「ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました」を読んでみた
1.なぜドン・キホーテに注目しているか?
企業規模が大きくなると、本部を充実させて店舗の標準化を進めますが、気が付くと現場で考える機会が減って、最終的に会社全体の「パワー」が落ちていきます。特に出店ペースが速い業態でよく起きていることではないでしょうか?私自身もこのことを痛感しており、どうすればいいのかと悩んでいました。
要因としては、会社成長時のメンバーは早い時期からある程度の権限を任され、活動をしてきたことで、いい経験を積めていることが本人の成長に繋がっていましたが、会社拡大期には、成長したメンバーが本部の中心となり、店舗の標準化によって現場の自由度が奪われ、店舗のメンバーは経験が積めないので、成長スピードが落ちるという構図になっています。
解決策として、教育をするというのもありますが、効率化によって店舗で教えるほどの余裕時間はなく、また力を試す場所(考えた施策を実現する売場)がないのも、教育が実りにくい要素となっています。
ドン・キホーテは昔から現場力が強い(「個店経営」)というイメージがあったのですが、ユニーがグループインしても、店舗が増えてもその強さが衰えないので、どのような仕組みで「現場の強さ」を出しているのかを知りたかったところ、「ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました」が出版されていたので、この中から秘密を私なりに解き明かしたいと思います。
2.他の会社ができないこと!
ドン・キホーテの圧倒的強さは「権限移譲」が仕組化されているとこだと思います。これだけ大きな企業で、パートさんまで権限移譲が明確に出来ている企業は少ないと思います。この考え方こそが他を寄せ付けない強さの秘密です。
例えば、売場のパートさんが仕入を4千万分も自分で判断する企業があるでしょうか?普通なら承認ルートがあってしかるべきですが、ドン・キホーテでは日常的に現場で商談が行われています。
ただし、「権限移譲」という言葉が、ドン・キホーテなりに定義されており、その定義内で自由に自分で行動する工夫がされています。プロセスは口出さない、深く狭く任せるなど最小限のルールが決められています。自分に置き換えたときに、本当に任せきれるかという疑問がありましたが、現ドン・キホーテ社長の吉田氏も同じことを感じていたそうです。最初からそこで育った人は組織文化として受け入れられるが、途中から入った人は頭の変換をするのに、苦労しそうです。しかし、理解できるとやりがいに繋がる素晴らしい手法だと思います。そういった組織が、ドン・キホーテを強くしているのだなと確信しました。
「現場力」に悩んでいる企業の皆さんは、一度ドン・キホーテを研究してみてはいかがでしょうか?権限移譲について、社内で徹底的に話してみてはどうでしょうか?
本を読むのが面倒な場合は、昨年10月に「カンブリア宮殿」で特集されていたので、そちらをどうぞ・・・。
3.こだわりのPB商品
物価高の中、各小売業はお得に買えるという部分で、PB商品をアピールしています。それも一つの役割ではあるとは思います。しかし、本当にお客様はそのPB商品があるから、来店してくれているのでしょうか?同じような商品が他社にも並んでいるのではないでしょうか?
ドン・キホーテのPB「情熱価格」は、コロナ以前は認知度が26%程度しかなかったようです。商品力ではなく、ドン・キホーテの店舗力で販売数量が伸びていたという位置づけだったそうです。それをコロナ禍に「ブランディング」をして、大幅にリニューアルかけたようです。品はもちろんのこと、ネーミングまでこだわりぬいた一品です。ドン・キホーテらしいエピソードが、普通の企業だとPB商品を開発すると店頭に大量陳列することがマストですが、ドン・キホーテはそうではないそうです。店舗の担当者が置いてみたいと思うような商品でない場合は、展開も弱いそうです。お店の担当者が納得して販売したい商品、それが「情熱価格」なのです。PBの開発を担当している方には、自分たちの自惚れを反省して、「作ったから売れ」ではなく、「売ってもらえる」商品づくりをしてもらいたいです。
この本を読んでから、ドン・キホーテに行くと、よりPB商品に魅かれて、立ち止まる機会が増えました。
4.ドン・キホーテの強さ
「他の会社にできないこと!」でも書きましたが、権限移譲の仕組化ができている企業は強いです。「主権在現」(現場への権限移譲)をするために、4つの要素があるようです。
・明確な勝敗
・タイムリミット
・最小限のルール
・大幅な自由裁量権
単純に丸投げしている権限移譲ではなく、移譲する際に要素ごとに話をしていることが、仕組化に繋がっているのだと感じました。
あと、お客様との接点を大切にしているのが強さです。
商品やサービスのダメ出しを集めている企業があるでしょうか?クレームなどは集めていると思いますが、商品に対する声を積極的に集める仕組み「マジボイス」には感心しました。PBの強さにもなるのですが、お客様の声に真摯に向き合う姿勢こそが、作りて主体の「売場」ではなくお客様主体の「買場」という言葉が、普及している証拠だと思います。
5.さいごに
ドン・キホーテは人を活用できているという点で「生産性が高い企業」だと思います。「売ること」へのこだわりをこの本を通じて垣間見ることができました。大きくなっても、現場が輝ける組織って凄く頼もしいですね。多くの企業がそうなれるような、お手伝いをしていきたいです。