酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第92回「名古屋のビールの祭典でプロスト(乾杯)」
「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。
withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第92回「名古屋のビールの祭典でプロスト(乾杯)」である。
はじめに
真夏の名古屋の暑さは尋常ではない。外へ出ただけでも汗がジトジト出てくる。できれば真夏に名古屋には行きたくない・・・が、7月に大相撲名古屋場所が開催されるので、どうしても足を運ばねばならない。観戦中は冷房が効いているからいいのだが。
同じ時期、ゴキゲンなイベントをやっていることを知った。それが「名古屋オクトーバーフェスト」である。会場の久屋大通公園にドイツビールのショップが並ぶ屋外ビアガーデン。名古屋の夏が暑いからこそ、ビールも美味いというものだ。
大相撲とビールの祭典にレッツゴー!
中村公園「いせや」~競輪場近くの昭和レトロなお休み処
この日のスケジュールは昼過ぎから大相撲観戦をし、夜に名古屋オクトーバーフェストへ出向くというプラン。午前中は豊臣秀吉や加藤清正にゆかりのある中村公園に行く。公園の隣には名古屋競輪場がある。
ギャンブルをやるつもりなのか?いや、そうではない。
目的は公園内にあるお休み処「いせや」だ。ここは単なる茶店ではない。競輪客のために午前中から酒を提供している。すなわち居酒屋使いができるというゴキゲンな場所。これは行くしかなかろう。
名古屋駅から中村公園までバスで向かおうとしたが、どうしたことか行先を間違えて乗ってしまう。途中下車したバス停から運よく競輪場へのシャトルバスに乗れた。競輪をしないのに乗るのは気がひけたが、まあいいだろう。
何とかたどり着いたいせや。外観も店内も昭和レトロを思わせる食堂っぽい雰囲気。でも冷房はしっかり効いていてありがたい。見渡すとお客は数人で、一見して分かるような競輪目的のおっちゃんたち。だからといって気後れする必要はない。
まずは大瓶ビールからいただき、肴は保冷庫に入っているポテサラ、さらにハムカツを注文。テレビで流れているのはもちろん競輪中継。でも、ギャンブルにのめり込んでいるような人はいない。そのせいか、店内はどこかのんびりしたムード。これがいいんだよなあ。
競輪、やってみようかな・・・でも時間が無いから、またにしておこう。
名古屋オクトーバーフェストへGO!
大相撲観戦を終え、ホテルにチェックインしてシャワーを浴びてから、いよいよ名古屋オクトーバーフェストの会場へと繰り出す。フェストを訪れるのは今回が3回目。過去2回は昼だったので、夜飲みするのは初めてだ。
日が落ちた後とはいえ、夜も蒸し暑い。そこに来場者の熱気が加わるのだから、何とも言えないムンムンした雰囲気。これは一刻も早くビールをかっくらわねばなるまい。
会場を取り巻くようにビールショップがズラリと並んでおり、とても飲み切れないほど種類がある。ドイツビールは馴染みがないので、適当にチョイスさせてもらおう。まずはパウラーナーミュンヘラーというビールから。
「ドイツビールって値段がお高いなあ」
始めて来た人はそんなふうに思うかもしれない。そのわけはデポジット制を取っているからだ。つまり、最初の一杯はグラス代込みの値段で、2杯目はグラスと交換でおかわりするのでビール本来の値段のみ。お帰りの際にグラスを返却するとグラス代が戻ってくる。
ともあれ、グラスビールとおつまみのポテトを手に入れた。だが、テーブルに空きが見当たらない・・・仕方ないので、会場隅の植え込みに座って飲む。様子を見ながら、空き出たら滑り込むとしよう。
ステージでは、本場ドイツのバンドによる生演奏が始まる。おっと、空きを見つけた。テーブルに移動し、会場の雰囲気にどっぷり浸かろう。グループや家族連れがほとんどだが、私のような一人客も少なくない。どうせ酔ってしまえば同じことだ。
バンドは軽快な音楽を奏で、民族衣装を着た姉さんたちが踊りながら会場を盛り上げる。それにつられて、一人また一人と踊りの輪に加わる。会場のボルテージが上がったところでバンドが「乾杯の歌」を演奏。お客さん全員で乾杯をするという楽しい趣向だ。
「アインス、ツヴァイ、ドライ、ズッファ、プロスト!」
日本語に訳すなら「1、2、3、飲み干すぞ~、かんぱーい」となる。この時ばかりは知人も他人も関係ない。自分の周りにいる人と「プロスト」と叫びながらグラスをカチン。会場は一体感に包まれる。これがバンド演奏の途中で何回か繰り返されるのだ。
乾杯するにはビールが欲しい。おかわりは日本初上陸の無濾過ビールというリーゲレケラーをいただく。量は多めでも、暑いし、テンションが上がるのでどんどん飲める。おっと、またまた「プロスト」タイムだよ。ビールの祭典、スゴイぞ。
栄「世界の山ちゃん女子大店」~余韻なのか疲労なのか熱中症なのか
ビールの祭典での余韻を残しつつ、酒場へと繰り出す。熱気に包まれた会場を離れたが、やっぱり名古屋は熱帯夜だ。暑さでボーっとしながらも何とかたどり着いたのがお馴染みのチェーン店「世界の山ちゃん」女子大店。
4人掛けのテーブルに案内してもらい、まずは名物の幻の手羽先をいただこう。ビールにピッタリなのだが、ドイツビールをしこたま飲んできたので、ここは蒲郡みかんサワーという柑橘系にする。ついでに塩だれキャベツも。
幻の手羽先、スパイスが効いていて美味い。世界の山ちゃんで何度も食べているが、何度食べても美味い。でも、サワーにはちょっと合わないなあ。やっぱりビールの方がいい。あくまで個人の感想ではあるが・・・
それにしても、さすがに疲れたぞ。
そりゃそうだ。暑さと熱気のなかで、何度も何度も「プロスト」と大騒ぎしてしまったのだからな。店に行列ができているのに、4人掛けを1人で占拠しているのも心苦しい。なんだかクラクラしてきたぞ。今宵はこれにてお開きとするか。
〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2018年7月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。
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