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月・帰路・Lost days -3-

拝啓

遠雷の下のあなたへ


こちらでは今、星が見えます。
見えると言っても、少しだけです。

街の灯りというのは、僕らが思うよりずっと明るいようです。僕の住む郊外の住宅街でさえ、目を凝らしてやっと星を数えられるほどです。

だんだん目が慣れて、5つ、6つと数えるうちに、黒い背景が一瞬、白く染まります。まるでリセットするように、カシャッと光って、僕はまた、星を数え直さなければなりません。

イヤホンをして、Oasisを聴いているので、音は聞こえません。どれほど遠いのでしょうか。あなたはその雲の下にいるのでしょうか。その雲の下は、どしゃ降りの雨でしょうか。あなたもやはり、どしゃ降りなのでしょうか。

僕には何ができるでしょう。この、数えることすらままならない星の写真を撮って、あなたに送って差し上げましょうか。それくらいしか、できないものですから。

そういえば、先程Oasisを聴いていると言いましたが、僕はイマドキの音楽は好みません。なんだか浅いような気がするのです。Oasisは、アメリカのバンドです。たぶん。歌詞も、たぶん深いです。少なくともイマドキの音楽よりは。たぶん。

僕は、僕の嫌う浅い人間なのかもしれません。今だって、遠雷の下のあなたを想いながら星を数え、歌詞もわからないOasisを聴いて、ただ歩くことしかできないのです。同じ道を明日の朝、また引き返すのに。

遠雷が僕を打って、カシャッと光って、世界が変わらないかなんて、そんなことを思うのです。

僕はあなたが羨ましいです。どしゃ降りの中にいながら、同時に雷に打たれることができるのです。悪くないでしょう。あなたの世界は、変わるかもしれません。

僕は湿った暑い星空の下で、あなたの新しい世界が、よく澄んだ星空であることを願います。


僕も、頑張りますから。

それでは、また。


敬具

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