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ワインの欠陥臭-発生と予防

今回の写真は内容とはあまり関係ないですが、卵型コンクリートタンクです。

前回ワインの欠陥臭の種類についてお話しました。
しかし前回の説明では到底手元の紙の情報を網羅できなかったので今回はその続きで、少し造り手向けの話をしたいと思います。

前回6つの欠陥臭を上げました。
酸化、還元、未熟、カビ、フェノール、TCAです。

これらの発生と予防、閾値についてみていきます。

前回酸化によって発生する主な欠陥臭として酢酸を挙げました。
これは酢酸菌だけでなく、酵母、乳酸菌によっても生成されます。

酵母は特に自然発酵における初期段階のサッカロミセス種ではない種によって発生することが多いです。

また酢酸菌は酸化状態で酢酸を生成するので果汁の表面に気をつけなければならず、赤ワインの醸造だと浸漬中のPump OverやPunch Downは果皮からの抽出だけでなく、酢酸菌の発生を防ぐという側面もあります。

またアセトアルデヒドも酸化によって生じる化合物の1つです。

これは干したり焼いたりしたリンゴのような香りで、シャンパーニュのようなレベルからシェリーのようなレベルまでかなり幅広くポジティブにとらえられることもありますが、酸化臭として嫌煙されることもあります。

酢酸菌や他種酵母には亜硫酸を、アセトアルデヒドも亜硫酸と結合することで、香りへの影響が減るので亜硫酸を、またプレスや樽の定期的な注ぎ足しやボトリングなども酸化還元状態を管理するファクターになってきます。
巷で流行りの亜硫酸無添加や減亜硫酸ワインはこういったリスクと戦っています。

また酵母や乳酸菌も培養のものを使い、低生産性のものを使うことや、乳酸発酵をアルコール発酵と同じタイミングで行うコイノキュレーション窒素や二酸化炭素をプレス機やタンクに充満させることなどが酸化を防ぐ術として用いられています。

閾値に関しては酢酸が0.6g/L、酢酸エチルが0.15g/Lほどだと言われています。


次にフェノレとも呼ばれるフェノール系化合物についてです。

これは主にブレタノミセスという酵母が関係していますが、これに関しては1つのトピックとして授業で発表も行ったので別の記事にまとめてお届けしました。


還元臭に関してですが、これも酵母の代謝が関わっています。

そのため還元臭低生成酵母というのがあります。
またこれらの臭いはボトリングの温度や貯蔵の温度が高いとき、ボトルが光環境下に置かれていた時などに発生しやすくなります。
閾値はエタンチオールが0.1μg/L、メタンチオールが1200μ/Lです。

また前回の記事には出さなかったのですがDMS(ジメチルスルフィド)という中立の化合物もS由来で存在します。
これはPDMS(PはPrecursor)という前駆体から発酵や熟成によって発現し、少量ならトリュフの香りがするとも言われますが、多くなるとカリフラワーなど緑や土っぽい臭いを生じます。


カビ臭のゲオスミンの閾値は10ng/Lで、これは栽培時の管理、収穫時の選果、Thermovinificationなどで防ぐことができます。

また主な原因はPenicillium種のカビだと言われています。

甘口ワインを造るという点ではポジティブなボトリティスシネリア菌もカビ臭の原因になり得るのですが、この菌に関しては奥が深いので詳しく見る記事を出したいと思います。


最後にコルク臭についての前回の補足です。

前回はTCAについて書きましたが、TCAの他にもTeCAやTBAなどがあります。
これらもmouldyと称されるカビ系統の臭いがします。

ただ閾値がTCAに比べて高いこと、発生頻度が低いことから代表してTCAがよく取り上げられます。

またコルク臭という別称ですが、これは木材から由来するもので、ワイナリーの天井から樽、パレット(モノを運ぶ板みたいなもの)に至るまで混入する可能性はどこにでも転がっています。

特にこれは塩素化合物なので、それらの木材が、塩素系殺菌剤などが用いられている畑や水源に近かったりすると発生しやすくなります。

一方でワイナリーの常日頃の衛生管理とコルクの業者の技術の進歩によってこの問題は漸減しています。

前回の消費者用の記事と今回のワインラヴァー用の記事、どちらもざっくりとした情報しか載せていません。
特に閾値は記事や論文によっても違うことも多く一概には言えないといったところもあります。

香りについては文字で言い表すには限界がありますし、自分もまだまだだと思わされることも多々あります。

一方で栽培理論や醸造と違って、飲むことで楽しく勉強できる分野であることも間違いないと思うので是非ワインの入り口として香りの話は受け取ってもらえればと思います。

質問や意見はコメントまたはTwitter(@WinoteYoshi)までよろしくお願いします。

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奥村 嘉之/WineHacker
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