てるだけでMediproのコンテンツパッケージ(A)や(B)が利用できることになります。病棟でも、歩きながらWeb版MEDLINE、医学中央雑誌Web版、Web版今日の治療薬、Web版ハイパー臨床内科などを調べたり、Medical Tribuneを読んだりできるのです。
また、多くの機種にメモリースティックが搭載されると、これまでソフトのインストールなどの利用価値があったCD-ROMは、完全にメモリースティックという媒体に置き換えられることでしょう。つまり、CD-ROMの存在が完全に不要になるはずです。
病院内では携帯電話が使えないことが多いので、メモリースティックが使用できる携帯電話よりも、メモリースティックスロット付きのPDAであるCLIEなどが主流になるかもしれません。そして、これは医師だけでなく、ナースも携帯し、患者データの記録にも利用できるはずです。指紋認証機能付きですから、セキュリティの面でも安全です。ナースはボールパンで患者データを書く必要はなくなり、CLIEをナースハンドとして利用すればよいのです。CLIEに蓄積したデータから、電子カルテの移行は、メモリースティックやインターネットなどを利用するようになるかもしれません。
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