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日比谷に遊びに来た
ミュージカルの脚本と向き合い続けた、この1ヶ月。
ああでもないこうでもないと考え過ぎて、
何も分からなくなって、
正直爆発していた。
ミュージカルの何が好きなのか、よく分からなくなった。
表現を追求するのが、とても怖くなった。
留学していたサークルの先輩が、一時帰国していて、一緒に日比谷でご飯を食べることになった。
4つ上なので、サークルで一緒に活動することはなかったのだが、Twitterを通して趣味が同じで学部が一緒だと分かり、先輩の方から誘ってくださったのだ。
私は先輩が到着する30分前に、日比谷に着き、1人で散策していた。
ミュージカルの展示が沢山ある街を歩いていると、私は何か実家のような安心感を感じていた。
直前まであんなに「もうミュージカルはいいよ!」と叫んでいたけれど、この場所にいる時は、私の心に素直になれた気がした。
暇つぶしに、日比谷シャンテをフラフラしていたのだが、偶々目にした宝塚の衣装展示に、魅入ってしまった。
宝塚は贔屓が退団してから、まるっきり行かなくなってしまったが、何だか今日は衣装展示の横で流れている、レビューの映像に惹かれて、じっくりと観ていた。
美しい。
十年以上役をやるために作り上げられた、その美しさに圧倒されていた。
涙が出そうだった。
私はそのジェンヌさんのことを全く知らないのに、どうしてこんなに心を打たれるんだろう。
暫くフラフラしていると、先輩が到着して、ご飯を食べることになった。
私の先輩は、私の上位上位上位互換みたいな人だった。本当にすごい人だった。
将来の夢についても沢山話したり、
最近の演出の悩みを打ち明けたりもした。
何だろう、この自分の中で抱え込んでいた蟠りが解けていく感覚。
もちろん別の人間だし、全く同じ感覚っていうわけじゃないけれど、冷静で落ち着いていながら、しっかり何かを見据えている。かっこいい。
先輩の言葉を受けて、私がどうして演出をやりたいと思ったかを振り返っていた。
もしかしたら、これまでの私が沢山悩み過ぎていて、素直に問題を見れていなかっただけなのかもしれないと思った。
何より私が許せていなかったのは、ミュージカルでも、仲間でも、サークルでもなく、自分自身なんだと気づいた。
その反面、私自身が愚かな過ちをしていることに気づいて、私が嫌になったり、苦しくなったりもした。
完璧な考えに寄ってしまった挙句、
全ての感覚を否定して、ロジックだけを追い求めていたのかもしれない。
それでもこの私を受け入れないと前に進めない。
謝ろうと思った。私の間違いを素直に認めたいと思った。
私を受け入れることで、許せなかった何かを許せる気がした。
私はもう一度前を向いて、舞台と向き合おうと思った。